シンガポール

法務基本情報

名称 特徴・留意点

1.進出形態

【主要法令】

会社法(Companies Act)、商業登記法(Business registration Act)

【ポイント】
  • 主な進出形態は、現地法人、支店、駐在員事務所の三つである。
  • 現地法人:現地法人にも幾つかの形態があるが、通常、日本の株式会社と同様に株主が引き受けた株式の範囲でのみ責任を負う会社形態である有限責任株式会社が用いられる。シンガポールに進出する外国企業の多くがこの会社形態をとる。一人株主が認められており(故に100%子会社の設立が可能)、最低資本金の規制はない。また、最低1名の居住取締役が必要である。
  • 支店:独立の法人格を有さず、支店に生じた権利義務は本社である外国企業に帰属する。資本要件が課されている業種(金融機関等)や過去の実績が重視される業種(ゼネコン等)において用いられる例が多い。
  • 駐在員事務所:市場調査活動や販売促進活動のみ行うことができ、一切の営利活動が禁止されている。存続期間は原則として1年であり、制度上最大で3年まで延長することができるとされているが、実際には延長が認められないケースもある。

2.競争法

【主要法令】

競争法(Competition Act)

【ポイント】
  • 2007年に競争法が完全施行され、競争制限的な行為、支配的地位の濫用(価格・条件の拘束、生産・市場・投資の制限、差別的条件、抱き合わせ等)、シンガポール国内での競争を実質的に減少させる又はそのおそれのある企業結合が禁止されている。
  • リーニエンシー制度が導入されており、第1申請者には最大で100%、その他の申請者には最大で50%、制裁金が免除される。
  • 競争法を所管するシンガポール競争・消費者委員会(Competition and Consumer Commission (CCCS))は、非常に積極的に取り締まりを行っており、日本企業が取り締まりの対象となった例もある。

3.不動産法制

【主要法令】

土地権原法(Land Titles Act)、ストラタ土地権原法(Land Titles Act (Strata) Act)、居住用不動産法(Residential Property Act)

【ポイント】
  • 土地の所有権は終局的には国に帰属しており、会社や個人は、国から土地に関する権利を付与される。
  • 会社や個人が付与される権利には、無期限・無制限のfreeholdもあるが、通常付与されるのはleaseholdであり、リース期間は居住用不動産が99年、商業・工業用不動産が30年とされるのが一般である。
  • 商業・工業用不動産については、外国会社や外国人であっても取得することが可能である。これに対し、居住用不動産については、コンドミニアムの一区画等の一部を除き、外国法人や外国人が取得することはできない。
  • 店舗・オフィスや住居を利用する場合には、通常tenancy agreementを締結して賃借する。日本における借地借家法のように賃借人を保護する法律はなく、実務上は貸主側に有利な契約条件となることが多い。

4.労働法

【主要法令】

雇用法(Employment Act)、定年・再雇用法(Retirement and Re-employment Act)、外国人労働者雇用法(Employment of Foreign Manpower Act)、労働組合法(Trade Unions Act)

【ポイント】
  • 雇用法は基本的な労働条件を規定しているが、月額基本給が4,500シンガポールドルを超える管理職・上級職、船員、家事労働者(メイド)等には適用されない。
  • 雇用法が適用される労働者であっても、休日や労働時間等を規制する雇用法第4章は、月額基本給4,500シンガポールドル以下の肉体労働者(職人、清掃員、建設作業員、公共交通機関の運転手等)及び月額基本給2,500シンガポールドル以下の非肉体労働者(通常のオフィスワーカー等)にしか適用されない。また、雇用法第4章は、全ての管理職・上級職に適用されない。
  • 解雇には、日本におけるような厳格な正当事由は要求されておらず、所定の事前通知又はこれに代わる解雇手当を支払えば可能。ただし、不当解雇(unfair dismissal)についてはシンガポール人材省(Ministry of Manpower)に申し立てることができる。また、整理解雇については、退職手当等に関する指針を示したガイドラインがある。
  • 定年・再雇用法により高齢者の再雇用義務が課されている。
  • Fair Consideration Framework(FCF)と称されるポリシーに基づいてシンガポール人の雇用促進が図られており、外国人の就労ビザの審査は年々厳格化する傾向にある。

5.知的財産権法

【主要法令】

特許法(Patents Act)、登録意匠法(Registered Designs Act )、商標法(Trade Marks Act )、著作権法(Copyright Act)

【ポイント】
  • パリ条約、PCT条約、ハーグ協定、マドリッド協定等種々の国際協定に加盟している。
  • 日本を含め多くの国との間で特許審査ハイウェイを実施し、アセアン加盟国との間においてアセアン特許審査協力(ASPEC)を実施しており、特許審査の短縮化が図られている。
  • 実用新案制度は存在しない。
  • 意匠登録については、実体審査は行われず、方式審査のみが行われる。
  • 著作権は無方式主義を取っている。
  • 国内に流通する模倣品は多くはないが、警察は積極的に模倣品の取締りを行っている。他方、税関は積替え貨物の差押えは行わない。
  • 特許権侵害に刑事罰は科されておらず、民事訴訟による損害賠償請求を行うことになる。商標権侵害の場合には、実務上、民事訴訟よりも、刑事訴訟が多く選択されている。

6.裁判制度・仲裁

【主要法令】

最高法院法(Supreme Court of Judicature Act)、下級法院法(Subordinate Courts Act)

【ポイント】
  • 訴額により第一審管轄裁判所が決められており(60,000シンガポールドル以下の事件は治安判事裁判所、250,000シンガポールドル以下の事件は地方裁判所、250,000シンガポールドルを超える事件は高等法院)、治安判事裁判所及び地方裁判所の第一審判決に対しては高等法院、高等法院の第一審判決に対しては控訴院にそれぞれ上訴することができる。
  • 一般的に、訴訟手続が開始されると日本の民事裁判よりも早いペースで手続が進む。また、日本と異なり、証拠開示制度、秘密保持特権の制度が採用されている。陪審制は採用されていない。
  • 国際的かつ商業性を有する一定の事件については、高等法院の一部門であるシンガポール国際商業裁判所(SICC)にも管轄が認められる。SICCの裁判官には、シンガポール以外の国の裁判官も関与する場合があり、また、一定の要件を満たすことで外国の弁護士も訴訟手続に関与することが可能である。
  • シンガポール国際仲裁センター(SIAC)が設けられており、国内、国外の当事者による取引において利用されている。一般に信頼性は高いとされており、特にアジアの会社を当事者とする契約書において、シンガポールが仲裁地として選択される例が多い。
  • シンガポールはニューヨーク条約加盟国であり、シンガポールにおける仲裁判断を他の加盟国において執行することができる。ただし、実務上は、執行国の裁判所が執行を認めないケースもある。

7.外国為替管理・輸出入管理

【主要法令】

外国為替管理法(Exchange Control Act)、通貨金融庁通達(MAS754)、関税法(Customs Act)、輸出入規制法(Regulation of Imports and Exports Act)、戦略物資(管理)法(Strategic Goods (Control) Act)

【ポイント】
  • 外国為替管理制度の運用は1978年6月1日に停止され、シンガポール国内への送金、国外への配当金又は利益の送金に関する制限はない。
  • 輸入及び輸出のいずれにおいても、一定の品目について禁止品目、制限品目が定められている。シンガポール税関のウェブサイト( https://www.customs.gov.sg/ )で、対象品目・手続き等を確認することができる。

8.コンプライアンス

【主要法令】

汚職防止法(Prevention of Corruption Act)

【ポイント】
  • 歴史的に汚職に対する取り締まりは厳しい。構成要件は広範な規定となっており、提供される利益は金銭のみならず、その他の財産的価値を有するものや役務の提供等も含まれる。
  • 公務員等に対する不正な利益等の提供のみならず、私人間の不正な利益の提供(いわゆる商業賄賂)も処罰の対象となる。
  • 賄賂の財産的価値について基準となる金額は定められていない。ファシリティー・ペイメントも処罰の対象となり得る。
  • 汚職行為捜査局(CPIB)は積極的に取り締まりを行っており、例年100件以上が調査対象となっている。実際に訴追の対象となる者のほとんど(9割程度)は私人であり、公務員が訴追されるケースは少ない。

9.撤退

【主要法令】

会社法(Companies Act)

【ポイント】
  • 現地法人を清算する手続には、裁判所の決定により行われる強制清算と、会社が自らの決定(株主総会の特別決議等)に基づいて行う任意清算がある。所定の手続を行えば一般的には1年~1年半程度で完了し、撤退を困難にするような特殊な制度等は存しない。
  • 支店の閉鎖の場合には、ACRAに事業停止の通知等を行う必要があるが、現地法人の清算よりも比較的簡便に閉鎖することができる。
  • 他社に株式や事業を譲渡することによる撤退については、基本的には特段の制約はない。ただし、競争法の観点から、シンガポール競争・消費者委員会(Competition and Consumer Commission (CCCS))から、取り止めや修正を命じられる可能性はある。

10.その他<個人情報保護法>

【主要法令】

個人情報保護法(Private Data Protection Act (No.26 of 2012))

【ポイント】
  • 2012年に個人情報保護法が制定され、2014年7月に全面施行された。
  • 同法は、個人情報の取得、利用、開示に関するルールを定めるほか、個人情報の国外移転を制限している。事業者の規模や取り扱う個人情報の数にかかわらず適用される。
  • 故人の個人情報も死後10年間は同法の保護対象となる。
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