「インド最新法令情報‐(2017年6月号) スタートアップ企業に対する優遇措置の拡充」

1. はじめに

インド政府は、2016年1月16日以降、”Startup India”(インドで起業を)というスローガンを掲げ、インドにおける起業を促進するために各種政策を発表してきた。その柱となるのが、スタートアップ企業に対する税制優遇を含む各種優遇措置であり、認定企業は、最長3年間の法人所得税の免除等の恩典を受けることができる。報道によれば、2017年5月初旬現在までに、合計932の企業がインド商工省産業政策促進局(Department of Industry Policy and Promotion, DIPP)によってスタートアップ企業として認定され、そのうち23の企業が税制優遇の承認を受けたという。このような中、インド政府は、2017年5月23日、優遇措置の対象となるスタートアップ企業の認定基準を緩和する旨の通達(以下「本通達」という。)を出した。According to official statistics, 932 entities have been recognised as startups till date by the DIPP. Of these, 23 have been approved for availing tax benefits by the inter-ministerial committee as of early May. According to official statistics, 932 entities have been recognised as startups till date by the DIPP. Of these, 23 have been approved for availing tax benefits by the inter-ministerial committee as of early May.本通達は、後述のとおり、外国企業のインド進出促進に寄与するものと期待されている。

本号では、本通達によるスタートアップ企業の認定基準に関する変更点を解説したうえで、本通達が日系企業に与えうる影響を分析する。

 2. 本通達の概要

(1)       期間の延長

従前、法人がスタートアップ企業として認められる期間は、法人の設立又はスタートアップ企業としての認定の日から5年間とされていた。しかし、本通達により、かかる期間は、設立又は認定の日から7年間(バイオテクノロジー企業の場合は10年間)に延長された。

(2)       推薦状提出義務の撤廃

従前、法人がスタートアップ企業としての認定を受けるためには、インキュベーター団体又は産業団体からの推薦状を提出する必要があった。しかし、本通達により、そのような推薦状の提出義務は撤廃された。

(3)       スタートアップ企業の定義の拡大

従前、スタートアップ企業の定義は、科学技術又は知的財産に依拠する新規の製品、プロセス又はサービスの革新、開発、展開又は商業化を目指す企業とされてきた。しかし、本通達により、スタートアップ企業の定義に、上記のほか、「雇用創出又は富の創造をもたらす高度の潜在能力」(high potential of employment generation or wealth creation)を有する拡張可能なビジネスモデルを持つ企業が加えられた。

3. コメント

外国企業がインドに進出する場合、新たに設立した現地法人が十分な収益を上げられるようになるまでに一定程度の時間を要することが多い。スタートアップ企業に対する優遇措置を拡充する本通達は、インドで現地法人を設立した後の経済的負担を軽減するものであり、日系企業を含む外国企業への適用を排除するものではないため、日系企業を含む外国企業にとって好ましいものといえる。

その一方で、スタートアップ企業の定義である「雇用創出又は富の創造をもたらす高度の潜在能力」を有する拡張可能なビジネスモデルの意義は必ずしも一義的ではなく、判断基準の公表等、さらなる明確化が求められる。また、スタートアップ企業に対する免税措置を拡充するには、1961年インド所得税法(Income Tax Act, 1961)の関連規定の改正も必要となるという指摘もあるところ、今のところ、かかる改正は行われていない。

そのため、スタートアップ企業の認定基準が緩和されたことは歓迎すべきである一方で、判断基準の明確化、関連法令の改正等に関する動向には引き続き注目する必要がある。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

平野正弥/白井紀充/奥村文彦

info.indiapractice@tmi.gr.jp

——————————————————————————–

インドにおける現行規制下では、外国法律事務所によるインド市場への参入やインド法に関する助言は禁止されております。インドデスクでは、一般的なマーケット情報を、日本及び非インド顧客向けに提供するものです。

ページの先頭へ