「インド最新法令情報‐(2018年5月号) クロスボーダー合併規則の制定」

1.  はじめに

2018年3月20日、インド準備銀行(Reserve Bank of India; RBI)(以下、「RBI」という。)は、2018年外国為替管理(クロスボーダー合併)規則(Foreign Exchange Management (Cross Border Merger) Regulations, 2018)(以下、「クロスボーダー合併規則」という。)を公布し、即日施行した。2013年会社法(Companies Act, 2013)では、インド内国会社が外国会社を買収するインバウンド合併、外国会社がインド内国会社を買収するアウトバウンド合併の双方が可能であることが明らかにされたが、クロスボーダー合併規則により、その詳細が明らかとなった。本号では、クロスボーダー合併規則の内容のうち、特に日系企業の関心が高いと思われるアウトバウンド合併に関連する箇所につき、概説する。なお、存続企業がインド企業となる場合をインバウンド、外国企業となる場合をアウトバウンドと呼んでおり、その意味で通常の語感とは逆となる点、留意されたい。

2.  クロスボーダー合併規則の概要

(a) RBIからのみなし承認

クロスボーダー合併規則が定める全ての要件を満たす合併は、RBIから承認を受けたものとみなされ、別途RBIの承認を得ることを要しない。但し、全ての要件を満たしていることは、買収する側(以下、「買収会社」という。)および買収される側(以下、「被買収会社」という。)の双方にて、業務執行取締役、常勤取締役又は会社秘書役が認証し、その証明書を会社法審判所(National Company Law Tribunal; NCLT)(以下、「NCLT」という。)に提出する必要がある。

(b) 株式の取得および保有

アウトバウンド合併に際して、インド居住者は2000年外国為替規則(外国有価証券の譲渡又は発行)(Foreign Exchange Management (Transfer or issue of Foreign Security) Regulations, 2000)に従い、買収会社である外国会社の株式を取得又は保有することができる。但し、各インド居住者が取得又は保有できる株式の公正な市場価値は、送金自由化スキーム(Liberalized Remittance Scheme; LRS)により、1事業年度あたり25万米ドル以下に制限されている。

(c) インド国内の事業所の扱い

買収会社のインド国内の事業所は、当該会社のインド国内の支店とみなされるため、関係官庁への届出書類、事業活動内容などにつき、2016年外国為替規則(インドにおける支店、リエゾンオフィス、プロジェクトオフィス又はその他の事業所の設立)(Foreign Exchange Management (Establishment in India of a branch office or a liaison office or a project office or any other place of business) Regulations, 2016)に従う必要がある。

(d) インドにおける資産の取得および保有

買収会社は、外国為替に関するRBIの各種規則が許容する範囲内で、被買収会社の資産を保有することができる。但し、各種規則が買収会社による保有を認めていない資産であっても、NCLTに認可された合併スキームに従って、合併から2年以内に当該資産を処分し、その売却代金を自国に送金する限り、当該資産を保有することができる。

(e) 被買収会社による保証および借入れ

買収会社に承継される被買収会社が負担する保証や借入れによる債務は、NCLTが認可した合併スキームの中で弁済しなければならない。

3.  コメント

クロスボーダー合併規則の制定により、外国会社がインド内国会社との合併を通じて、インド市場に参入する機会が増えることが期待されている。特に、アウトバウンド合併がRBIからのみなし承認により可能となったことにより、承認に要する時間の短縮につながり、より迅速に合併手続きを完了できるようになったことは、買収会社、被買収会社の双方にとって、合併への大きなインセンティブとなると考えられる。今後のインド進出手法の一つとして、クロスボーダー合併がどこまで利用されるか、注目される。

 以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

平野正弥/白井紀充/奥村文彦/仲居宏太郎

info.indiapractice@tmi.gr.jp

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