「インド最新法令情報‐(2018年8月号) 有期雇用制度の全産業への導入」

1.  はじめに

2018年3月16日、インド労働雇用省は、1946年産業雇用規則(Industrial Employment (Standing Orders) Act, 1946)(以下「1946年規則」という。)を改正し、2018年産業雇用(改正)規則(Industrial Employment (Standing Orders) Central (Amendment) Rules, 2018)(以下「改正規則」という。)を通知した。改正規則により、これまでアパレル製造業のワークマンについてのみ認められていた有期雇用制度が、全ての産業分野にわたって認められることとなった。

2.  ワークマンとは

1947年産業紛争法(Industrial Disputes Act, 1947)の下では、労働者を「ワークマン(workman)」と「ノン・ワークマン(non-workman)」の2つに分類している。「ワークマン」とは、いわゆるブルーカラーワーカーを指し、「ノン・ワークマン」は、それ以外の労働者を指す。「ワークマン」には、解雇制限等手厚い保護が与えられることから、雇用者としては、労働者が「ワークマン」に該当するか否かは大きな関心事である。もっとも、「ワークマン」と「ノン・ワークマン」の区別は、一義的に明確でないケースも多いため、注意が必要である。例えば、オフィス勤務のITエンジニアを、その勤務実態等の事情を考慮し「ワークマン」と認定した裁判例も存在するところである。

3.  改正規則のポイント

改正規則は、「雇用契約に基づき、一定期間雇用されるワークマン」を「有期雇用ワークマン(fixed term employment workman)」と定義している。すなわち、雇用契約において期間の定めを設けることで、解雇制限のないワークマンの採用が可能となった。また、炭鉱で雇用されている有期雇用ワークマンを除き、有期雇用ワークマンに対しては、雇用期間の更新がなされない場合における解雇通知は、不要とされている。一方、労働者保護の観点から、雇用者には、以下の点を遵守することが、改正規則上求められている。

(a) 有期雇用ワークマンの労働時間、賃金、手当、その他給付は、無期雇用ワークマンのそれを下回ってはならない。

(b) 有期雇用ワークマンの雇用期間が、法定の受給資格期間に足りていない場合であっても、当該有期雇用ワークマンは、当該有期雇用ワークマンの雇用期間に応じて、無期雇用のワークマンが受給し得る全ての法定の給付を受ける資格を有する。

(c) 改正規則の通知日である2018年3月16日時点で既に雇用されているワークマンを有期雇用ワークマンに変更することは、認められない。

(d) 有期雇用ワークマンを懲戒解雇する場合には、当該有期雇用ワークマンに対し、弁明の機会を与えなければならない。

なお、改正規則は、100名以上のワークマンが雇用されている又は直近12か月で雇用されていたことがある事業所(industrial establishment)についてのみ、適用される。

 4.  コメント

改正規則により、有期雇用制度が全ての産業分野に拡大されたことで、期間を限定したプロジェクトに関する人材確保や生産の急な増減による人員調整等に対し、より効率的かつ柔軟に対応できるようになったといえる。また、上記3で述べた通り、改正規則は、有期雇用ワークマンの雇用条件が無期雇用のワークマンと比べて不利にならないよう配慮がなされている。今後、退職金(Gratuity)の支給に最低5年間の勤続年数が必要であるとしている退職金支払法(Payment of Gratuity Act, 1972)等関連法規との抵触につき、法改正や通達等により整理されていくものと思われる。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

平野正弥/白井紀充/宮村頼光/仲居宏太郎

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