「インド最新法令情報‐(2018年9月号) 腐敗防止法の改正」

1. はじめに

インドにおいて、2018年7月26日、大統領の承認を経て、2018年改正腐敗防止法(Prevention of Corruption (Amendment) Act, 2018)(以下「2018年法」という。)が成立した。2018年法は、旧法である1998年腐敗防止法(Prevention of Corruption Act, 1988)を改正したものであり、インドにおける公務員等への贈賄行為を、旧法に比べより厳しくかつ効果的に取り締まることを目的とするものである。本稿では、2018年法のうち、インドでビジネスを行う日系企業の活動に関連の深い事項について解説していく。

2. 改正の主なポイント

(a) 贈賄行為又は贈賄の約束の処罰化

旧法下では、公務員等に対し贈賄行為又は贈賄の約束をした者は、収賄罪の幇助犯としてのみ処罰されてきた。しかし、2018年法により、贈賄行為又は贈賄の約束をした者は、独立して贈賄罪として処罰されることとなった。

(b) 贈賄側企業(commercial organization)の責任

2018年法により、実際に贈賄行為を行った個人のみでなく、贈賄側企業(インドで事業を行う外国企業も含まれる。)自体も刑事責任を追及されることが明文化された。また、2018年法は、直接的な贈賄のみでなく、コンサルタント等の第三者を通じた間接的な贈賄も禁止している点に注意が必要である。

(c) 「充分な手続(adequate procedure)」の抗弁

2018年法は、インド連邦政府に対して、企業の贈収賄を防止するための反贈収賄ガイドラインを定める権限を与えている。企業が贈賄罪で起訴されたとしても、当該企業が、かかるガイドラインに従った「充分な手続」を履践していれば、その旨の抗弁を主張することができる。かかるガイドラインの内容は現時点では公表されていないものの、英国・米国当局が定めている水準のものを採用することが見込まれている。

(d) 役員等の刑事責任

2018年法により、贈賄側企業の取締役、マネージャー、秘書役又は執行役員(以下「取締役等」といいます。)が、当該贈賄行為につき同意又は黙認していたときは、これらの者も、罰せられることになる。積極的な同意に限られず、黙認した場合も処罰の対象となることから注意が必要である。

(e) 贈賄強制の抗弁

2018年法では、贈賄罪で起訴された者が、贈賄を公務員等に強制されていれば、その旨の抗弁を主張することができる。ただし、かかる抗弁を主張するためには、当該贈賄行為があったときから7日以内に捜査当局等へ報告することを要する。そのため、従業員による贈賄発覚時に迅速な対応ができるよう、各企業において従業員教育の徹底および内部通報制度の拡充を図ることが望ましいといえる。

3. コメント

このように2018年法により、インドにおける公務員等への贈賄行為に関する、贈賄側企業およびその幹部に対する責任が拡充された。要件を満たせば、上記2.に記載の「充分な手続の抗弁」や「贈賄強制の抗弁」を主張することができるが、そのためには、社内規程の整備、従業員の教育を含む、コンプライアンス体制を充分に整えていく必要がある。

加えて、インドでビジネスを行う日系企業は、インド法上の贈賄規制のみならず、米国の海外腐敗防止法(Foreign Corrupt Practices Act)、英国の贈収賄防止法(Bribery Act)および日本の不正競争防止法といった、インド国外の法律に規定されている贈賄規制が適用される可能性もある点に留意する必要がある。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

平野正弥/白井紀充/宮村頼光/仲居宏太郎

info.indiapractice@tmi.gr.jp

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