【コロナウイルス対応Q&A】株主総会分野Q&A *5月26日改訂版をご参照ください

国内外において新型コロナウイルスの感染拡大が続いている現状を踏まえ、TMI総合法律事務所は、クライアントの皆様が新型コロナウイルスへ対応する際にご留意いただきたい事項を、各分野ごとにQ&Aの形式にまとめて掲載しておりますので、ぜひご活用いただければ幸いです。

人事労務分野Q&A 2020年3月24日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200324-01.html

独占禁止法分野Q&A 2020年4月7日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200407-01.html

東証対応関連分野Q&A 2020年4月7日掲載・4月16日更新

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200416-01.html

契約分野(売買)Q&A 2020年4月7日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200407-03.html

■ 事業再生・倒産関連分野Q&A 2020年4月14日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/202000414-02.html

■ 個人情報保護・プライバシー分野Q&A 2020年4月21日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200421-01.html

□ 新型コロナウイルス感染症に関する各国の規制状況等については、こちらからご参照ください。

 

■ 株主総会分野Q&A

1 定時株主総会の延期

Q1:新型コロナウイルスの感染拡大を理由として定時株主総会を延期することは可能か。

株式会社の定時株主総会は、「毎事業年度の終了後一定の時期」に招集することが求められており(会社法296条1項)、多くの会社は、定款に「毎事業年度の終了後3か月以内に招集する」旨を定めていますので、例えば、3月決算の会社は6月に定時株主総会を開催することが通常です。

今般の新型コロナウイルスの拡大の状況次第では、定時株主総会を例年どおりに開催することが困難となるケースも想定されますが、この点に関連して、法務省は、「当初予定した時期に定時株主総会が開催できない状況が生じた場合にまで、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することが求められるものではなく、その状況が解消された後、合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りる」旨の見解を公表しており、かかる見解に従って定時株主総会の開催を延期するという選択肢をとることも可能です。

 【参考】 法務省ホームページ

 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00021.html

Q2:定時株主総会を延期した場合に、どの時点の株主が議決権を行使できるか。

定款上、定時株主総会の議決権行使のための基準日は、事業年度末日(3月決算の会社であれば3月末日)とされているのが通常であり、当該基準日現在の株主名簿に記載又は記録されている株主が定時株主総会において議決権を行使することになりますが、基準日株主が行使できる権利は、当該基準日から3か月以内に行使するものに限られています(会社法124条2項)。

そのため、定時株主総会の開催を事業年度末日の翌日から3か月を超えて延期する場合には、新たに議決権行使のための基準日を定め、当該基準日の2週間前までに、当該基準日と、行使できる権利の内容を公告する必要があります(会社法124条3項本文)。

Q3:定時株主総会を延期した場合に、どの時点の株主に剰余金の配当を行えばよいか。

期末配当についても、定時株主総会における議決権行使と同様に、定款上、事業年度末日を基準日とし、基準日現在の株主名簿に記載又は記録されている株主に配当を行うものとされているのが通常です。

もっとも、剰余金の配当の決定を株主総会の権限としている会社において、新型コロナウイルスの影響により定時株主総会の開催を延期した場合には、事業年度末日から3か月以内に剰余金配当議案を決議できないというケースも想定されます。

このようなケースについて、法務省は、「定款で定めた基準日の株主に対する配当を行わず、当初の基準日と異なる日を剰余金の配当の基準日と定め、基準日株主に剰余金の配当を行うこともできる」旨の見解を公表しています。なお、剰余金の配当の基準日を改めて定める場合には、Q2と同様に、当該基準日の2週間前までに公告する必要があります(会社法124条3項本文)。

2 株主総会の運営上の留意点

Q1:株主総会をインターネットを利用して開催することは可能か。

上場会社における一般的な株主総会は、物理的に存在する会場において、取締役や監査役等と株主が一堂に会する形態で開催されていますが、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、株主が実際に株主総会の会場に来場しない形で実施するために、株主総会をインターネットを利用して開催することが考えられます。

この点、株主総会への正式な出席にはならないものの、インターネットを利用して株主総会の審議等を確認・傍聴する形で株主総会に参加する方式(以下「ハイブリッド参加型バーチャル株主総会」といいます)は、現在の法制度においても実施可能であり、かつ、現在の株主総会実務との関係で調整すべき事項は少ないため、実際にこの方式で株主総会のインターネット配信を実施している上場会社もあります。

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会を行う場合には、株主に対しては、予め、通常の出席方法において株主が行うことができる権利行使(総会での議決権の行使や質問・動議の提出など)はインターネットを利用して行うことができないことを告知し、議決権行使書面による事前の議決権行使を促すことなどが考えられます。

他方、インターネットを利用して株主として株主総会に正式に「出席」する(すなわち、インターネットを通じてリアルタイムで議決権の行使や質問・動議の提出等が認められる)方式(以下「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」といいます)は、法律上は可能であるものの、現在の株主総会実務との関係で留意すべき事項が多く、導入にあたっては一定の検討が必要になります。

この点について、経済産業省は、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会の運営上の論点(株主の本人確認の方法や株主からの質問・動議の取扱いなど)を明らかにした「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を策定しており、参考になります。

新型コロナウイルスの収束時期が不透明な現状を踏まえると、直近の株主総会だけでなく、来年以降の株主総会のあり方も検討しておくことが有益であり、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会の将来的な実施も視野に入れることが考えられます。

 【参考】 経済産業省ホームページ

 https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200226001/20200226001.html

Q2:株主総会の開催を準備する際に留意すべき点は何か。

新型コロナウイルスの拡大が懸念されている中で株主総会を開催する場合には、感染拡大をできるだけ防止するための対応を採ることが必要であり、そのためには次表のような工夫を行うことが考えられます。

出席(予定)株主への対応

  • 自社ホームページ等において、体調のすぐれない方、高齢者、妊婦や基礎疾患のある方の出席の自粛をお願いする。
  • 自社ホームページ等において、議決権行使書面により議決権行使できることを予め周知する。
  • 出席株主にマスクの着用を呼びかけ、マスクを着用していない株主にはマスクを配付する。
  • 会場の受付や会場内において、体調不良と見られる株主への声がけ、検温を行う。37.5度以上の株主の入場を制限する。

総会の運営面での工夫

  • 通常よりも広い会場を借りる。
  • 座席の間隔を空けたり、会場を複数に分ける。
  • 施設側と協議するなどして従来よりも会場の換気を行うようにする。
  • アルコール消毒液を会場フロア各所に設置する。
  • 看護師を会場に待機させる。
  • 事業報告における説明を簡潔にするなどして、通常よりも短い時間での進行に努める。
  • 質疑応答はマイクを回さず、スタンドマイクで行う。
  • 株主の発言がある都度、除菌シート等でマイクを消毒する。
  • 映像を使うこと等により議事進行の時間を短縮する。

その他

  • 商品展示会や株主懇談会など任意のイベントを中止する。
  • お土産の配付を中止する。

 

Q3:新型コロナウイルスに関してどのような質問が想定されるか。

多くの上場会社が新型コロナウイルスの影響を理由に業績予想の引下げや月次売上高の下振れなどを開示しており、また、業績予想は見直していないものの、今後の影響を懸念するとしている企業も多数にのぼっています。今後も、この問題の収束時期は不透明であることや、政府や自治体等の公的機関から、企業に対して、事業活動を制約する趣旨の要請等が出されることも考えられます。また、企業としては、従業員等関係者の感染を防止するため、テレワークや時差通勤といった柔軟な働き方や、従業員を休ませる場合の手当などについて適切な対応が求められています。

株主総会に向けては、これら新型コロナウイルスの問題が会社に与える影響やこの問題を踏まえた会社の対応について整理したうえで、具体的な想定問答を作成しておくことが有益であり、具体的には、以下の各事項について想定問答を作成することが考えられます。

事業に関連する事項

  • 新型コロナウイルスによってどのような事業上の支障が生じているか(サプライチェーンへの影響の有無・程度や、消費の落込みの有無・程度等)。また、その支障に対してはどのように対応していくのか。
  • 新型コロナウイルスによって業績にどの程度の影響が生じているか。また、今後の見込みは。
  • 新型コロナウイルスによって事業計画に変更が生じるのか。生じるとして、どのような計画変更を予定しているか。
  • 政府や自治体等の公的機関からは、今後、どのような要請や命令が想定され、どの程度の影響があると考えているか。また、その想定に対して準備しているものがあるか。

従業員に関連する事項

  • 感染している従業員はいるのか。いる場合はどのような措置をとっているか。
  • 従業員(又は、取引先、顧客)の感染を防止するために職場ではどのような措置を講じているか。
  • テレワークや時差出勤、在宅勤務などの導入状況は。業務に支障はないか。

その他

  • 新型コロナウイルスの収束のために会社としてできることはないか。
  • 東京オリンピックの延期が決定されたが、これに伴う会社への影響はないか。
  • 消毒薬やマスクの備蓄は会社として行っているか。

 

3 その他株主総会に関連する事項について

Q1:決算手続が遅れる場合に、決算短信の開示の延期はできるか。

上場会社は、決算の内容が定まった場合、直ちにその内容を開示することが求められており(有価証券上場規程404条)、事業年度又は連結会計年度に係る決算については、遅くとも決算期末後45日以内に開示を行うことが適当である等とされていますが、東京証券取引所は、「今般の新型コロナウイルス感染症の影響により決算手続き等に遅延が生じ、速やかに決算内容等を確定することが困難となった場合には、「事業年度の末日から45日以内」などの時期にとらわれず、確定次第に開示することで差し支えない」旨を公表していますので、決算短信の開示を延期することも可能です。

但し、大幅に決算内容等の確定時期が遅れることが見込まれる場合には、その旨(及び確定時期の見込みがある場合には、その時期)の適時開示を検討する必要があるとされている点に留意する必要があります。

また、東京証券取引所は、新型コロナウイルスが上場会社の業績や事業運営等に与える影響について株主・投資家が注視している状況を踏まえ、新型コロナウイルスに関するリスク情報については、有価証券報告書等の提出に先立って、決算短信の添付資料等において記載するなど、適時、適切な開示を求めている点にも留意が必要です。

 【参考】 東京証券取引所ホームページ

 https://www.jpx.co.jp/news/1023/20200210-01.html

 https://www.jpx.co.jp/news/1023/20200318-01.html

Q2:有価証券報告書の提出の延期はできるか。

有価証券報告書については、事業年度終了後3か月以内に提出する必要がありますが(金融商品取引法24条1項本文)、やむを得ない理由により法定期限までに提出できないと認められる場合は、提出の延長申請を行い、財務(支)局長の承認を受けられれば提出期限を延長することができるとされています。

この点につき、金融庁は、今般の新型コロナウイルスの影響に伴い、中国子会社への監査業務が継続できないなどの事情が、上記の「やむを得ない理由」に該当する旨を指摘していますので、新型コロナウイルスの影響により法定期限までに有価証券報告書を提出することが困難である場合には、財務(支)局に相談の上、提出期限の延長をすることが考えられます。

 【参考】 金融庁ホームページ

 https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200210.html

以上

 

TMI総合法律事務所

弁護士 鈴木貴之

弁護士 大野修平

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