ブログ
洋上風力発電に関する近時の政策動向等について
2023.06.12
洋上風力発電に関する近時の政策動向等について
洋上風力発電事業に関し、いわゆる第2ラウンドの公募の受付期限が6月末に迫っているところですが、洋上風力発電事業に関連して、いくつかの政策面等でのアップデートがありましたので、その状況についてお知らせいたします。
(1) 再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定の状況
現在、再エネ海域利用法における海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域である、「秋田県八峰町及び能代市沖」、「秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖」、「新潟県村上市及び胎内市沖」及び「長崎県西海市江島沖」について、洋上風力発電事業を行うべき者を選定するための公募(いわゆる第2ラウンド)が行われております。当該公募は、2023年6月30日に受付が締め切られ、2024年3月までには事業者が決定される見込みとされております。
一方、上記指定された促進区域のほか、早期に促進区域に指定できる見込があり、より具体的な検討を進めるべき区域は「有望な区域」と位置づけられ、都道府県が再エネ海域利用法に基づく協議会の設置を希望し、利害関係者との調整に着手している等、将来的に有望な区域となり得ることが期待される区域は「一定の準備段階に進んでいる区域」(準備区域)と位置づけられています。
2023年5月12日、2022年に行われた国による系統確保スキームを前提とした調査の結果及び第三者委員会の意見を踏まえて、北海道の5区域について、新たに有望な区域として追加し、有望な区域は以下に示す10区域となりました(※1)。
有望な区域 | 準備区域 |
|
|
(※1)https://www.meti.go.jp/press/2023/05/20230512001/20230512001.html
(2) 日本版セントラル方式の導入について
これまで日本の洋上風力発電事業においては、海域の初期調査と環境アセスメントとを各事業者がそれぞれ実施しておりましたが、複数事業者が重複調査等を行っており、かかる調査の非効率性が指摘されていたほか、同一の海域における複数調査等により漁業の操業調整を強制することとなり、地域の漁業に負担を与える結果となっていることが指摘されておりました(※2)。日本版セントラル方式とは、各事業者ではなく、国又はその所轄機関が、洋上風力発電に係る手続の初期段階において調査等を実施及び管理する制度であり、上記のような非効率性及び問題を解決することを目的としています。資源エネルギー庁が2023年1月30日に公表した「洋上風力発電に係るセントラル方式の運用方針(概要)」(※3)によれば、日本版セントラル方式は、①事業実施区域の指定及び発電事業者の公募、②案件形成に向けた地域調整、③サイト調査(風況調査、海底地盤、気象海象)、④系統接続の確保、⑤環境影響評価及び⑥漁業実態調査という6つの要素から構成されております。この点、上記(1)の10海域のうち、北海道の3海域については、新たに導入される「日本版セントラル方式」を適用して、上記③のサイト調査を実施することとされており、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が主導するものです。
また、環境アセスメントについては、2023年6月1日に行われた洋上風力発電の環境影響評価制度の最適な在り方に関する検討会(第2回)(※4)において、「洋上風力発電に係る新たな環境影響評価制度の在り方について」が公表され、環境影響評価の全体的な流れ及び再エネ海域利用法との連携が示されています。この中で、環境アセスメントに関しては当初は環境省主導で調査が進められ、公募による事業者選定後に環境省から事業者への引き継ぐことを想定する案が示されております。
(※2)https://www.jogmec.go.jp/english/offshore-wind/offshore-wind_10_00001.html
(※3)https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/yojo_furyoku/dl/legal/central_unyou_kosshi.pdf
(※4)https://www.env.go.jp/press/press_01635.html
(3) 海洋基本計画の閣議決定
海洋基本計画は、我が国の海洋に関する基本方針を示すものであり、平成20年に政府が策定し、平成25年及び平成30年に5年ごとに見直しが行われて参りました。この海洋基本計画は、2023年4月28日付で、最新の2023年改定(第4次海洋基本計画)が閣議決定されております。今回の計画では、グリーン・トランスフォーメーション(GX)の視点に立った内容に加え、日本本土から遠く離れた離島や海域においても、海洋資源の開発・利用や海洋調査などの安全かつ安定した活動のために、海洋資源の活用に関する内容が盛り込まれています。これまで、日本の洋上風力発電事業の公募では、長崎県五島市では浮体式風力発電が採用されておりますが、第1ラウンド及び第2ラウンドともに、着床式が採用されております。また、将来の風力発電事業の公募に向けて一定の準備段階に進んだ海域については、浮体式の全部又は一部を岩手県久慈市沖及び富山県東部沖において採用される予定ですが、現在、残りの海域については着床式が予定されております。しかし、日本においては遠浅の海が元々限定されており、着床式にて実施可能な海域は限られております。この点、日揮や戸田建設等が参画する浮体式洋上風力発電推進懇談会が2023年3月7日に開催されており、その中で浮体式洋上風力の導入目標設定も議論されており(※5)、浮体式洋上風力発電は、今後、より注目されることとなると考えられております。法制度の面においては、今後、浮体式洋上風力発電の開発には、EEZの活用を含めた海域利用の点が明確化され、また、以下に述べる通り港湾機能をはじめとするインフラ整備も重要となってくると考えられます。
EEZの活用の関連では、EEZにおける洋上風力発電の実施については、EEZにおける洋上風力発電の実施に関する国際法上の問題に関する研究会において2022年10月6日に議論され、研究会の概要が公表されており、今後の議論が注目されております(※6)。
(※5)電気新聞2023年3月8日
(※6)https://www8.cao.go.jp/ocean/policies/energy/yojo_kentoukai.html
(4) 基地港湾等の整備について
2023年4月28日付で、国土交通大臣により、港湾法に基づき、洋上風力発電事業者に対して長期間貸付がなされる海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)として、新たに新潟港が指定されました。これまで指定を受けている能代港、秋田港、鹿島港及び北九州港に加えて5港目の基地港湾となります。
また、2021年5月に設置された「2050年カーボンニュートラル実現のための基地港湾のあり方に関する検討会」を、「洋上風力発電の導入促進に向けた港湾のあり方に関する検討会」と改称し、基地港湾のみならず洋上風力発電事業の各フェーズにおいて必要となる港湾機能を踏まえた議論を行い、本年夏頃までに、洋上風力発電の更なる導入促進に向けて必要となる港湾機能の整理、浮体式洋上風力発電設備の建設に対応した施設の規模について取りまとめを行う予定とされています(※7)。
(※7)https://www.mlit.go.jp/report/press/port06_hh_000270.html
その他エネルギー業界の主な動きについて
(1) 総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会バイオマス持続可能性ワーキンググループ第三次中間整理(案)に対するパブリックコメント募集(2023年5月25日)
表題の第三次中間整理(案)についてパブリックコメントの募集が開始されております。FIT制度の対象とすべき燃料について、事業者から要請のあった新規燃料の候補について、食料競合及びライフサイクル GHG (バイオマス燃料は、燃焼時のCO2排出がカーボンニュートラルになると整理されていますが、原料の栽培や燃料製造時等にもGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)が発生し、この原料の栽培から最終的な燃料利用に至るまでのGHG排出量の総量のことをいいます(※8))排出量の観点を含めた持続可能性基準を満たしたものを対象とすること、及び既存燃料に係るライフサイクル GHG 排出量の論点について検討が要請されておりましたが、バイオマス発電に用いられるバイオマス燃料について、新規燃料候補に食料競合の懸念がないことの確認や、ライフサイクルGHGの確認方法等について、中間整理がなされ、公表されております。
(総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会バイオマス持続可能性ワーキンググループ第三次中間整理(案)に対する意見募集について)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620223021&Mode=0
(※8)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/biomass_sus_wg/pdf/006_03_00.pdf
(2) 英国・エネルギー安全保障・ネットゼロ省との再生可能エネルギーパートナーシップに関する共同声明(2023年5月18日)
経済産業省と英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省との間において、2050年までのネットゼロ及びエネルギー安全保障の確保を目的として、洋上風力発電を含む再生可能エネルギーの導入に向けての日英両国の企業による協力等に関連して、パートナーシップを構築するとされております。共同声明においては、英国企業による日本の洋上風力発電に対する知見の共有や英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省による日本の再生可能エネルギーの普及のための政策発展支援などが含まれております。
(英国・エネルギー安全保障・ネットゼロ省との再生可能エネルギーパートナーシップに関する共同声明を発出しました)
https://www.meti.go.jp/press/2023/05/20230518003/20230518003.html
(3) 発電側課金の導入について 中間とりまとめ(案)に対するパブリックコメントの結果について(2023年4月20日)
2023年4月にこれまでの発電側課金の導入に関連して議論されてきた事項について、発電側課金の導入について 中間とりまとめ(案)において取りまとめられております。かかる中間とりまとめ(案)が、パブリックコメントに付されておりましたが、当該パブリックコメントの結果が2023年4月20日に公表されております。これまで政府が取りまとめてきた発電側課金の内容について大きな変更はなく、かかる内容をもって電力・ガス取引監視等委員会によって、経済産業大臣に建議がなされています(※9)。かかる建議について、経済産業大臣の了承後、具体的な規定やガイドラインの改定作業が資源エネルギー庁及び電力・ガス取引監視等委員会によって進められていることになると考えられます。
(発電側課金の導入について 中間とりまとめ(案)に対する意見公募の結果について)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=595223017&Mode=1
(※9)https://www.emsc.meti.go.jp/info/public/news/20230420001.html
Member
PROFILE