インド

法務基本情報

名称 特徴・留意点

1.進出形態

【主要法令】
  • 2013年会社法(Companies Act, 2013)
  • 2008年有限責任事業組合法(Limited Liability Partnership Act, 2008)
  • 2016年外国為替管理規則(支店、駐在員事務所、プロジェクトオフィス又はその他の事業所の設立)(Foreign Exchange Management (Establishment in India of a branch office or a liaison office or a project office or any other place of business) Regulations, 2016)
【ポイント】

日本企業がインドに拠点を設けて進出する際に利用可能な形態は、会社、有限責任事業組合(LLP)、駐在員事務所、支店又はプロジェクトオフィスの何れかとなる。

  • 会社

    2013年会社法に基づき、非公開会社又は公開会社を設立することができる。他の進出形態と異なり、あらゆる事業活動が認められる。

    非公開会社の設立には、一人会社の例外を除き、最低2名の株主を必要とし、200名の株主を上限とする。公開会社の設立には、最低7名の株主を必要とする。

    非公開会社は公開会社と比べて、コンプライアンスに関する規制が少ない。

  • 有限責任事業組合(LLP)

    有限責任事業組合(LLP)は2008年有限責任事業組合法により定められる組合である。事業活動は、外国直接投資がインド準備銀行の自動承認ルートで100%認可される分野に限り認められる。構成員の責任は、LLPへの出資額に限定される。また、会社設立が容易であり、取締役等を置く必要がない等シンプルな機関構成が認められている。課税上は、パススルーであり、構成員に課税される。

  • 駐在員事務所、支店、プロジェクトオフィス

    何れの場合も、開設には、インド準備銀行(RBI)から権限移譲されている承認取引者カテゴリー1銀行(AD Category 1 Bank)の許可が必要となる。支店は、営利活動を行うことが認められているが、駐在員事務所が、営利活動を行うことは認められていない。プロジェクトオフィスは、建設プロジェクト等遂行のために置かれるインドにおける期限付きの拠点であり、プロジェクト遂行にかかわる活動のみを行うことができる。

2.競争法

【主要法令】
  • 2002年競争法(Competition Act, 2002)
【ポイント】

2002年競争法は、同法の執行機関として、一定の調査・命令を行い、違反行為の是正や制裁金の支払命令行う権限をインド競争委員会(Competition Commission of India)に付与している。2009年より反競争的行為(カルテル)及び優越的地位の濫用に関する規制、2011年より企業結合に関する規制の運用が開始された。インド競争委員会は、継続的に人員を増強し、運用強化を図っている。

3.不動産法制

【主要法令】
  • 2016年不動産法(Real Estate (Regulation and Development) Act, 2016)
  • 2013年土地収用法(Right to Fair Compensation and Transparency in Land Acquisition, Rehabilitation and Resettlement Act, 2013)
  • 1882年財産移転法(Transfer of Property Act, 1882)
【ポイント】

不動産については、連邦及び州の両政府が規制を課すことができる。

2016年不動産法は消費者保護の見地から、ディベロッパー等を規制する法律であり、一定の情報開示及び不動産プロジェクトの登録要件が定められている。同法に違反した場合には刑罰が科される。

2013年土地収用法は政府による土地収用について規制をしており、その際の手続き及び立ち退きを要求された者の補償等につき定めている。

州法では、賃貸料規制、ゾーン規制等が定められている。

4.労働法

【主要法令】
  • 1947年産業紛争法(Industrial Disputes Act, 1947)
  • 1948年工場法(Factories Act, 1948)
  • 1946年産業雇用法(Industrial Employment (Standing Orders) Act, 1946)
  • 1952年従業員積立基金法(Employees’ Provident Funds and Miscellaneous Provisions Act, 1952
  • 1948年従業員州保険法(Employees’ State Insurance Act, 1948)
  • 1961年マタニティ給付法(Maternity Benefit Act, 1961)
  • 1972年退職金支払法(Payment of Gratuity Act, 1972)
  • 1926年労働組合法(Trade Unions Act, 1926)
  • 2013年セクハラ防止法(Sexual Harassment of Women at Workplace (Prevention, Prohibition and Redressal) Act, 2013)
【ポイント】

労働関連の包括的な基本法は存在せず、個別の法律を確認する必要がある。また、州法の確認も必須である。

1947年産業紛争法の下では、労働者を「ワークマン」と「ノン・ワークマン」の2つに分類し、手厚い保護が与えられているワークマンは、いわゆるブルーカラーワーカーを指し、ノンワークマンは、それ以外の労働者をさすが、その区別は一義的に明確でないケースも多いため注意が必要である。

5.知的財産権法

【主要法令】
  • 1970年特許法(Patents Act, 1970)
  • 1999年商標法(Trade Marks Act, 1999)
  • 2000年意匠法(Designs Act, 2000)
  • 1957年著作権法(Copyright Act, 1957)
【ポイント】

インドの知的財産法は、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(Trade Related Aspects of Intellectual Property Rights; TRIPS協定)に準拠している。

  • 特許権

    新規性、進歩性を有し、産業上利用できる製品又は方法に付与され、日本同様、先願主義が採用されている。

    特許の存続期間は20年である。

  • 商標権

    商標権の存続期間は10年間であり、その後、10年ごとに更新することができる。更新により永続的に保持することができる。

  • 意匠権

    2000年意匠法では、産業プロセス又は方法により製造された商品に使用されるために創造された新規又はオリジナルのデザインを保護対象としている。 意匠の登録により、出願人は当該デザインの排他的権利を取得する。

    意匠権の存続期間は10年間で、5年間の延長をすることができる。

  • 著作権

    著作権の登録制度はないが、著作権登録証明を取得することにより、裁判で著作権者であることの一応の証明になる。

    著作権は、原則、著作者の死後も60年間保護される。

  • ノウハウ及び企業秘密

    ノウハウ及び企業秘密保護を扱う立法は存在しないため、ノウハウの保護はコモンローの原則に従うことになる。

6.裁判制度・仲裁

【主要法令】
  • 1908年民事訴訟法(Code of Civil Procedure, 1908)
  • 2015年改正仲裁及び調停法(Arbitration and Conciliation (Amendment) Act, 2015)
  • 2015年商事裁判所法(Commercial Courts, Commercial Division And Commercial Appellate Division Of High Courts Act, 2015)
【ポイント】

最高裁判所を頂点とし、その下に高等裁判所、地方裁判所が存在する。また、訴額等を基準に、高等裁判所が第一審管轄裁判所となる場合もある。また、土地管轄は、1908年民事訴訟法の規定に従い、被告の住所地・本店所在地や請求原因事実の発生地を管轄する裁判所等に認められる。

その他、競争法、消費者法などを専門的に扱う、準司法的機能を果たす審判所・委員会もある。

例えば、会社法審判所(National Company Law Tribunal; NCLT)は、代表的な審判所の一つで、全国に11か所設置されている会社法関連の紛争解決機関である。NCLTは、基本的に申立てから3か月(延長すべき十分な理由がある場合は90日延長できる。)以内に審判を下す義務を負っており、迅速な処理がなされることが制度的に要請されている。2016年破産・倒産法(Insolvency and Bankruptcy Code, 2016)に基づく手続もNCLTの管轄である。

また、商事裁判所(Commercial Court)は、2015年商事裁判所法により設立され、一定の訴額以上の商事紛争を扱う裁判所である。

提訴期限との関係では、1963年提訴期限法(Limitation Act, 1963)により、事案ごとの提訴期限が定められているため注意を要する。例えば、契約に関する紛争の提訴期間は契約書に定められた履行日から3年間であり、契約書に履行日が定められていない場合は、不履行を通知した時から3年間である。

2015年改正仲裁及び調停法により、仲裁手続の明確化及び迅速化が図られ、手続の予測可能性が飛躍的に高まった。従前、インド国外での仲裁判断について、インドの裁判所による介入が問題視されていたが、現在ではかかる問題点は解消されている。

7.外国為替管理・輸出入管理

【主要法令】
  • 1999年外国為替管理法(Foreign Exchange Management Act, 1999; FEMA)
  • 1992年外国貿易法(Foreign Trade (Development and Regulation) Act, 1992; FTDR)
  • 1962年関税法(Customs Act, 1962)
  • 1975年関税法(Customs Tariff Act, 1975)
【ポイント】

インド準備銀行(RBI)がFEMAに関連する事項を管轄しており、FEMAに関する規則の制定、通達、ガイドラインの作成を行っている。FEMA規制では、非居住者によるインド株式の取得等に関しての規制が定められている。

FTDRに基づき、中央政府が輸入の条件につき、外国貿易通知(Foreign Trade Policy)を行う。物品の輸入を行う際には、インド貿易分類(Indian Trade Classification)に従う必要があり、その分類ごとに、輸入許可の要件が分けられている。FTDRは、輸出入の際には、輸出入コード(IECコード)が必要となると定めている。

8.コンプライアンス

【主要法令】
  • 1860年刑法(Indian Penal Code, 1860
  • 1988年汚職防止法(Prevention of Corruption Act, 1988)
【ポイント】

公務員等が、職務をし、若しくはしないこと、又は職務の遂行に際して便宜を図ること等の対価として何らかの利益を受領し又は受領すること(収賄行為)を禁止している。贈賄行為も収賄行為の教唆又は幇助として同様に禁止されている。

9.撤退

【主要法令】
  • 2016年倒産法(Insolvency and Bankruptcy Code, 2016; IBC)
  • 2013年会社法(Companies Act, 2013)
【ポイント】

撤退の方法は大きく分けて、保有株式を売却する方法及び会社を清算する方法の2つがある。

  • 株式譲渡

    株式を譲渡する場合には、譲渡価格に関する規制の遵守及び当局への報告が必要となる。

  • 精算

    株主総会の決議により会社を清算することができる。また、総資産額が1,000万ルピー(約1,600万円)未満の会社など、一定の基準を満たす会社であれば、短期間の(fast track)企業倒産手続きを利用することができる。

10.その他<外国投資規制>

【主要法令】
  • 統合版FDIポリシー(Consolidated Foreign Direct Investment Policy)
  • 1999年外国為替管理法(Foreign Exchange Management Act, 1999)
【ポイント】

直接投資の可否、許可される出資比率には、統合版FDIポリシーを参照することで確認でき、同ポリシーは毎年改定されている。近時急速な規制緩和が進んでいることから、常にポリシーの最新版を確認する必要がある。

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