フィリピン

法務基本情報

名称 特徴・留意点

1.進出形態

【主要法令】

外国投資法、フィリピン会社法

【ポイント】

外資の一般的な企業形態としては、以下のものがある。

現地法人

株式会社:取締役は5名以上必要、取締役が株主である必要があることから株主も5名以上が必要。必置機関として株主総会・取締役会があり、役員(Officer)としてPresident、秘書役、財務役の選任を要する。なお、一人会社は許容されていない。また、取締役のうち過半数はフィリピン居住者としなければならない。

支店

本店と債権債務関係が共通となる。居住代理人1名を置くことで設置可能であり、現地法人に比して簡素な機関設計による運営が可能となっている。

駐在員事務所

連携活動、市場調査活動および外国本社の事業の促進活動の権能のみを有し、営利を目的とする活動が禁止されている。

(本項の記載は、間もなく成立が見込まれている会社法改正法案において変更される可能性があります。)

2.競争法

【主要法令】

フィリピン競争法

【ポイント】
  • フィリピン競争法の執行機関であるフィリピン競争委員会(準司法的機能をも有する)による競争政策の実施及び同法に関する届出審査、調査等を行う。
  • カルテルや入札談合等の競争を阻害する合意及び支配的地位の濫用(廉価販売、抱合せ販売、拘束条件付き取引、不当な差別的取り扱い、再販価格または販売方法、販売場所の制限など)が禁止されている。
  • M&Aにおいて価額20億ペソ以上の取引(合併・株式取得・共同事業設立などの態様により要件が異なる)が行われる場合、フィリピン競争委員会に対する事前の届出義務がある。

3.不動産法制

【主要法令】

憲法、外国投資法

【ポイント】
  • 外国籍の個人・法人は土地所有権を取得できない。
  • 外国籍の個人・法人であっても、土地上の建物、コンドミニアムのユニット及びタウンハウスについては所有権を取得できる。
  • 外国籍の個人・法人は、最長で50年の土地使用権を取得できる。土地使用権の設定契約については、1回のみ、25年間の延長が認められている。工業団地等においては、長期の土地使用権の設定を受けた土地上に工場等を建設し操業を行うことが一般的である。

4.労働法

【主要法令】

憲法、フィリピン労働法典

【ポイント】
  • 労働契約は、法律上、原則として無期限とされ、季節性のある労働に関するもの、プロジェクト単位で終了するものなど一定の場合にのみ有期雇用とすることが認められる。また、試用期間は最大6か月とされ、これを超えて雇用されている場合には期間の定めなく雇用されているものとなる。
  • 時間外労働時間について、法律上時間数の上限は定められていない。
  • 解雇には、整理解雇と懲戒解雇の2種があるが、いずれも労働法の定める事由がなければ実施できない。解雇事由の存否に関しては裁判例上も相当厳格に解釈されており、解雇を行う場合には慎重に手続きを進める必要がある。
  • いわゆる派遣労働は原則として禁止されており、これに違反して労働者の派遣を受けた事業者は、当該労働者を自らの労働者として雇用する責任を負う場合がある。
  • 労働組合の組織率は低いが、全国的な上部組織の下で使用者側に対し過激な要求を行う労働組合も存在し、労使協定の改定交渉や個別的労働紛争が激しい争いに発展する例もある。

5.知的財産権法

【主要法令】

フィリピン知財法

【ポイント】
  • (a)著作権及び関連する権利 (b)商標及びサービスマーク (c)地理的表示 (d)意匠 (e)特許 (f)集積回路の回路配置 (g)開示されていない情報の保護が保護の対象。
  • 模倣品の流通は広く見られるが、近時、商標侵害に関する摘発が強化されている。
  • マドリッド議定書および工業所有権の保護に関するパリ条約等の国際協定に加盟している。

6.裁判制度・仲裁

【主要法令】

民事訴訟法、ADR法、仲裁法

【ポイント】
裁判制度
  • 三審制が採用され、原則として地域裁判所、控訴裁判所、最高裁判所の3回の審理を受けることができる。
  • 最高裁判所の判決・決定及び一部の下級審の判決・決定についてはオンライン上で公開されている。
  • 外国判決の執行:外国裁判所の判決は、フィリピンの裁判所において承認判決を受けた上で執行することができる。
  • 刑事事件において民事上の損害賠償請求訴訟を併合することができ、民事上の契約違反行為等が同時に犯罪構成要件を満たす場合には、刑事訴訟において争われることが珍しくない。
仲裁
  • 外資企業が当事者となる契約においては、国内仲裁または外国(シンガポールなど)仲裁が選択される例が多い。
  • フィリピンはニューヨーク条約の加盟国であるため、外国仲裁判断については当該条約及びこれに準拠した国内法の規定により、フィリピン国内で執行することができる。

7.外国為替管理・輸出入管理

【主要法令】

中央銀行外国為替取引マニュアル、反マネーロンダリング法等

【ポイント】
  • 5万ペソを超えるフィリピンペソのフィリピン国内への持ち込み又はフィリピン国外への持ち出しには中央銀行の許可を要するため、資金移動は外貨で行うことが現実的である。
  • 外貨による海外送金:目的により、中央銀行からの事前承認または中央銀行への事前登録を要する。事前登録がされていない場合には、フィリピンの銀行を介して送金原資となる外貨を調達することが禁止される。
  • 海外からの融資:一定の例外を除き、中央銀行に事前登録しない場合には、返済に用いる外貨をフィリピンの銀行を介して調達することが禁止される。

8.コンプライアンス

【主要法令】

改正刑法、大統領令46号、収賄及び汚職行為防止法等

【ポイント】
  • 改正刑法上は職務行為との関連性を要件とする贈収賄のみが処罰対象とされるが、他の特別法により、法令上は公務員またはその近親者への贈答行為が広く禁止され、処罰の対象となっている。
  • 外国公務員に対する贈賄や民間企業役職員に対する利益供与(いわゆる「商業賄賂」)を処罰する法令は存在しない。
  • 贈収賄に関しては、捜査段階においては特別の行政機関である行政監察院が関与し、公訴段階においては特別裁判所である公務員弾劾裁判所が管轄を有する。

9.撤退

【主要法令】

清算法、会社法

【ポイント】

フィリピンからの撤退は以下の形態により行われる。いずれの手続による場合も、税務当局からのクリアランスの取得に時間を要するため、手続の終了までには3年以上の期間を要することが一般であることに留意が必要である。

  • 会社の終了:会社の存続期間を短縮し、存続期間満了により会社を消滅させる。債務超過に陥っていない場合にはこの方法による撤退が一般的である。
  • 破産的清算:日本の破産同様、債務者または債権者の裁判所に対する申立てにより清算人を選任し、債権者に対する会社財産の分配を実施した上で会社を清算する。

10.その他<外国投資規制>

【主要法令】

憲法、オムニバス投資法、外国投資法、反ダミー法、会社法、その他の業法等

【ポイント】
  • 外国投資に関しては、ネガティブリスト記載の業種以外については原則として開放されている。ネガティブリストに定める業種については、外資の参入を全面的に禁ずるものを除き、一定の資本割合に限って外資企業の参入が認められている。
  • 外国資本比率の制限があるものの一例として、次のようなものがある。
    • 全面禁止:マスメディア、専門職、一定規模以下の小売業
    • 25%以下:雇用あっせん、防衛関連施設の建設契約
    • 30%以下:広告代理店
    • 40%以下:天然資源の開発等、土地所有、教育機関の所有、設立、運営、政府調達関係、ラジオ通信等
ページの先頭へ