タイ

法務基本情報

名称 特徴・留意点

1.進出形態

【主要法令】

1925年付けの民商法, 1992年付けの公開会社法、1999年付けの外国人事業法

【ポイント】
  • タイにおける進出形態としては、駐在員事務所、支店、会社などの方法が考えられる。
  • 駐在員事務所は、海外所在の親会社への情報提供及び支援業務を行うことを目的とする進出形態で、その業務内容は、タイにおける商品などの購入先候補の選出、商品等の普及、タイのマーケット情報の提供等に限られ、収益事業を行うことは認められない。日本企業がタイに会社設立を行う場合、通常は非公開会社の形態をとるが、非公開会社の場合には最低3名の株主が必要である。
  • パートナーシップ形態での進出も一応は可能であるが、実際の利用例はあまり見られない。

2.競争法

【主要法令】

2017年付けの取引競争法

【ポイント】
  • 1999年より取引競争法は存在していたが、詳細な規則やガイドラインが整備されていなかったこともあり、実際の執行事例がかなり少ないという経緯があった。
  • 改正法では取引競争委員会の権限を広汎にし、企業結合についても事前承認や事後報告を必要とする場合について定め、年間売上高の10%に達する罰金制度を採用するなど今後同法を効果的に執行するための様々な規定が置かれている。

3.不動産法制

【主要法令】

1954年付けの土地法、1979年付けのコンドミニアム法、1925年付けの民商法

【ポイント】
  • 外国人は原則として土地を保有することができない。なお、土地法上の「外国人」は外国籍の個人や外国企業のみならず、①外国人が49%超の株式を保有しているタイ法人及び②株主の人数の過半数が外国人であるタイ法人も含まれることに注意が必要である。
  • 例外として、①居住目的である場合にであって、タイにおいて一定事業に4000万バーツ以上の投資を行うなどの条件を充足している場合、1,600㎡を限度として土地を保有できたり、②一定の場合に投資奨励を得た企業による土地所有が認められる場合や、一定の場合にタイ工業団地公社(IEAT)認定の工業団地内の土地を所有できる場合等がある。
  • 土地所有規制を潜脱するための名義貸し等については刑事罰の適用があるため注意が必要である。
  • 建物については、土地とは別個の所有権を観念できる建物については、外資規制は存在しないため、外国人がその所有権を取得することもは可能である。
  • コンドミニアムについても外国人による区分所有は可能であるが、コンドミニアムの全ユニットの総床面積の49%を超過しない範囲でのみ所有が認められる。

4.労働法

【主要法令】

1975年付けの労働裁判所法、1975年付けの労働関係法、1992年付けの労働安全衛生環境法、1925年付けの民商法、1998年付けの労働者保護法、2017年外国人就労管理に関する緊急勅令

【ポイント】
  • タイの労働関係法制においてはかなり労働者に有利な規定が多い。
  • 労働契約は書面による必要はないが、雇用主と労働者との間の権利義務関係を明確にすべく、実務上は作成されている例が多い。
  • 1日の労働時間は原則として8時間、1週間の労働時間は原則として48時間を超過してはならない。
  • 時間外労働を行わせるには原則として労働者の事前の同意が必要である。
  • 従業員10人以上の事業所は、就業規則(タイ語)を作成しなければならない。解雇を行うためには、解雇予告の実行、勤続年数に応じた解雇補償金の払、有給休暇買取等を行う必要がある。なお、有期雇用の満了による雇用の終了についても、原則として解雇補償金の支払いを要する。
  • 労働者は口頭かつ手数料無料で労働裁判所に訴えを提起できる。
  • 外国人がタイで働くためには、就労ビザの取得及びワークパーミットの取得が必要となる。ワークパーミットが発給されるためには200万バーツ以上の資本金が必要で、外国人1人につきタイ人4人以上を雇う必要がある。

5.知的財産権法

【主要法令】

1979年付けの特許法、1994年付けの著作権法、1999年付けの種苗法、2000年付けの集積回路の回線配置保護法、2002年付けの営業秘密法、2003年付けの地理的表示法、2016付けの商標法

【ポイント】
  • 著作権、商標権、特許権、地理的表示、集積回路の回線配置、営業秘密が保護の対象。
  • 著作権については無方式主義が採用されているが、著作権登録制度は存在する。
  • 一定の知的財産関連事件について専属的に管轄する中央知的財産及び国際貿易裁判所が設立されている。
  • 知的財産権の執行の多くが刑事手続において行われている。その他、損害賠償や差止を求める民事手続や税関による水際での取り締まりも行われている。
  • マドリッド議定書および工業所有権の保護に関するパリ条約等種々の国際協定に加盟。

6.裁判制度・仲裁

【主要法令】

1934年付けの民事訴訟法、2002年付けの仲裁法

【ポイント】
裁判制度:
  • 原則として三審制で、職業裁判官が審理を行う。
  • 裁判例の公開は一部行われている。
  • 裁判所に提出する文書は、全てタイ語に翻訳しなければならない。
  • 裁判官の汚職事件の数は少なく、裁判の信頼性が高い。
  • クラスアクション制度が導入されている。
仲裁:
  • タイ国内の仲裁も比較的信用性が高く、諸外国仲裁に比して費用も低廉である。
  • タイはニューヨーク条約に加盟しているため、仲裁判断は原則として当事者を拘束するが、一方当事者が仲裁判断に従うことを拒絶した場合、裁判所への申立てが必要となる。

7.外国為替・輸出入管理

【主要法令】

1942年付けの外国為替管理法、1954年付けの財務省省令

【ポイント】
  • 5万ドル相当又はこれを超過する輸出については、代金受領後速やかに、かつ輸出の日から360日以内に、決済しなければならない。輸出代金は受領から360日以内に売却するか承認を受けたタイの銀行の外国通貨口座に入金しなければならない。
  • 輸入者は、輸入のための支払いにあたり、銀行に対して必要書類の提出の上で、自身の外国通貨口座において外国通貨を自由に引き出すことができる。
  • 輸入信用状(L/C)は自由に開設することができる。
  • サービス料、利子、配当、利益、ロイヤルティ等、資本取引以外の性質の海外送金については、銀行に必要書類を提出することで、原則として自由に行うことができる。

8.コンプライアンス

【主要法令】

1956年付けの刑法、1999年付けの反汚職法

【ポイント】
  • 一定の要件を満たす場合、社会的儀礼、慣習として例外的に公務員も財物その他の利益を受領できるものとされている。その場合、必ずしも金品や利益を公務員に提供した贈賄者が刑事責任の追及をうけるものではないと言い切れないものの、訴追可能性の指標とする見方もある。
  • 国営企業で勤務するものも反汚職法の適用対象となる公務員に該当する。
    第三者を介した贈賄行為も刑法上の教唆犯等として処罰されうる。

9.撤退

【主要法令】

1925年付けの民商法、2004年付けの破産法、

【ポイント】

タイからの撤退は以下の形態により行われる

  • 株式・出資持分の売却:タイ法人の株式・出資持分を売却する場合には、当事者の合意によりこれを行うことができる。
  • 解散・清算:会社が解散及び清算を行うためには出席議決権株主の4分の3以上の特別決議が必要。
  • 清算手続きにあたっては、税務調査が行われ、同手続きに数年の期間を要することが多い。
  • 破産:破産の申し立ては債権者が行うものとされている。また、破産申し立てが認められる条件としては、債務超過に陥っていることに加え、債務額が①法人の場合には200万バーツ以上、②個人の場合には100万バーツ以上でなければならない等の条件がある。

10.その他<外国投資規制>

【主要法令】

1979年付けタイ工業団地公社法、1997年付け投資奨励法、1999年付け外国人事業法、2007年付けの日タイ経済連携協定

【ポイント】
  • タイにおいて、外国人事業法上の“外国人(株式の50%以上を外国人が保有する法人を含む。)”が特定業種を行う場合には、投資奨励員会(BOI)の奨励認可を受けた場合等を除き、外国人事業許可が必要とされている。製造業は、外資規制の対象外であるが、サービス業全般について、当該許可を要する業種とされている点に留意を要する。
  • 日タイ経済連携協定により総合経営コンサルティング業、卸売業、小売業等特定業種については、外国人事業法に定める規制よりも緩和した規制が適用される。
  • “外国人”に該当しないタイ法人から過半数の出資を受けることにより外資規制の適用を回避することが原則として可能である。もっとも、いわゆるノミニーの利用などは禁止されている。
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