「インド最新法令情報‐(2017年3月号) 改訂版Model GST Lawのポイント」

1. はじめに

インドの財務大臣であるアルン・ジャイトリー氏は、2017年1月16日、インド独立以来最大の間接税改革といわれるGoods and Services Tax(物品サービス税。以下「GST」という。)の導入時期に関し、同年7月1日の導入が現実的である旨述べた。インドでビジネスを行う企業は、GST導入によるインパクト分析を行う等導入に向けた準備が本格化している。

インド政府は、2016年11月26日、改訂版Model GST Law(以下「モデルGST法」という。)を公表している。モデルGST法は、GSTに関する法律の草案であり、中央政府による課税であるCentral GST(CGST)は、この草案を踏まえて成立する法律によって規律される。また、各州による課税であるState GST(SGCT)も、各州において若干変更を加えるものの、基本的にモデルGST法と同様の枠組みを採用することとなる。

GSTの法制化には、憲法改正案の可決およびGST法案の可決という2つの手続が必要となるところ、憲法改正案は、既に連邦議会および州議会で可決され、大統領の署名を経て成立している。

モデルGST法は約200条に及ぶが、本号では、モデルGST法の内容のうち、特に日系企業にとって重要と思われる点を中心に解説する。

 

 2. 実体的側面

(1)       重要な定義

課税対象となる「物品(goods)」とは、金銭および有価証券を除く、一切の動産および執行可能な債権、並びに供給契約において土地から分離後に供給する旨合意された生育中の穀物、牧草その他の土地付着物をいい、一方、同じく課税対象となる「サービス(services)」とは、物品以外の一切のもののうち、金銭および有価証券を除いたものをいうとされている。

また、不動産の賃貸、知的財産の一時的な譲渡又は許諾、ソフトウエアの開発等、サービスとみなされる提供行為が法定されている。

(2)       供給の範囲

GSTは物品およびサービスの供給(supply)に対して課税されるところ、「供給」には、売買、譲渡、物々交換、交換、ライセンス付与、賃貸および業務上の処分等、一切の形態による供給が含まれる。また、対価を伴うものに限られず、代理人と本人間の物品の提供や同一事業者間の州外への倉庫移動等一定の対価を伴わない取引も「供給」に含まれる点が特徴的である。

また、「composite supply(以下「複合供給」という。)」および「mixed supply(以下「混合供給」という。)」という概念が導入されている。複合供給とは、性質上、通常の業務においてまとめて行われる複数の供給をいい、その場合には、主たる供給に基づき課税されることになる。一方、混合供給とは、1個の価格で行われる複数の供給をいい、そのような場合には、最も税率が高くなる供給を基準に課税されることになる。このような概念の導入により、各供給の分類を巡る紛争の未然防止につながることが期待されている。

(3)       供給の時点

供給者がGSTを支払う場合、物品の供給時点およびサービスの供給時点は、いずれも、原則として以下のうち最も早い日をいう。

①       請求書の発行日

②       請求書を発行すべき期間の末日

③       支払を受けた日として供給者の会計帳簿に記載された日

④       供給者の銀行口座に支払代金が振り込まれた日

一方、受取人がGSTを支払う場合、物品の供給時点は、原則として以下のうち最も早い日をいう。

①       物品の受領日

②       支払をした日として受取人の会計帳簿に記載された日

③       受取人の銀行口座から支払代金が振り替えられた日

④       請求書の発行日から30日後の日

また、受取人がGSTを支払う場合、サービスの供給時点は、原則として以下のうち最も早い日をいう。

①       支払をした日として受取人の会計帳簿に記載された日

②       受取人の銀行口座から支払代金が振り替えられた日

③       請求書の発行日から60日後の日

(4)       課税標準(評価方法)

GSTの課税対象になる物品又はサービスの価額は、取引価格と一致させることが原則となっている。取引価格は、原則として実際の支払額と一致するが、一定の補助金が支給された場合、関連当事者間取引である場合、代金以外の対価が存在する場合等、一定の場合は、所定の方式に従って実際の支払額を調整した額が取引価格となる。

また、値引きに関して、提供前の値引きについては請求書への記載が必要となり、提供後の値引きに関しては、提供前に値引きの合意が成立していたこと他の要件を満たす一定の場合のみ値引きを考慮できるとされており、場合によっては請求書や契約書の見直しが必要となるため注意が必要である。

(5)       税率

一部の例外や免税対象の生活必需品等を除き、18%の標準税率が予定されている。

 

 3. 手続的側面

(1)       登録

一部地域を除き、インド国内において1会計年度で総額200万ルピー(約340万円)以上の売上げを有する者は、供給元となる地が属する州において登録を受ける必要がある。また、売上額にかかわらず、州際取引を行う者、eコマースを行う者等一定の者も登録を受ける必要がある。

(2)       納税申告

納税申告は、供給した内容、供給を受けた内容等所定の事項を記載して、原則として毎月行う必要がある。また、年1回の納税申告も別途必要になる。

 

4. コメント

GSTの導入は、特に州を越えて取引を行っている企業に大きな影響を与え、場合によっては商流の見直し、価格設定の再構築、契約書の見直し等が必要となるため、入念な準備を行う必要がある。また、ITシステムにより自動化されることにより、取引先によるシステムへの適時に正確な入力が無い限り仕入税額控除が出来ない等、取引先との連携が極めて重要となる。さらに、州政府による現行の間接税(VAT等)の減免等のインセンティブを受けている場合には、その継続に関しては州政府との個別交渉が必要となる点にも注意が必要である。

施行までの間に、利害関係者からの意見等を踏まえモデルGST法の更なる改訂も示唆されているところであるが、現状においてはモデルGST法に基づき、GST導入に向けた準備を進めざるを得ない。

インドにおいて事業を行う外国企業は、モデルGST法の内容を十分理解するとともに、同法の改定や関連通達の発出を含めたGST導入に向けたインド政府の動向に今後も引き続き注目していく必要がある。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

平野正弥/白井紀充/奥村文彦

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