「インド最新法令情報‐(2017年4月号) 小規模企業等の簡易合併制度の施行」

1. はじめに

インド企業省(Ministry of Corporate Affairs)は、2016年12月7日、2013年インド会社法(Companies Act, 2013。その後の改正を含め、以下「会社法」という。)第233条第1項が定める簡易合併制度(以下「本簡易合併」という。)に関して、適用対象となる会社の範囲を定める通達(以下「本通達」という。)を発布し、同月15日から本簡易合併を施行した。簡易合併は会社法施行時に導入されたが、本通達の発布まで適用対象が定められず、未施行の状態が続いていた。

本号では、インドにおける通常の合併手続、並びに本通達および本簡易合併の概要を解説したうえで、本簡易合併の施行が実務に与えうる影響を分析する。

2. インドにおける合併手続の概要

(1)       通常の合併手続

インドにおける通常の合併手続の流れは概ね以下のとおりであり、全ての手続が完了するまでに標準的には180日から200日程度を要するといわれる。

 

①       合併計画書を作成する。

②       会社法審判所(National Company Law Tribunal)に対して合併計画書を提出し、株主総会および

    債権者集会の招集および開催の申立てを行う。

③       会社法審判所の命令に基づき、株主総会および債権者集会の招集および開催を行う。

④       会社法審判所に対して、合併許可の申立てを行う。

⑤       合併許可を取得し、登記手続を行う。

 

(2)       本通達が定める本簡易合併の適用対象

本通達が定める本簡易合併の適用対象は、以下のいずれかに該当する合併である。

①       小規模企業(払込資本金500万インドルピー未満かつ売上高2000万インドルピー未満の会社)同士の

    合併

②       持株会社とその完全子会社間の合併

③       その他所定の合併(2017年4月25日現在、規定されていない)

ただし、公開会社(上記②の場合を除く)、会社法第8条所定の公益を目的とする会社、および特別法に基づく会社が関与する合併については、本簡易合併を利用できない点に注意を要する。

 

(3)       本簡易合併の概要

本簡易合併の手続の流れは概ね以下のとおりであり、全ての手続が完了するまでに標準的には90日から100日程度を要すると見込まれる。

①       全ての合併当事会社の取締役会が合併計画書を承認する。

②       当該合併計画書を所管の会社登記官および清算人に提出する。

③       全ての合併当事会社の株主総会において、総株主の90%(頭数)の承認を得る。

④       全ての合併当事会社の債権者集会において、総債権者の90%(債権額)の承認を得る。ただし、総債

    権者が書面により承諾するときは債権者集会の開催を要しない。

⑤       全ての合併当事会社が支払可能宣言(declaration of solvency)を提出する。

⑥       インド中央政府の地方管区長(Regional Director)が合併を承認する。

ただし、地方管区長は、公益等を理由に本簡易合併を認めるべきでないと思料するときは、会社法審判所に対して通常の合併手続の適用を検討すべき旨通知できる。

3. コメント

本簡易合併の最大の特徴は、会社法審判所が合併手続に関与しない点にある。これにより、合併手続の完了までに要する日数が通常の合併に比して半分程度に短縮することが見込まれ、コストの節約にもつながることが期待される。

インドにおける通常の合併は、会社法審判所の承認を要するなど手続が煩雑であるため、迅速性が求められる企業買収の手段としてはあまり利用されてこなかった。本通達による本簡易合併の施行の結果、インドにおける企業買収プロセスの選択の幅が広がり、日系企業を含む外国企業の現地進出が加速することが期待される。また、本簡易合併は完全親子会社間の合併にも利用できるため、グループ会社の再編が加速することも想定される。

その一方で、本簡易合併の適用対象は非常に狭く、恩恵を受けられる企業が限定されるという批判も見られる。そのため、産業界からの働きかけにより、インド企業省が本簡易合併の適用対象を拡大する新たな通達を発布する可能性もあり、本簡易合併、特にその適用対象に関する動向には引き続き注目する必要がある。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

平野正弥/白井紀充/奥村文彦

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