「インド最新法令情報‐(2017年9月号) 2017年版統合版外国直接投資規制の公表」

1. はじめに

インド商工省産業政策促進局(Department of Industry Policy and Promotion, DIPP)は、2017年8月28日、統合版外国直接投資規制(Consolidated Foreign Direct Investment Policy。以下「統合版FDIポリシー」という。)の2017年版(以下「本ポリシー」という。)を公表した。統合版FDIポリシーは、外国からのインドに対する投資における出資比率の上限、承認手続等を定めるものであり、毎年1回改定されている。インド政府は、近年、外国からの投資を積極的に誘致するために、統合版FDIポリシーにおいて様々な規制緩和を行っている。

統合版FDIポリシーは、過去に出されたインド政府による個々の通達等を統合した内容となっており、最新版の統合版FDIポリシーを確認することで、インドにおける直近の投資規制の内容を知ることができる。本号では、本ポリシーの内容のうち、特に日系企業への影響が大きい点を取り上げる。

2. 本ポリシーの概要

(1)       政府承認機関の再編

インド経済庁(Department of Economic Affairs)は、2017年6月5日、外国直接投資に対する政府の事前承認につき、従前の承認機関である外国投資促進委員会(Foreign Investment Promotion Board, FIPB)を廃止し、新たに外国投資ファシリティ・ポータル(Foreign Investment Facility Portal, FIFP)を設置する旨の通達を発行した。FIFPは、申請者からFDIに対する承認申請を受理する窓口となり、受理された申請は、食品小売業、金融サービス業などの事業分野別に新たに設置された管轄部署が承認手続を実施する。従前は、FIPBが全ての申請の承認手続を実施していたが、申請窓口を一本化しつつ承認機関を細分化することにより、申請者の利便性を損なうことなく、より効率的に承認手続が行われることが期待される。

(2)       政府承認手続の明確化

DIPPは、2017年6月29日、外国直接投資に対する政府の事前承認に関して、標準処理手続(Standard Operating Procedure, SOP)を発表した。SOPは、申請時に提出すべき合計20点の書類をリスト化するとともに、承認機関が追加情報の提出を求める場合は申請後1週間以内に請求すべきこと、承認機関は原則として申請後10週間以内に結論を出すべきことなど、明確なタイムラインを設定している。これにより、承認手続の遅延が抑制され、より迅速に承認手続が行われることが期待される。

(3)       スタートアップ企業への外国直接投資

従前、インドのスタートアップ企業が海外から資金を集める方法は、インド証券取引所の登録を受けた海外ベンチャー投資会社(Foreign Venture Capital Investor)に対し、株式ないし債券を発行する場合に限られていたが、本ポリシーによって、非居住者一般に対し、一定の要件のもと、転換社債(convertible notes)を発行して、資金調達をする途が開かれた。

(4)       産業毎の出資規制の緩和

本ポリシーは、新たに、以下の分野における出資規制を緩和した。

①       防衛産業

従前、出資の上限が49%であったものが、100%に引き上げられた(49%を超える場合は、政府の事前承認が必要)。

②       民間空港プロジェクト

従前、出資比率が74%を超える場合は、政府の事前承認が必要とされていた。しかし、本ポリシーによって、出資比率を問わず全てインド準備銀行(Reserve Bank of India, RBI)に対する事後届出で足りることとされた。

③       航空輸送サービス業

これまで、出資の上限が49%であったものが、100%に引き上げられた(49%を超える場合は、政府の事前承認が必要)。

④       民間セキュリティ会社

これまで、出資の上限が49%であったものが、74%に引き上げられた(49%を超える場合は、政府の事前承認が必要)。

⑤       現金店頭販売の卸売業(Cash & Carry Wholesale Trading)

従前、単一ブランドの取扱いのみ認められていたが、本ポリシーにより、かかる制限は撤廃され、複数ブランドの取扱いも可能となった。

⑥       単一ブランド小売業

外資が51%以上出資する単一ブランド小売業に対しては、販売される製品価値の30%は、インド国内で調達しなければならないという規制がある。かかる規制に関し、「インド国内で調達できない、先端技術(‘state-of-art’ and ‘cutting- edge’ technology)を用いた製品」を販売する場合には、事業開始後3年間は、かかる規制の適用が猶予されることとなった。(※なお、単一ブランド小売業へは100%の出資が認められているが、49%を超える出資には政府の事前承認が必要である。一方、総合(複数ブランド)小売業に関しては、一定の要件のもと、51%までの出資が政府の事前承認を条件に認められている。)

⑦       インド産食品の小売業

従前より100%の出資が認められていたが、政府の事前承認が必要とされていた。本ポリシーによって、RBIに対する事後届出で足りることとされた。

⑧       金融サービス業

従前、外資によるノンバンク金融サービス業には、最低自己資本基準などの参入条件が存在した。しかし、本ポリシーによって、金融サービス業に対する外国直接投資は、ノンバンクか否かにかかわらず、全てRBIに対する事後届出で足りることとされた。なお、各種金融法制に基づく規制が別途存在することには留意を要する。

3. コメント

近年、日本からの対印投資は増加しつつあり、日本は、モディ政権が誕生した2014年以降、年間の国別対印投資額で旧宗主国である英国を抜き、世界第3位の地位を保持している。今月中旬には、シャトル外交の一環として安倍首相がインドを訪問し、モディ首相との間で、防衛、インフラ輸出等幅広い分野での更なる日印連携が確認された。

モディ政権は、Make in India(インドでモノづくりを)などのスローガンを掲げて、積極的に外資を誘致するために各種規制緩和を進めており、本ポリシーもその一環と捉えることができる。

本ポリシーは、外国直接投資規制を緩和するとともに、政府承認手続の迅速化を目指す点において、インドにおいて事業を行う企業にとって、好ましいものといえる。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

平野正弥/白井紀充/奥村文彦

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