「インド最新法令情報‐(2018年1月号) 2016年破産・倒産法改正のポイント」

1.  はじめに

2017年11月23日、大統領の署名を経て、2016年破産・倒産法(Insolvency and Bankruptcy Code, 2016。以下「本法」という。)に対する改正布告(以下「本改正布告」という。)が公布され、即日施行された。

(※本法の概要は、インド最新法令情報-(2016年6月号)を参照されたい(http://www.tmi.gr.jp/global/legal_info/column-se-asia/2016/india-6-2.html))。

本法のうち、企業の倒産処理手続(corporate insolvency resolution process, CIRP)に関する条項は、2016年12月1日から施行され、現在までに300件以上の倒産申立てが会社法審判所(National Company Law Tribunal)によって受理されたとのことである。

本改正布告による主な改正点は、再建案(resolution plan)を管財人(resolution professional)に提出することができる者を限定した点にある。すなわち、本改正布告の施行前は、特段の限定はなく、誰でも再建案を提出し、倒産手続における資産売却等に参加することができたが、本改正布告により、管財人による要求(invite)があった者に限定されることとなった。また、一定の欠格事由が列挙され、当該欠格事由を有する者(欠格者)は、再建案の提出等が認められないこととなった。

2.  欠格事由の概要

再建案を提出しようとする者若しくはその者と共同で行動する者、又はこれらのプロモーター若しくは経営権若しくは支配権を有する者が、以下の(1)乃至(10)のいずれかに該当する場合、再建案を管財人に提出することができない。

(1)         破産者のうち免責決定を受けていない者

(2)         1949年銀行規制法(Banking Regulation Act, 1949)に基づきインド準備銀行(Reserve Bank of India, RBI)が発行したガイドライン(以下「RBIガイドライン」という。)により、故意に債務履行を怠ったと認められる者

(3)         自己名義の口座が、RBIガイドラインにより、不良資産(non-performing asset, NPA)に分類され、当該分類がされた日から1年以上が経過した者(但し、再建案の提出前に、当該口座に係る弁済期が経過した債務およびその利息を完済した者を除く。)

(4)         2年以上の懲役又は禁固刑が予定されている犯罪の有罪判決を受けた者

(5)         2013年会社法(Companies Act, 2013)における取締役の欠格事由に該当する者

(6)         インド証券取引委員会(Securities and Exchange Board of India, SEBI)の命令により、証券市場で取引することを禁じられている者

(7)         不当に有利な取引、市場価格を下回る取引、詐害的取引などを行い、本法における裁定当局(会社法審判所)の命令を受けた者

(8)         ある企業の債権者のために執行可能な保証をして、当該企業が本法に基づく倒産手続の対象になった者

(9)         上記(1)乃至(8)に該当する関係者(connected person)

(10)       インド国外の法律に基づき、上記(1)乃至(8)の欠格事由に該当すると認められた者

上記(9)にいう「関係者」とは、以下のいずれかに該当する者をいう。

(ア) 再建案を提出しようとする者のプロモーター又はその者の経営権若しくは支配権を有する者

(イ) 当該倒産処理手続中に当該倒産企業のプロモーターになる者又は経営権若しくは支配権を取得する者

(ウ) 上記(ア)又は(イ)の親会社、子会社、関連会社又は関連当事者

3.  その他の改正

上記以外の主な改正点は、以下の2つである。

①    本改正布告の施行前に提出された再建案であっても、本改正布告の施行時点で再建案の承認が未了である場合は、上記2で述べた欠格者は、再建案を提出することはできない。

②    清算手続においても、清算人は清算企業の資産又は債権を上記2で述べた欠格者に売却することはできない。

4.  考察

上記(1)乃至(10)の欠格事由のうち、特に、「関係者」の定義は広汎であり、例えば、不良資産に投資している海外のPEファンド等が欠格者に該当してしまうのではないかといった批判があるところである。

また、多くの日系企業がインド企業と合弁事業を行っており、合弁パートナーについて債務保証をするケースが数多く見受けられるが、合弁パートナーにつき倒産手続が開始された場合には、上記欠格事由の(8)に該当し、当該日系企業は、当該合弁パートナー以外の企業に関するものを含め、再建案を提出できなくなる。

さらに、日系企業の子会社や関連会社が上記(1)乃至(10)のいずれかに該当する場合にも、当該日系企業は欠格者となってしまう。

再建案が提出できないと、日系企業をスポンサーとした再生や事業再生投資の目論見が外れるなどの可能性がある。

今後の法改正等により、欠格事由に一定の限定が加えられる可能性はあるものの、現状では、このような広い範囲の当事者が欠格者に該当する可能性がある点に留意する必要があるといえる。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

平野正弥/白井紀充/奥村文彦/仲居宏太郎

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