「インド最新法令情報‐(2018年2月号) 外国直接投資規制の更なる緩和」

1.はじめに

インド政府は、2018年1月10日、2017年版統合版外国直接投資規制(Consolidated Foreign Direct Investment Policy of 2017。以下「2017年統合版FDIポリシー」という。)の一部改定(以下「本改定」という。)を閣議決定により承認した。統合版FDIポリシーは、外国からのインドに対する投資における出資比率の上限、承認手続等を定めるものであり、毎年1回アップデートされている。インド政府は、近年、外国からの投資を積極的に誘致するために、FDIポリシーにおいて様々な規制緩和を行っている。本改定は、2017年統合版FDIポリシーによる外資規制の一部をさらに緩和するものである。(※2017年統合版FDIポリシーの概要は、インド最新法令情報-(2017年9月号)を参照されたい。)

なお、本改定の施行は、外国為替管理法(Foreign Exchange and Management Act, FEMA)の通達日から開始されることになっており、通達は2、3か月後になるとみられている。

本号では、本改定による外資規制の緩和のうち、特に日系企業への影響が大きい点を紹介する。

2.産業セクター別規制緩和の内容

(1) 単一ブランド小売業

これまで、単一ブランドのみを取り扱う小売業に関しては、自動承認による49%までの出資が可能であり、政府の事前承認および一定の条件を満たした場合のみ100%の出資が可能となっていた。本改定により、自動承認による100%の出資が認められることとなり、政府の事前承認は不要となる。また、51%以上の出資が行われる場合、販売する製品価値の30%は、インド国内で調達しなければならないという義務が課せられているが、本改定により、インドでの小売業開始から5年間は、かかる義務の適用が毎年ではなく、当該5年間の平均値へと若干緩和されることとなる。さらに、既にインドで調達し、インド国外で販売活動を行っているグローバル企業は、当該調達分をインドでの小売業開始から5年間は、上記30%の算定に加えてもよいことになる。

なお、これまでどおり、販売される製品価値の30%を満たしているかは、当該企業の法定監査人(statutory auditor)が、監査済みの会計を確認することによって、裏付けることになっている。

一方、総合(複数ブランド)小売業に関しては、2017年統合版FDIポリシーは、政府の事前承認および販売する製品価値の30%をインド国内の中小企業から調達する義務を課すなど一定の要件のもと、51%までの出資を認めているが、この点については、現状が維持された。

(2) インド国有航空会社

2017年統合版FDIポリシーでは、外国の航空会社は、政府の事前承認を条件に、インドの航空会社に対して49%まで出資することができたが、インド国有航空会社(Air India)に対しての出資は禁止されていた。本改定では、政府の事前承認があれば、インド国有航空会社に対し、49%までの出資が認められる。かかる改定は、2018年中に予定されている同社の民営化へ向けた1つのステップであるとみられている。

(3)不動産仲介業

これまで、不動産仲介業が、参入が禁じられている「不動産業」 (real estate business)に該当するのか否については、明らかではなかった。本改定では、不動産仲介業は、参入が禁じられている「不動産業」には該当せず、自動承認により、100%の出資が可能であることが明らかにされた。

(4)電力サービス

電力サービス事業については、2010年中央電力規制委員会(電力市場)規制(Central Electricity Regulatory Commission (Power Market) Regulations, 2010)の下で登録された事業に対して49%の出資が認められている。2017年統合版FDIポリシーでは、外国機関投資家(foreign institutional investors, FIIs)および外国ポートフォリオ投資家(foreign portfolio investors, FPIs)は、株式流通市場(Secondary Market)でのみ出資することが可能だったが、本改定により、株式発行市場(Primary Market)においても、電力サービス分野ごとの限度内で出資をすることができることになる。

(5)現金以外を対価とする株式の発行

現金以外を対価とする株式の発行は、2017年版FDIポリシーでは、政府の事前承認によってのみ認められていた。本改定においては、自動承認で出資が認められている産業分野では、設立費用、機械類の導入など、現金以外を対価とする株式の発行が、自動承認によってできることになる。

(6)インドの投資会社に対する投資

2017年統合版FDIポリシーにおいては、インドの投資会社又は有限責任組合(limited liability partnership, LLP)に対して、政府の事前承認を得ることによって、100%の出資をすることができたが、自動承認ではなかった。本改定では、インド証券取引委員会(Securities and Exchange Board of India, SEBI)やインド保険規制開発局(Insurance Regulatory and Development Authority of India, IRDA)などの規制当局により既に規制を受けている出資活動は、自動承認で100%の出資が認められることとなる。

3.コメント

2016会計年度のインドへの外国直接投資の額は、前年度の554.6億米ドルを上回り、過去最高の600.8億米ドルを記録した。2017年8月末には、2017年統合版FDIポリシーが公表され、単一ブランド小売業、航空輸送サービス業、防衛産業、インド産食品の小売業などの分野で出資規制が緩和された。本改定は、単一ブランド小売業を含むインド市場の重要な産業セクターにおける規制緩和を更に進めるものであり、すでにインド市場に参入し、事業拡大を目指している日系企業のみならず、インド市場への新規参入を検討している日系企業にとっても、注目に値するものと思われる。

なお、2019年に国政総選挙が予定されていることから、政府は、農民保護のための財政支出等国内の政策に注力し、2018年中に更なる大幅な外国直接投資の規制緩和は行われないとみられている。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

平野正弥/白井紀充/奥村文彦/仲居宏太郎

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