「インド最新法令情報‐(2019年11月号) 関連当事者取引に関する規制の改正」

1.はじめに

インド政府は、2019年11月18日付けの会社法施行規則を改正する旨の通知(notification)により、インド会社法上の重要な規制の一つである、関連当事者間取引に関する規制(以下「本規制」という)の適用要件の一部を変更した(以下「本改正」という)。本規制は、一定の取引に関し、取締役会又は株主総会での承認を義務付けるものであり、承認を欠く取引はその効果を取り消し得るものとなるため、インドでビジネスを展開する日系企業にとって必ず押さえておく必要のある重要な規制である。本稿では、本規制を概観したうえで本改正の内容を紹介する。

2.関連当事者の定義

インド会社法上、以下a.~h.の何れかに該当する者は、関連当事者(related party)に該当するとされており、原則として本規制の対象となる。

なお、2015年のインド会社法改正により、持株会社と完全子会社間の取引は、両社の連結財務諸表があらかじめ株主総会で承認されていることを条件として、本規制の対象から除外されることとなった。さらに、同年に公表された免除措置により、以下h.に関しては、非公開会社への適用が免除されることとなった。例えば、インド子会社が非公開会社である場合、当該インド子会社と日本の親会社との取引は本規制の対象外ということになる。

a. 取締役又はその親

b. 主要経営責任者又はその親族

c. 取締役、マネージャー又はその親族がパートナーである組織

d. 取締役、マネージャー又はその親族が株主又は取締役となっている非公開会社

e. 取締役又はマネージャーが取締役となり、親族と併せて払込資本の2%超の持分を保有する公開会社

f. 法人であって、その取締役会、マネージング・ディレクター又はマネージャーが、取締役又はマネージャーの助言、指示もしくは指図に従い活動している場合

g. その者の助言、指示もしくは指図に従い取締役又はマネージャーが活動している場合における当該人物(ただし、専門家としての立場において助言、指示もしくは指図がなされている場合を除く)

h. 親会社、子会社又は関連会社、兄弟会社

3.本規制および本改正の概要

関連当事者間で、以下の取引を行う場合には、その取引金額等に応じて予め取締役会又は株主総会の承認を得る必要があるところ、本改正により、以下3.(3)に記載の通り、株主総会の承認が必要となる取引の要件が変更された。

(1)取締役会の承認が必要となる場合:

  ①商品又は材料の販売、購入又は供給

  ②資産の販売、処分又は購入

  ③資産のリース

  ④サービスの利用又は提供

  ⑤商品、材料、サービス又は資産の購入又は販売に関する代理人の選任

(2)株主総会の決議が必要となる場合:

(従前は株主の3/4以上の賛成を必要とする特別決議が求められていたが、2015年のインド会社法改正により株主の過半数の賛成で足りる普通決議に緩和された。また、本改正により、10憶/5憶ルピーという金額基準が外された。)

取引態様

本改正前

本改正後

上記3.(1)①⑤

売上高の10%又は10憶ルピーの何れか低い額以上の取引

売上高の10%以上の取引

上記3.(1)②⑤

純資産の10%又は10憶ルピーの何れか低い額以上の取引

純資産の10%又は10憶ルピー以上の取引

上記3.(1)③⑤

純資産の10%、売上高の10%、又は10憶ルピーの何れか低い額以上の取引

売上高の10%以上の取引

上記3.(1)④⑤

売上高の10%又は5憶ルピーの何れか低い額以上の取引

売上高の10%以上の取引

 

(3)    適用除外

対象取引が、(i)「通常の業務の過程(ordinary course of business)で行われ、かつ、(ii)「独立当事者間原則(an arm’s length basis)」に則っている場合には、本規制は適用されない。もっとも、(i)(ii)の具体的判断基準は関連法令上明確ではないため、かかる適用除外規定を根拠として取締役会決議又は株主総会決議を不要と判断するのは実務上容易ではない点に留意する必要がある。

4.コメント

上記の通り、幅広い種類の取引が本規制の対象となる。大企業であっても同族企業の多いインドにおいては、関連当事者間での不適切な取引に関する当局の目は厳しいため、本規制の内容を正確に理解し、該当する機関決定を欠くことのないよう、十分注意する必要がある。また、合弁会社においては、本規制の対象となることで、場合によっては合弁パートナーの介入を受けることになるため留意すべきである。本改正により、10憶/5憶ルピーという金額基準が外れたことにより、本規制の対象が限定されたと言え、迅速な意思決定(ビジネス遂行)の観点からは歓迎すべき改正であるといえる。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

茂木信太郎/白井紀充

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