「インド最新法令情報‐(2019年9月号) 外国直接投資規制の更なる緩和」

1.はじめに

インド政府は、2019年8月28日、外国直接投資規制(Foreign Direct Investment Policy。以下「FDIポリシー」という。)の一部改定(以下「本改定」という。)を閣議決定により承認した。FDIポリシーは、外国からインドに投資する際の出資比率の上限および承認手続等を定めるものであり、毎年1回見直しが行われている。近年、インド政府は、インドを魅力的な投資先とするために、FDIポリシーについて様々な点で規制緩和を行っている。これまでのFDIポリシーの改定の結果、インドは過去5年間で記録的な外国直接投資額を獲得し、2014年から2019年までのインドへの外国直接投資の総額は2860億米ドルとなっており、2009年から2014年の外国直接投資の総額(1890億米ドル)と比べて大幅に増加している。

本改定においては、単一ブランド小売業に対するオンラインストアでの販売を可能にするもの、新たな事業分野を外国直接投資に開放するものなど、インパクトの大きい改定がなされている。

本号では、本改定の緩和のうち、特に日系企業への影響が大きい点を紹介する。

2.本改定における主要な変更点

⑴ 単一ブランド小売業(SBRT)

ア オンライン販売に対する規制緩和

これまでのFDIポリシーでは、SBRT事業体に対しては、オンラインストアを通じて当該ブランドの小売りをする場合、オンライン販売を開始する前にインド国内の実店舗での営業が必要とされていた。本改定により、オンライン販売の開始から2年以内にSBRT事業体が実店舗をインド国内に開店することを条件として、実店舗を開店する前にオンライン販売を先行して実施できることとなった。

これにより、インド国外のSBRT業者がインドにおける実店舗とオンライン販売のビジネス展開の開始時期を柔軟に決定することが可能となり、インドへの投資がより魅力的になることが期待される。

イ 現地調達要件の明確化および緩和

これまでのFDIポリシーでは、外国直接投資の場合においてSBRT事業者の出資が51%を超えるときは、販売する製品価値の30%は、インド国内で調達しなければならないという義務が課せられていた。(この点につき、インド最新法令情報-(2018年2月号)を参照されたい。)本改定では、外国直接投資の場合のSBRT事業体による単一ブランドのインド国内における調達については、調達された商品がインドで販売されているかどうかに関係なく、現地調達にカウントされることが明確化された。

また、既にインドで調達し、インド国外で販売活動を行っているグローバル企業は、当該調達分をインドでの小売業開始から5年間は、上記30%の算定に加えてもよいことになっているが、本改定では、一般的なビジネス慣行を踏まえ、SBRT事業者のグループ会社だけでなく、当該事業者から調達を請け負った第三者による調達であっても、現地調達要件である30%の算定に加えてもよいこととなった。

⑵ 石炭鉱業

これまでのFDIポリシーでは、石炭鉱業への外国直接投資出資について、自動承認による100%出資は、発電所等による自家消費のための採掘にのみ許可されていた。本改定により、石炭の加工を行うインフラストラクチャーの採掘活動に対しても、自動承認による100%出資が許可されることとなった。これにより、インド国外の鉱業会社が炭鉱を所有することや、石炭の加工、販売および輸出が実施できることとなり、国外企業の最先端技術がインド国内に導入されることが期待されている。

⑶ デジタルメディア

これまでのFDIポリシーでは、「ニュースと時事問題」を扱うテレビチャンネルのアップリンキング事業への外国直接投資出資について、政府の事前承認の下、49%までの出資が認められており、新聞や定期刊行物などの印刷メディア事業に対しては、26%までの出資が認められていた。本改定では、デジタルメディアを介した「ニュースおよび時事問題」のアップロード又はストリーミングを行う事業に対して、政府の事前承認の下、26%までの出資を許可されることとなった。

これは、印刷メディアとデジタルメディアとの投資規制における統一性を図ることを目指したものと考えられる。

3.コメント

本改訂は、FDIポリシーを簡素化することで、インド国内におけるビジネスを容易にし、より多くの外国直接投資をもたらすことを意図している。特に、オンライン販売に対する規制緩和により、インド国内に未だ実店舗を抱えていない外資のSBRT業者がオンライン販売をする場合、今後はインド国内のECサイトに出品することなく、一定の条件の下で自社による直接販売が可能となった。本改定は、インド市場に参入し、事業拡大を目指している日系企業のみならず、インド市場への新規参入を検討している日系企業にとっても、注目に値するものと思われる。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

茂木信太郎/三田村大介/仲居宏太郎

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