「インド最新法令情報‐(2019年1月号) 電子商取引分野における対外投資規制」

1.はじめに

インド商工省産業政策振興局(Department of Industrial Policy and Promotion 。以下「DIPP」という。)は、2018年12月26日付け2018年通知第2号(Press Note No.2 of 2018。以下「通知第2号」という。)において、統合版対外直接投資ポリシー(Consolidated Foreign Direct Investment Policy。以下「FDIポリシー」という。)を改正し、電子商取引分野における規制を強化(明確化)した。通知第2号は、2019年2月1日から施行される。

本稿では、日系企業への影響が考えられる箇所を中心に、通知第2号による主要な改正点の概要につき解説する。

2.電子商取引分野における規制の概要

FDI ポリシーは、電子商取引(Eコマース)のビジネス形態を、①マーケットプレイスモデル(電子商取引事業者が、売買の当事者間の取引を容易にするために、ITプラットフォームや電子商取引のインフラ(以下「マーケットプレイス」という。)を提供するビジネスモデル)と、②在庫モデル(電子商取引事業者自身が商品を所有し、消費者に対して直接的に商品を販売するビジネスモデル)の2つに分類している。FDIポリシーは、前者(①)を採用している企業については政府による許可を要せずして、外資がインド企業に対して対外直接投資を行うことができるとしているが、後者(②)を採用している企業については対外直接投資を行うことを禁止している。

3.主要な改正点

(1)   在庫のコントロール

これまで、マーケットプレイスモデルにおいて、電子商取引事業者が在庫を保有(所有)することは禁止されていたものの、在庫を管理(倉庫で保管、梱包、発送)する業務をベンダーから請負うことで、在庫を間接的にコントロールし、事実上、在庫保有(所有)の禁止を潜脱する事例が散見された。

このような実態を受けて、通知第2号により、要件が加重され、電子商取引事業者が在庫をコントロールすることも規制されることとなった。なお、「コントロール(control)」という用語の明確な定義が置かれていないため、どのような態様で在庫を取り扱う場合が「コントロール(control)」に該当するかが明確ではない点に留意が必要である。

(2)   25%ルールについて

これまで、マーケットプレイスにおける単一のベンダー(およびその企業グループ)による寡占を防止するため、単一のベンダー(およびその企業グループ)があるマーケットプレイスにおける売上高の25%以上を占める商品を販売することは禁止されていた。しかし、電子商取引事業者が複数のベンダーを設立し、それぞれのベンダーを通じて商品を販売し、それぞれの売上高を25%以下に抑えることで、当該規制は事実上回避されていた。

このような状況を受けて、通知第2号により、あるマーケットプレイスにおいて、ベンダーによる在庫の購入の25%以上が同一の電子商取引事業者またはその関連会社によるものである場合、当該ベンダーが当該マーケットプレイスで商品を販売することも禁止されることとなった。

(3)   電子商取引事業者による出資の禁止

通知第2号により、電子商取引事業者またはその関連会社による出資を受けているベンダーが、当該電子商取引事業者が運営するマーケットプレイスで商品を販売することも禁止されることとなった。

(4)   電子商取引事業者による排他的取引の義務付けの禁止

通知第2号により、電子商取引事業者が、ベンダーに対して、当該電子商取引事業者のマーケットプレイスでのみ商品を販売するよう義務付けることが禁止されることとなった。

(5)   ベンダーの扱いにおける平等

通知第2号により、電子商取引事業者がベンダーに提供するサービス(倉庫保管、物流、受注処理、広告、マーケティング、支払い、資金調達等)を独立企業間(アームスレングス)原則に則り、かつ、公正で差別のない方法(電子商取引事業者の関連会社が提供するキャッシュバックを含む。)で行うことを義務付けられた。すなわち、電子商取引事業者は、類似の状況(similar circumstances)にあるベンダーに対しては、同様のサービスや設備を提供しなければならないこととなった。

4.まとめ

通知第2号は2月1日から施行されるが、多くの問題点が指摘されている。例えば、上記3.(3)の出資の禁止に関する規制によって、電子商取引事業者からベンダーへの資金提供の総額が減少し、市場の成長が阻害されることが懸念される。他にも、上記3. (4)の排他的取引の義務付けの禁止に関する規制に関しては、どのような場合について、電子商取引事業者より、ベンダーが排他的取引を義務付けられたといえるのかが明確ではないという指摘を受けている。例えば、ベンダーによっては、事業戦略として、特定のマーケットプレイスに商品を集中させ、限定販売を自発的に行うことにより、コスト削減および物流の確保を図ることも考えられるところ、このようなベンダーについては必ずしも排他的取引を義務付けられたとはいえないはずであるが、これが自発的なものか強要によるものかの区別は外形上困難ではないか、といった指摘である。加えて、上記3. (5)のベンダーの扱いにおける平等についても、電子商取引事業者が、自社の売上増加に積極的に貢献するベンダーを優遇したいと考えるのは当然であるともいえるところである。すなわち、ディワリ等の祝祭シーズンにおける短期的な売上増加のために、期間を限定した手数料の減額に同意するベンダーや、注文より短期間で商品発送を行えるベンダー等を優遇的に扱うことにより、電子商取引事業者が、電子商取引事業者の運営するマーケットプレイスの拡大を図ることは、何ら不思議なことではない。このように、通知第2号へは、多数の批判が寄せられており、今後規制内容の変更、明確化等が行われる可能性が高いため、常に最新の規制内容を確認することが重要である。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

平野正弥/白井紀充/宮村頼光/仲居宏太郎

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