「インド最新法令情報‐(2019年2月号) 対外商業借入規制の改正」

1.  はじめに

インド準備銀行(以下「RBI」という。)は、インド企業による海外からの資金調達の容易化を目指し、対外商業借入(以下「ECB」という。)に関する規制の見直しを行い、2019年1月16日、従前のECBについての規制(以下「旧ECB規制」という。)に代わるものとして、2018年外国為替管理(借入れおよび貸付け)規制(Foreign Exchange Management (Borrowing and Lending) Regulations, 2018。以下「新ECB規制」という。)を導入した。

本稿では、日系企業への影響が考えられる箇所を中心に、新ECB規制による主要な改正点につき解説する。

2.  新ECB規制の概要

(1)   RBIによる事前承認

旧ECB規制では、業界(セクター)ごとに、RBIの事前承認に関する異なる基準が設けられていたが、新ECB規制により、全ての業界(セクター)について、借入金額が7億5,000万米ドル以下であれば、一律に、RBIの事前承認が不要(automatic route)となった。これにより、多くの業界において、従前に比べECBを利用してより多額の資金調達を迅速に行うことができるようになった。

(2)   ECBの区分の変更

旧ECB規制において定められていたECBの区分が変更され、「中期外貨建てECB(区分I)」および「長期外貨建て(区分II)」が、外貨建てECBに統合された。同様に、「ルピー建てECB(区分III)」および「ルピー建て債券」(従前「マサラ債」と呼ばれてきたもの)も、ルピー建てECBに統合された。これらの統合により、ECBの区分は、外貨建てECBおよびルピー建てECBの2区分となった。この結果、全ての外貨建て ECBおよびルピー建てECBについて、それぞれ統一的な要件が適用されることとなった。特に、マサラ債を含むルピー建て債券について、従前要求されていたRBIの評価手続が不要となった点は注目に値する。

(3)   借り手の範囲の拡大

新ECB規制により、旧ECB規制では限定的に列挙されていた、ECBを利用できる借り手の範囲が、インドの外国為替規制の下で外国直接投資を受ける資格のある全ての事業体に拡大された。さらに、従前ルピー建てECBのみを利用することが認められていた登録マイクロファイナンス事業者も、外貨建てECBを利用できるようになった。新ECB規制により、旧ECB規制ではECBを利用することができなかった、貿易およびサービス産業部門の事業体、並びに有限責任事業組合(以下「LLP」という。)に対しても、ECBを利用する途が開かれた。

(4)   貸し手の範囲の拡大

新ECB規制により、ECBを利用できる貸し手の範囲も拡大され、特に、日本を含む金融活動作業部会(FATF)又は証券監督者国際機構(IOSCO)の加盟国の居住者が、ECBスキームを利用して、インドの借り手に対して資金を貸し出すことができるようになった点が重要である。これにより、インドのベンチャー企業等が、プライベートエクイティファンドやベンチャーキャピタルファンド等から、資本参加の有無を問わず、ECBによる資金調達をすることが可能となった。なお、外国株主以外からの、資金調達目的、一般事業目的又はルピー建てローン返済目的のECBは禁止されているため留意する必要がある。特に、ルピー建てローンの返済目的の貸付けが外国株主に限定された点は、新ECB規制により新たに設けられた規制であり、再生可能エネルギープロジェクト等でよく行われるリファイナンスへの悪影響が懸念されている。

(5)   最短平均償還期限の短縮

旧ECB規制では、区分ごとに定められていた最短平均償還期限が、新ECB規制では、外貨建てECBとルピー建てECBの両方について、以下の例外を除いて、原則として3年以上となった。

・製造業を営む企業によるECBについては、1年以上(なお、1会計年度あたり最大5,000万米ドル相当額までECBを利用できる)。

・運転資金目的、一般事業目的又はルピー建てローン返済目的の、外国株主からのECBについては、5年以上。

3.  コメント

上述の通り、新ECB規制により、ECBの規制枠組みおよび手続きが大幅に簡素化され、また、ECBを利用できる借り手および貸し手の範囲が拡大されたことにより、インド企業のECBを活用した資金調達の利用拡大が見込まれる。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

平野正弥/白井紀充/宮村頼光/仲居宏太郎

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