「インド最新法令情報‐(2019年8月号) 企業の社会的責任(CSR)に関する規制強化」

1.はじめに

インドにおいては、2014年の現行会社法施行時より、一定の要件を満たす会社に、企業の社会的責任(CSR)を果たすために、一定の金額を拠出する義務が課されている。この度、2019年7月31日に施行された改正会社法(Companies (Amendment) Act, 2019)(以下「2019年改正法」という)により、CSRに関する上記義務に関する規制が強化された。

本項では、現行のCSRに関する義務を概観したうえで、2019年改正法による規制強化の内容を紹介する。

2.CSR活動に関する義務の概要

以下i乃至iiiの要件を一つでも満たすインド企業は、直近3会計年度の純利益の2%以上をCSRに関する活動に支出しなければならず、かつ、その内容を取締役会報告書および当該会社のホームページを通じて開示しなければならないとされている。拠出金に関しては、税務上、必要経費として認められず、また、2%以上拠出しても翌年への繰り越しは認められないため注意が必要である。

i.   純資産が 50 億ルピー以上の会社

ii.  総売上が 100 億ルピー以上の会社

iii.  純利益が 5000 万ルピー以上の会社

また、会社法上 CSR に関する活動が義務付けられる会社は、非公開会社(Private Company)を含め、3 人の取締役(うち 1 人は独立取締役でなければならない。)で構成される CSR委員会を設置しなければならず、CSR 委員会が CSR に関する活動につき取締役会に提案し、取締役会が提案された活動の承認および履行を行うこととされている。

CSR活動として認められる活動については、会社法別表7に記載されており、教育の促進、雇用促進、貧困救済等が挙げられている。また、2016年に出された通達(FAQ)により、以下のような活動はCSR活動として認められないことされている。

・当該会社の従業員および家族のみを利する活動

・マラソン、テレビのスポンサー等一回限りの活動

・他の法令による義務の履行

・政党への直接間接の資金供与

・通常の業務に従って行われる活動

・インド国外のプロジェクト等

加えて、寄付先のNPO等が日系企業(外資系企業)より寄付を受けるための許可を取得しているかといった観点にも留意する必要がある。

3.2019年改正法

2019年改正法により、実際にCSR活動に使われなかった拠出金の取扱いに関する追加ルールおよびCSRに関する会社法上の義務違反に対する罰則が導入された。

(1)  拠出金に関する追加ルール

i.  CSR活動のために拠出されたものの、当該会計年度のうちに使われなかった額については、当該会計年度が終了してから6か月以内に会社法別表7に記載されているファンド(例えば、Prime Minister Relief Fund)に移し、かつ、使われなかった理由を年次報告書に記載しなければならない。

ii.  継続的なCSRプロジェクトに拠出されたものについては、各会計年度が終了してから30日以内に指定された銀行の特定口座に移さなければならず、かつ、3会計年度内に使い切れない場合には、残額を上記iのファンドに移さなければならない。

(2)  義務違反に対する罰則

会社法上のCSRに関する義務に違反した場合には、以下の罰則が適用される可能性がある。

i.  500ルピー以上250万ルピー以下の罰金

ii.  違反企業の役員(officer)に対する3年以下の禁固又は/および50万ルピー以下の罰金

4.実務への影響

CSR活動への拠出義務に関しては、導入から5年程が経過したが、現時点において、義務違反により罰せられたという企業は確認できていない。しかし、上記の規制強化により、今後は、CSR活動への拠出義務に違反したとして摘発されるケースも出てくる可能性が考えられ、特にレピュテーションリスクの観点から無視できないものであることから、インド子会社のCSRに関する義務履行が適法に行われているか、今一度点検を行うことが望ましい。

以上

TMI総合法律事務所 インドデスク

平野正弥/白井紀充

info.indiapractice@tmi.gr.jp

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