「インドネシア最新法令情報‐(2019年12月号) データローカライゼーション規制、言語法規制、ダイベストメント義務の免除、建設業規制」

I.はじめに

インドネシアでは2019年も実務に影響のある法令改正が多くあり、企業にあってもそのフォローに多くの時間を費やされたことと思われる。年の瀬にあたり、以下のとおり2019年後半に施行されたトピカルな法令についてご紹介する。

II.データローカライゼーション規制

2019年10月10日に電子システム及び電子取引の運用に関する政府令2019年第71号(以下「GR71」という)が施行され、インドネシアで事業を行う日本企業にとって負担となっていたデータローカライゼーション規制が緩和された。

1.GR71施行前

GR71施行前は、「公共サービス」を提供する電子システム運用者は、インドネシア国内にデータセンターを確立する必要があった。何が「公共サービス」に該当するかについては明確に定義されていなかったものの、情報通信省は、インターネット上で一般に提供されるサービス全てが実質的にカバーされると広く解釈していた結果、多くの民間事業者がデータローカライゼーション規制の対象となっていた。インドネシア国内にデータセンターを設置するという当該ローカライゼーション規制は、日本企業を含む多くの企業にとって、インフラ上大きな負担となっており、運用に苦慮する企業が多かったのが実情である。

2.GR71の施行

(i) 公的電子システム運用者

そのような状況下で制定及び施行されたGR71は、電子システム及び電子取引の運用に関する政府令2012年第82号を廃止し、データローカライゼーション規制を緩和した。具体的には、「公共サービス」という広範な概念を用いず、ローカライゼーション規制の適用を公的電子システム運用者のみに限定することで、従来の規制を緩和した。GR71においては、公的電子システム運用者は、以下のとおり定義されている。

(a) 公的機関(すなわち中央及び地域の行政機関、立法機関、司法機関並びに法令に基づくその他の機関)及び

(b) 公的機関に代わって電子システムを運用するよう任命された運用者

さらに特筆すべきは、金融部門の公的規制・監督機関は、データローカリライゼーション規制から免除されている点である。加えて、公的機関又は公的機関に代わって電子システムを運用するよう任命された運用者であっても、データ保管に必要な「特定の技術」がインドネシア国内では利用できない場合には、電子システムやデータを海外で管理、処理及び保管できる。もっとも、「特定の技術」の範囲は、政府の裁量で決定され得る点に留意が必要である。

(ii) 民間電子システム運用者

一方、GR71のもとでは、民間電子システム運用者にはデータローカライゼーション規制が適用されないことから、民間電子システム運用者は、電子システム及びデータの管理、処理、及び保管をインドネシア国内で行うか国外で行うかを選択することが可能である(他の法令等により規制がある場合を除く。)。「民間電子システム運用者」の定義は非常に広範であり、GR71施行によるローカライゼーション規制緩和は、多くの日系企業の負担を軽減する可能性があるものと考えられる。

なお、国内外問わず、民間電子システム運用者は、当局による電子システム及びデータへのアクセスを可能な状態にする必要があるが、具体的な方法は規定されていない[1]。また、金融部門の民間電子システム運用者は、GR71施行後もなお、金融部門固有の規制の対象となる。

III.言語法規制

2019年9月30日にインドネシア語の使用に関する大統領令2019年第63号(以下「PR63」という)が施行され、インドネシア企業との間で契約を締結する日本企業にとって、契約の優先言語につき一定の指針が示された。

1.PR63施行前

国旗、国語、国章、国歌に関する法律2009年第24号(以下「言語法」という) 第31条では、インドネシア法人等との契約書はインドネシア語で作成しなければならないと定められている。言語法では、違反した場合の契約書の効力や罰則の定めはないが、最高裁判所は、外国語のみで作成されたインドネシア法人との契約書は無効と判断した。インドネシアでは判例法主義は採用されておらず、判例の法的拘束力はないものの、外国語のみで作成されたインドネシア法人等との契約書は、裁判所で無効と判断されるリスクがある。

外国法人等とインドネシア法人等との間の契約書は、インドネシア語に加えて外国語でも作成することができる。したがって、実務では、日本・シンガポールから日本法人等がインドネシア法人等と契約する場合は、インドネシア語と英語を併記して作成することが多い。インドネシア語と英語を併記する際に、両言語の内容に齟齬がある場合は英語が優先するとの条項を契約書に含めることが多いが、そのような条項の有効性について確定的な根拠は存在しなかったので、裁判所で無効と判断されるリスクがあった。

2.PR63施行後

PR63第26条では、外国法人等及びインドネシア法人等が、インドネシア語に加えて外国語を使用して契約書を作成して、両言語の解釈に齟齬が生じた場合は、当事者において合意した言語を優先言語とすることができると明示された。したがって、従前と異なり、英語が優先する旨の言語条項を契約書に含める場合に、当該言語条項が無効と判断されるリスクが軽減した。但し、売買証書等の公的な性質を有する文書(dokumen resmi negara)については引き続きインドネシア語が優先することになる点に留意が必要である。 

IV.ダイベストメント義務の免除・放棄

2019年7月29日に投資調整庁長官規則2019年第5号(以下「BKPM2019年規則」という)が施行され、ダイベストメント義務の免除・放棄手続につき一定の指針が示された。

外資企業が株式の一部をインドネシア法人あるいは個人に譲渡する義務(以下「ダイベストメント義務」という)は、2007年の新投資法により撤廃されたが、新投資法施行前に設立された会社につき引き続き対象とされてきた。例えば、投資調整庁長官規則2013年第5号(同規則2013年第12号で改正)、投資調整庁長官規則2015年第14号(同規則2016年第6号で改正)、投資調整庁長官規則2017年第13号(以下「BKPM2017年規則」という)等でダイベストメント義務の存在が明記されている。但し、BKPM2017年規則では、一定の手続を取ることによりダイベストメント義務の免除・放棄が可能であることが明示されたので、ダイベストメント義務を実施する意図のない外資企業にとって、株式をインドネシア法人に譲渡して買い戻す等の迂遠な方法を取ることなく、ダイベストメント義務を消滅することが可能となった。

もっとも、BKPM2017年規則は、投資調整庁長官規則2018年第6号(以下「BKPM2018年規則」という)により廃止され、BKPM2018年規則にはダイベストメント義務の免除・放棄手続が定められていなかったため、ダイベストメント義務の免除・放棄手続につき指針が無くなり、実務では対応方法に混乱が生じた。

そこで、BKPM2019年規則が施行されて、外資が株式を100%保有する企業である場合及び現地資本が一定株式を保有する企業である場合のそれぞれにつき、一定の手続をとることによりダイベストメント義務の免除・放棄が可能であることが改めて明記された。BKPM2019年規則の施行により、ダイベストメント義務の免除・放棄手続に関する不明確性が解消されることが期待される。

V.建設業規制

2019年11月18日に公共事業・国民住宅大臣規則2019年第17号(以下「2019年17号規則」という)が施行され、公共事業・国民住宅大臣規則2019年第9号によって生じた混乱がひとまず落ち着くことが期待される。

建設業に関する法律2017年第2号の施行後、2019年6月13日に外資建設会社の許認可のガイドラインに関する公共事業・国民住宅大臣規則2019年第9号(以下「2019年9号規則」という)が施行され、その解釈に関して現場では困惑が広がり、当職らも多くのご質問を頂いた。

ところが、2019年11月18日には、2019年17号規則が施行され、2019年9号規則は廃止された。2019年17号規則は、わずか3つの条文により構成される簡易な内容の規則であり、主に、2019年9号規則の廃止及び公共事業・国民住宅大臣の定めるガイドラインに従うことが規定されている。この点に関連して、公共事業・国民住宅大臣は、2019年11月19日にCirculating Letter 22/SE/M/2019を発行して、当面の手続を定めている。今後も公共事業・国民住宅省の規則及び運用に注視が必要である。

[1] なお、GR71第99条には、戦略的電子データを保有する運用者は、データセキュリティのために特定のデータセンターに接続される必要があると規定されているが、対象者等の詳細が定められていないため、施行規則での説明が期待される。

以上

TMI総合法律事務所 インドネシアデスク

齋藤英輔

esaito@tmi.gr.jp

 

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