「シンガポール最新法令情報‐(2020年3月号) 新型コロナウイルスへの対応」

1.シンガポール政府からの主な発表及び対応

世界保健機関(WHO)によりパンデミック(世界的流行)に該当する旨が2020年3月11日に発表された新型コロナウイルスは、シンガポールにおいても、同年3月15日現在、累計226人への感染が確認されている。シンガポール政府は、シンガポール国内での感染が確認された早期の段階から、順次以下を中心とした発表・対応を行っている。

(1) 感染の危険レベル(Disease Outbreak Response System Condition)のオレンジ色(4段階の上から2段階目)への引上げ(2月7日)

(2) 不要不急の大規模イベントを中止又は延期するよう要請。企業に対して、適切な感染防止措置をとった上で通常の業務を継続するよう通知(2月8日、15日、3月13日等)

(3) 社内で感染者が確認された場合の企業向け対応ガイドライン公表(2月21日、27日、28日等)

(4) (a)各地域への不要不急等の渡航延期及び(b)14日以内の各地域への渡航歴がある新規/短期訪問者についての制限:

 ①中国(湖北省):(a)渡航延期(1月22日)→(b)入国不許可(1月29日)

 ②中国本土:(a)不要不急の渡航延期(1月27日)→(b)入国不許可(2月1日)

 ③韓国(大邱市・清道郡):(a)不要不急の渡航延期(2月23日)→(b)入国不許可(2月26日)

 ④韓国:(a)不要不急の渡航延期(2月23日)→(b)入国不許可(3月4日)

 ⑤イラン:(a)不要不急の渡航延期(3月3日)→(b)入国不許可(3月4日)

 ⑥イタリア北部:(a)不要不急の渡航延期(3月3日)→(b)入国不許可(3月4日)

 ⑦日本:(a)不要不急の渡航延期(3月3日)→(b) Stay-Home Notice(シンガポール入国日から14日間の外出禁止を意味し、以下「SHN措置」という)(3月15日)

 ⑧イタリア全土、フランス、スペイン、ドイツ:(a)不要不急の渡航延期及び(b)入国不許可(3月13日)

 ⑨ASEAN諸国、スイス、英国:(b) SHN措置(3月15日)

(5) 次の帰国者(シンガポール市民、永住者、長期滞在ビザ(各種労働ビザ、学生ビザ、家族帯同ビザ等)保有者)に対して、SHN措置:

 ①過去14日以内に、イラン、イタリア北部又は韓国への渡航歴がある場合(3月3日)

 ②過去14日以内に、イタリア全土、フランス、スペイン又はドイツへの渡航歴がある場合(3月13日)

 ③過去14日以内に、日本、ASEAN諸国、スイス又は英国への渡航歴がある場合(3月15日)

(6) シンガポール国民に対し、不要不急の全ての海外渡航を当面30日間延期するよう要請(3月15日)

上記(4)(5)のように、日本に対しては、日本への不要不急の渡航延期及び日本からシンガポールへ入国後のSHN措置が対象となっている(3月15日時点)。3月15日時点で、日本からシンガポールへの入国自体が不許可とされていないものの、SHN措置とは、一切の外出を24時間禁じるものであり、違反すると罰金や国外退去、ビザ剥奪の対象となり得る厳しい措置であることから、日本からシンガポールへの出張は事実上困難な状況である。

なお、最新の情報についてはシンガポール保健省(MOH)のホームページhttps://www.moh.gov.sg/covid-19 を参照されたい。

2.不可抗力

感染の拡がりや企業に対する各種制限を背景に、各種契約の履行遅延等の問題への対処が迫られ、典型的には、新型コロナウイルスがいわゆる「不可抗力」として、履行遅延等にかかる責任の免除が可能かが問題となる。「不可抗力」とは、契約当事者のコントロールの及ばない事由によって契約上の義務履行ができない場合に、免責が認められる事由を指す。

具体的にどのような事由が「不可抗力」に該当するかは、契約書の準拠法にもよるが、契約書に不可抗力条項がある場合には、その記載にもとづいて判断される。例えば、契約書に「公衆衛生上の国際的緊急事態」、「伝染病の発生」等が不可抗力事由として列挙されている場合には、新型コロナウイルスも当該列挙事由に該当する旨を主張できる可能性が高い。他方、契約書にそのような記載がない場合には契約書の不可抗力条項を根拠にすることは基本的に難しいが、その場合であっても、「doctrine of frustration」と呼ばれるコモン・ロー上の理論によって救済される余地がある。いずれにせよ、不可抗力を主張するためには、履行を可能とする代替手段が存在しないことや、不可抗力条項を発動しないようにするためにとり得るあらゆる手順を踏んだこと等が重要なので、例えば、履行のために日本とシンガポール間の出張に代わって現地の人材の活用又は国際郵便等による対応を検討するなど、履行のための努力を尽くし、そのような手段を講じたことの証拠を残しておくことが肝要である。

3.その他(フェイクニュース対策法の発動の例)

シンガポールの特徴的な法律のひとつにフェイクニュース対策法がある。新型コロナウイルスの蔓延に関連したメディアの報道(例えば、シンガポール国内での死亡事例の報道等)に対し、シンガポール政府は、当該報道は「フェイクニュース」に当たるとして、同メディアに対して訂正命令を発動し、メディアはこの命令に応じたとのことである。

以上

TMI総合法律事務所 シンガポールオフィス

永津隆子

——————————————————————————–

本稿は一般的な法令情報を提供するものであり、シンガポール法に関するアドバイスや法的意見を提供するものではありません。

ページの先頭へ