「シンガポール最新法令情報‐(2020年4月号) 新型コロナウイルスへの対応(2)」

1.概 説

先月号に引き続き、2020年4月21日時点のシンガポールにおける新型コロナウイルス関連の状況をお伝えする。シンガポールでは、4月21日現在、感染者(累計)9,125名、死亡者11名とされている。シンガポール政府により、初期の段階から海外からの渡航制限がとられてきた効果もあり、海外からの入国者の感染数はゼロ件の日が続いている。他方、外国人労働者が住む複数の寮におけるクラスターが発生し、近時は1日当たりの新規感染者が1,000名を超える日が続いていることから、感染者数はなお急増し続けている。

シンガポールでは、4月7日以降サーキット・ブレーカーと呼ばれる感染拡大防止措置がとられており、原則的な外出禁止、職場の閉鎖等が実施されている。当該措置は、当初は5月4日が期限とされていたが、4月21日の発表により、6月1日まで延期されることとなった。

以下では、渡航制限、感染拡大防止措置の主な内容、4月7日にシンガポール議会において成立したCovid-19 (Temporary Measures) Act 2020(「COVID-19暫定措置法」という)の概要、年次株式総会の開催期限猶予措置等について説明する。

2.渡航制限について(4月21日時点)

(1) 出張者、旅行者等の短期訪問者

全ての国からの入国及び乗継ぎが許可されない。

(2) シンガポール国民、永住者、長期滞在ビザ(就労ビザ等)の保有者

(a) 長期滞在ビザの保有者は、シンガポールへの渡航前に、政府からの事前の許可を取得する必要がある。就労ビザ保有者及びその家族の入国については、雇用者の責任において、事前に人材開発省(MOM)の許可を取得する必要がある。MOMからの当該許可は、医療・輸送などの必要不可欠なサービス提供に従事する者のみに与えられていることから、現時点でシンガポール国外にいる就労ビザ保有者の多くは、シンガポールに再入国することが事実上困難な状況にある。違反に関しては、ビザ取消や罰金の対象となるのみならず、雇用者の責任でなされるべき事項の違反があった場合には、当該雇用者が一定期間外国人を雇用することが禁止される等厳しい罰則が科されている。

(b) 渡航先にかかわらず、シンガポールに帰国する全ての者は、政府の指定する施設で14日間の外出禁止措置(Stay Home Notice)の対象となる。

(c) 上記に加え、シンガポールに帰国する全ての者は、健康状態申告書の提出が義務付けられている。

3.感染拡大防止措置について(4月21日時点)

(1) 4月7日以降、銀行、病院又はスーパーマーケット等の生活に必要不可欠な業種を除く全職場が閉鎖され、在宅勤務が義務付けられた。飲食店は、持ち帰り又は配達の営業のみが許可される。例外的に職場での営業を継続する事業者については、感染拡大防止に関する計画書を添えた事業継続申請書を所轄官庁へ提出し、許可を得る必要がある。4月21日23時59分からは強化策が施行され、飲食店等のうち営業継続が許可される対象が更に限定された。加えて、例外的に職場での営業継続を許可された場合であっても、従業員の出入りを記録するシステムの導入等が義務付けられ、初回の違反に対しては1,000ドルの罰金、2回目以降の違反に対してはより高額の罰金等が科される。MOMは、取締官による各職場のパトロールを実施しており、許可なく営業を継続して罰金を科された例が公表されているほか、在宅勤務に関する勧告等に従わなかった企業に対しては業務停止命令等が発せられる。

(2) 4月7日以降、必需品の購入等の必要不可欠な場合以外の外出は禁止されている。同居の家族以外との接触も禁止されている。また、4月14日以降、外出する際はマスクを着用することが義務付けられた(負荷の高い運動をしている間等を除く)。当該義務に違反した場合は、最初の違反に対しては300ドル、2回目以降の違反に対してはより高額の罰金や起訴の対象となり、外国人の場合にはビザ取消等の対象となる。実際に4月7日以降14日までに、当該義務に違反した個人に対して6,200件以上の警告と500件以上の罰金が科せられたことが公表された。また、違反した外国人が就労ビザを取り消され、今後シンガポールでの就労を永久に禁止する旨の処分を下されたケースも公表されている。

(3) シンガポール食品庁(SFA)等は、飲食店における感染防止の強化措置として、4月13日以降、食品施設のスタッフに対し、マスク等を着用する義務及び食品の配達業者がマスクを着用していることを確認する義務を課した。これらの食品施設に対する義務違反についても、実際に罰金が科された例が公表されたほか、ライセンス停止等の対象にもなるとされている。

(4) 感染拡大防止措置遵守への監督は日々厳しくなっており、30以上の機関から約3,000人の取締官やドローンが配備され、パトロールがなされている。これらパトロールにより、マスクの不着用や同居家族以外との接触等の違反者への処分がなされている。さらに、4月17日以降は、政府の開発したスマートフォンアプリを使用し、一般市民が違反者を通報することも可能となった。

最新の情報についてはシンガポール保健省(MOH)のホームページ https://www.moh.gov.sg/covid-19 等を参照されたい。

4.COVID-19暫定措置法について

COVID-19暫定措置法の対象となる契約は、2020年2月1日以降に履行期限が到来する①商業用不動産の賃貸借契約、②建設契約、③イベント又はツアー関連契約、④割賦購入契約、⑤中小企業向けローン関連契約である。

COVID-19暫定措置法では、上記①乃至⑤の契約上の義務について、債務者による債務履行が不能であり、その重要な理由がCOVID-19である場合、債務者が債権者に対して通知を行ったときは、債権者が当該債務者に対して履行を強制する行為(担保実行、訴訟・仲裁の提起、倒産申立て等)を行うことが禁止される。当該禁止事項に違反した債権者には、刑事罰が科される。

例えば、飲食店の経営者が店舗の賃料を支払えない状況に陥った場合、支払えないことの重要な理由がCOVID-19であるときは、店舗の家主に通知を行うことで、賃料の支払の猶予を受けることができる。

なお、②建設契約、③イベント又はツアー関連契約については上記の禁止措置以外にもCOVID-19を原因とした遅延又はキャンセルについての特別措置が定められている。

COVID-19暫定措置法は、2020年3月25日以降に締結された契約に対しては適用されない。また、同法の期限は6か月であり、その後1年間効力が延長され得る。

5.年次株式総会の開催期限猶予について

会計企業規制庁(ACRA)は、4月14日、COVID-19による株主総会関連の支障を緩和するため、以下の猶予を認めた。

(1) 2020年4月16日から7月31日までに年次株主総会を開催すべき会社に対し、60日間の期限猶予

(2) 同年5月1日から8月31日までに年次報告書をACRAに提出すべき会社に対し、60日間の期限猶予

詳しくは、ACRAのホームページ https://www.acra.gov.sg/announcements/acra’s-support-measures-and-guidance-for-businesses-during-covid-19 を参照されたい。

6.その他

シンガポール政府はWhatsAppの専用アカウントを設け、1日数回、COVID-19に関する最新情報(当日の新規感染者数、感染拡大防止措置の周知、違反摘発事例の概要等)を配信している(https://go.gov.sg/whatsapp)。

以上

TMI総合法律事務所 シンガポールオフィス

永津隆子

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本稿は一般的な法令情報を提供するものであり、シンガポール法に関するアドバイスや法的意見を提供するものではありません。

【ご案内】 新型コロナウイルス感染症に関する各国の規制状況等については、こちらからご参照ください。なお、新型コロナウイルス感染症への対応を分野ごとにまとめたシリーズ【コロナウイルス対応Q&A】については、こちらからご参照ください。

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