フランス

法務Q&A

現地法人を設立するにあたり、注意すべき点はありますか。
フランスで現地法人を設立するにあたり、特記すべき問題点はありません。資本金1ユーロで会社を設立することが可能で、株主一名だけの「一人会社」の設立も可能です。また、本店所在地については、物理的なオフィスを構えず、ドミシリエーション(貸し住所提供サービス)を利用することも可能です。
規制対象となる事業分野を除き(こちらについては、「法務基本情報」を参照ください)、フランスにおいて子会社を設立する際に、届出・許可は原則として必要ありません。日本企業の子会社設立登記に際して、支障があったというケースはほとんど耳にしません。
現地の事業を清算・撤退する場合に気を付ける点はありますか。
フランスから事業を撤退し、子会社の解散を行う場合、経済的理由による解雇から労働者を保護するために、かなり複雑な手続を踏むことになります。事業の閉鎖を決断する上で注意すべき事項は多々あり、特に、サンディカ(労働組合)および労働者代表機関が存在する場合は当該代表機関と事前に協議することが重要です。閉鎖する子会社がグループに属する会社である場合、労働法典第L1233-3条の規定に従って、当該子会社の閉鎖を決定するに至った理由、すなわち、経営が困難であるという事実は、グループを構成するすべての企業の経営状況を考慮するのではなく、同一グループ関連企業の中でフランス国内に所在する企業のみに的を絞り、これらの経営状況を考慮して判断することになります。
日本の親会社から現地法人に出向する場合には、どのような手続きが必要でしょうか。
日本から、フランス国内の子会社、支店又は駐在事務所に従業員を出向させる場合(グループ内転勤)、出向期間により手続は異なります。
出向期間が3か月を超えない場合、ビザの取得は不要ですが、労働許可の申請は必須です(ただし、労働法典第D5221-2-1条に従って、スポーツ・文化・芸術・科学関連イベントへの参加、シンポジウム・セミナー・見本市への参加、コンピューター・管理・金融・保険・建築・エンジニアリング分野の監査および査定業務の遂行等については、労働許可の取得が免除されます。)。
出向期間が3か月を超える場合、長期滞在ビザを東京にあるフランス大使館領事部にて申請することになります。
いずれにしても、出向にあったては、オンライン(https://www.sipsi.travail.gouv.fr/)で事前の届出を行うことが義務付けられています。また、フランス現地における代理人を選任し、フランス労働当局から調査が入った場合、当該代理人が当局との対応を担うことになります。
現地での従業員の雇用・解雇にあたって気を付ける点はありますか。
雇用契約は、フランス語で作成する必要があります。現地法人の業種に適用される労働協約がある場合は、当該労働協約の規定を遵守した雇用契約を作成する必要があり、注意すべき点は多々あります。
一方、現地法人は、従業員の就業に先立って、雇用事前申告(DPAE)を行い(給与台帳を管理する公認会計事務所が代行するのが一般的です)、従業員が就業した日から3か月以内に、健康に関する情報および予防を目的として、従業員に医師の診断を受けさせ、健康管理をおこなうことが義務付けられています。
解雇にあたっては、解雇事由や法定の手続を予め確認することが重要です。
「労働時間包括協定(convention de forfait)」とはなんですか。
フランス労働法上、原則として法定の労働時間は週35時間です。しかし、一定の条件のもと、幹部従業員などについて労働時間数(週、月、年単位)又は年間労働日数をベースとした包括的な労働時間制を適用することが可能です。
年間労働日数制の場合、年間の就労日数は最高218日が上限とされます(業種に適用される労働協約でより低い上限が定められている場合があります)。年間労働日数制が適用される従業員は、一日又は週間の法定の労働時間の上限が適用されません。ただし、日休(2就労日の間に少なくとも11時間の休息が必要)や週休(少なくとも連続する35時間の休息が必要)、有給休暇、祝休日に関する法定のルールを遵守する必要があります。これらのルールの遵守を保証するため、雇用主は、法定又は労働協約上の手続を遵守する必要があります。例えば、以下の事項をチェックするため、定期的に(少なくとも年1回)に従業員と面談を設けることなどが含まれます。
  • 従業員の業務量が合理的であり、労働時間の良好な配分が可能であるかどうか。
  • 従業員の仕事と私生活のバランスが良好であるかどうか。
フランス企業では、営業部門の管理職などについて年間労働日数制が好まれる傾向があります。1日の労働時間を制限するよりも、年間で労働日数を決めて本人に時間管理をしてもらう方が企業と従業員の双方にメリットがあると考えられます。
就業規則(règlement intérieur)を策定する義務はありますか?
就業規則は、従業員数が20名以上の企業に義務付けられます。
就業規則の内容は一定の事項に厳密に限られています。
  • 健康及び安全に関する規制の適用上の措置
  • 従業員が雇用主の求めに応じて従業員の健康及び安全を守るための労働条件の改善に参加する条件
  • 懲戒に関する一般的かつ恒常的な規定(特に制裁の種類と段階)
  • 雇用主が懲罰を与えようとする場合の従業員への手続的保証に関する規定
  • 従業員の防禦権、精神的嫌がらせ、性的嫌がらせ及び性的暴力に関する規定
  • 企業内の中立性原則を確認し、従業員の宗教的な信条などの表明を制限する規定
就業規則に明示的に定めがない場合、特に執行方法に関する定めがない場合には、従業員に懲罰を科すことはできません。
就業規則の規定により従業員の差別や不平等を招いてはなりません。

上記以外の事項について就業規則に規定することはできませんので、個別の労働契約や所属部門に適用される通達などに規定することになります。
契約の準拠法を選択できますか。また、契約書の言語について規制がありますか。
契約の準拠法を自由に選択することが可能で、フランス法または日本法、もしくは第三国法を選択することができます。契約当事者が任意に選択した法律が適用されますが、フランス法の強行規定がある場合は強行規定が適用されます(例えば、競争法または消費者保護法などが代表的なものです。)。当事者が適用法を選択しなかった場合、2008年6月17日の欧州議会および欧州連合理事会規則「契約債務の準拠法に関する規則(ローマI規則:CE 593/2008)」の規定に従って適用法を決定することになります。
契約書は、フランス語以外の言語で作成することが原則的に認められていますが、1994年8月4日に制定された「トゥーボン法」により、公法上の法人が当事者である場合、および、私人であっても公共サービスを遂行する私人が当事者である場合については、フランス語で契約書を作成することが必要となります。
契約書に仲裁条項を入れたり、国際裁判管轄を定めたりすることはできますか。またその際の注意点はありますか。
2012年12月12日の欧州議会および欧州連合理事会規則「民事及び商事事件の裁判管轄、判決の承認及び執行に関する規則(ブリュッセルIビス規則)」は、合意管轄条項の有効性を認めており、これにより、当事者は、各々の所在地に拘束されることなく、自由に管轄裁判所を選択することができます。
また、フランス法の下、紛争解決手段として、仲裁による紛争解決を選択することが可能です。フランスの法律、一審裁判所および上級裁判所の判例事例をみると、仲裁による紛争解決を好意的にとらえていることがうかがえます。
フランスは、外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約に加盟しており、確定した仲裁判断を承認及び施行することが明らかに国際秩序に反する場合を除き、当該判断をフランス国内にて執行させることは可能です(民事訴訟法典第1514条)。
代理店契約の終了の場合に違約金が発生しますか。
フランス法上、代理店に関する制度は、商法典第L134-1条乃至L.134-17条およびR.134-1条以下に規定が置かれています。

代理店には、法律により特別の保護が与えられており、契約終了の際に被った損害に対する補償金を受け取る権利があります。ただし、代理店が、契約終了から1年以内に当該権利を行使しない場合には補償金を受けとる権利を失います。

また、以下の場合には補償金の支払い義務は生じません。

1° 代理店の重大な過失が原因で契約の終了にいたった場合。

2° 契約の終了が代理店の主導によるものである場合。ただし、かかる終了が委任者の事情による場合、代理店の年令、身体の不自由又は病気を原因であり、これらの原因で活動の継続が合理的に要求できない場合にはこの限りではありません。

3° 委任者との合意により代理店が代理店契約にもとづく権利及び義務を第三者に譲渡する場合。

補償金の金額については、代理人が過去2年間に受け取ったグロスの手数料の金額とする判例が一般的です。
現地法人から日本の本社へ配当などを送金することについて、規制がありますか。
フランス国内の子会社から日本の親会社に支払われる配当金収入に対して、税率30パーセントの源泉徴収が課せられます(租税一般法典第119ビス条および第187条)。但し、租税に関する二重課税の回避を目的とする2007年1月11日付の日仏租税条約改正議定書の適用により、かかる源泉徴収の税率は引下げされ、場合によっては免除される場合もあります(この点について、当該租税条約第10条を参照ください。)。具体的には、日本の親会社は、日本における納税者である旨を明確にし、当該条約の適用を求める申請書を管轄税務署に提出することになります。
自己資本比率の引上げ義務とは何ですか。
事業年度の終了時に、資本金に対して自己資本が不足する状態に陥ることがあります。自己資本が資本金の半分を下回った場合、かかる自己資本の不足を示す年次決算書類の承認後4ヶ月以内に、株主は特別総会を開催する必要があります。かかる株主総会で、株主は会社を解散させるか、又は、会社を継続し、増資又は減資若しくは賃借対照表に計上された資産の再評価を任意に行い、自己資本比率の引上げを回復するかを決定しなければなりません。
現地法人を運営するにあたって、コンプライアンス上気を付ける点はありますか。
フランス企業にとってコンプライアンスは、近年益々重要な課題になっており、事業分野ごとに遵守しなければならない義務は異なります。例えば、医薬品分野などにおいては、数多くの規制が存在します。一般的に、汚職防止および個人情報の収集・処理がひときわ重要になっています。
フランス法人が内部通報制度を設置しなければならない場合とはどのような場合でしょうか。
透明性、腐敗の防止並びに経済生活の近代化に関する2016年12月9日の法律(通称「サパン2法」)の施行にともない、従業員数が50名を超えるフランス法人は、(i)重罪、(ii)軽罪、(iii)フランスが批准又は承認した国際ルール、かかるルールにもとづく国際機関の一方的行為、又は法令の重大かつ明白な違反、(iv)一般の利益に対する重大な脅威又は損害について、通報制度を整えることが義務付けられました。日本企業のフランスの子会社についても、50名以上の従業員を有する場合には対象となります。日本の親会社が上場又は非上場であるかは問われません。

汚職防止についても同様の制度が存在しますが、これは主にフランスの大企業が対象となります。
個人データをフランスから日本に移転する場合にどのような措置が必要ですか。
フランスの国内法である情報処理と自由に関する法律第68条およびEU一般データ保護規則(GDPR)に従い、EU/EEA域内から域外の第三国への個人データの移転は、当該第三国が私生活及び基本的人権の十分なレベルの保護を保証していると認められる場合にのみ可能です。
欧州委員会は、日本の十分性認定を行なう方針を示していますが(http://europa.eu/rapid/press-release_IP-18-5433_en.htm)、決定が正式に採決されるまでにはまだ数ヶ月を要するものと考えられます。
十分性認定が行なわれるまでの間、フランスから日本への個人データの移転は以下の方法で保証する必要があります。
  • 欧州委員会の標準契約条項(SCC)、特別な契約条項(欧州委員会の標準契約条項に合致するとみなされる条項)、又はGDPRにもとづき、監督機関が採択し欧州委員会が承認した標準契約条項
  • 拘束的企業準則(BCR)、又はGDPRにもとづき、承認された行動規則(EU域外のデータ受領者による適切な保証を適用する旨の拘束力のある誓約を含む)
  • 承認された認証制度(EU域外のデータ受領者による適切な保証を適用する旨の拘束力のある誓約を含む)
  • 行政上の調整 又は公権力間の協力を可能にするために定められた法的拘束力及び執行力のある規定(MOU又はMMOU、国際協定など)
  • GDPR49条に定める特定の状況における例外
2018年5月25日のGDPRの施行開始にともない、CNIL(フランスの個人データ保護の監督機関)に対して事前に個人データ移転の承認を申請する必要がなくなりましたが、上記の方法により担保する必要があります。

また、より一般的に、日本企業であってもEU/EEA域内に所在する個人データを取り扱う場合には原則としてGDPRを遵守する必要があるため注意が必要です。
現地法人の取締役について、国籍・居住地・人数等の要件は定められていますか。
現地法人の役員資格は、法人形態により異なります。例えば、有限責任会社(SARL)の場合、少なくとも一名の業務執行者が必要で、必ず自然人でなければならず、居住地はフランス国内外を問いません。
また、単純型株式会社(SAS)であれば、代表者である社長は自然人であっても法人であっても構わず、居住地はフランス国内外を問いません。その他の経営執行機関(業務執行役、業務執行役補佐)または委員会(経営委員会、監視委員会など)については、定款により、任意に、設置することができます。
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