【コロナウイルス対応Q&A】契約分野(売買)Q&A

国内外において新型コロナウイルスの感染拡大が続いている現状を踏まえ、TMI総合法律事務所は、クライアントの皆様が新型コロナウイルスへ対応する際にご留意いただきたい事項を、分野ごとにQ&Aの形式にまとめて掲載しておりますので、ぜひご活用いただければ幸いです。

人事労務分野Q&A 2020年3月24日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200324-01.html

株主総会分野Q&A 2020年4月1日掲載・4月28日更新

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200428-01.html

独占禁止法分野Q&A 2020年4月7日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200407-01.html

東証対応関連分野Q&A 2020年4月7日掲載・4月16日更新

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200416-01.html

■ 契約分野(請負)Q&A 2020年5月8日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200508-04.html

■ 事業再生・倒産関連分野Q&A 2020年4月14日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/202000414-02.html

■ 個人情報保護・プライバシー分野Q&A 2020年4月21日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200421-01.html

■ エンタテインメント・スポーツ分野Q&A 2020年5月1日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200501-06.html

□ 新型コロナウイルス感染症に関する各国の規制状況等については、こちらからご参照ください。

 

契約分野(売買)Q&A

2020年4月1日に改正民法(民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)をいいます。以下同じです。)が施行されましたが、その施行日前に締結された契約については、原則として改正民法による改正前の民法(以下「旧法」といい、改正民法による改正の実質的な影響を受けない部分については、単に「民法」といいます。)が適用されるため、以下のQ&Aにおいては旧法の適用を前提とし、必要に応じて改正民法による改正後の民法(以下「新法」といいます。)の適用がある場合についても言及しております。

1 売主側の留意点について

Q1:新型コロナウイルス感染症の影響により、納期までに取引先(買主)に対して売買の目的物を引き渡せない見込みである。こうした理由で納期を守れない場合に、当社(売主)は、法的な責任を負うか。

A1:売主は、買主に対して納期までに売買の目的物を引き渡すことができない場合には、それによって買主に生じた損害を賠償する責任(債務不履行による損害賠償責任)を負う可能性があります(民法415条)。また、その場合において、買主から、相当の期間を定めてその引渡しの催告がされ、その期間内に引き渡すことができないときは、その売買に係る契約を解除されてしまう可能性もあります(民法541条)。

しかし、目的物を引き渡すことができなくなった原因が新型コロナウイルス感染症の影響である場合には(注1、個別事案によっては、契約書に定める“不可抗力”に該当することや債務者の帰責事由が認められないことを理由に損害賠償の責任を免れ、又は買主による解除が認められない可能性があります。

なお、改正民法の施行日以降に締結された契約については、契約の解除の要件として必要とされてきた債務者の帰責事由は不要とされています(新法541条から543条まで)。そのため、不可抗力などの理由によって目的物を引き渡すことができない場合であっても、契約を解除されてしまうおそれがありますので、留意が必要です。

Q2:新型コロナウイルス感染症の影響が“不可抗力”に該当するか否かを判断するために、まず何をすればよいのか。

A2:不可抗力という用語が民法や商法などの法令で使われている例はありますが、法令上、その具体的な定義は存在しません(注2。そのため、まずは契約書に不可抗力条項やその定義等が存在するかどうかを確認する必要があります。また、不可抗力条項が存在する場合であっても、その内容は契約書によって様々ですので、個別事案に応じた具体的な検討が必要になります。

Q3:契約書上の不可抗力条項を検討するにあたって、どのような点に留意すべきか。

A3: 契約書には、例えば「天災、戦争……によって生じた不履行については、債務者はその責任を負わない。」といったように、不可抗力事由が例示列挙されているものがあります。こうした場合には、これらの列挙事由として、「感染症」や「疫病」などの新型コロナウイルス感染症が該当し得る不可抗力事由が明記されているかを確認することになります。

他方で、こうした事由が明記されていない場合であっても、不可抗力事由として「その他の不可抗力の事由が生じた場合には」などといったキャッチオール条項が規定されていないかを確認することになります。そして、まずはこうした不可抗力事由の該当性について、個別事案に応じた具体的な検討が必要になります。

もっとも、不可抗力事由に該当する場合であっても、その効果の定め方は契約書によって異なりますし、債務者の免責という効果が定められていたとしても当然に不可抗力による免責が認められるとは限らず、個別事案に応じた具体的な検討が必要となる点に留意が必要です。

Q4:契約書に不可抗力条項がない場合には、当社(売主)は法的な責任を免れないのか。

A4:契約書に不可抗力条項がない場合であっても、A1のとおり、債務者の帰責事由が認められないことを理由に損害賠償の責任を免れ、又は買主による解除が認められない可能性があります。債務者の帰責事由が認められるかどうかについては、個別事案に応じた具体的な検討が必要になります。

なお、改正民法の施行日以降に締結された契約に関する留意点については、A1をご参照ください。

2 買主側の留意点について

Q5:新型コロナウイルス感染症の影響により、納期までに仕入先(売主)から目的物の引渡しがなかった場合には、当社(買主)は、どのように対応すべきか。

A5:買主は、納期までに仕入先(売主)から目的物の引渡しがされない場合には、売主に対し、それによって買主に生じた損害を賠償するよう請求することが考えられます(民法415条)。また、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引き渡されないときは、その売買に係る契約を解除することも考えられます(民法541条)。

もっとも、売主が目的物を引き渡すことができなくなった原因が新型コロナウイルス感染症の影響である場合には(注3、契約書に定める“不可抗力”に該当することや債務者の帰責事由が認められないことを理由に、買主による損害賠償請求や解除が認められない可能性があります。

なお、改正民法の施行日以降に締結された契約に関する留意点については、A1をご参照ください。

Q6:新型コロナウイルス感染症の影響により、当社(買主)の受入体制が整わず、仕入先(売主)から目的物が提供されたにもかかわらずそれを受領できない場合には、当社(買主)は、法的な責任を負うか。

A6:買主は、原則として目的物を受領する義務を負わないと考えられています。そのため、買主が目的物を受領できないことのみを理由として、直ちに売主が買主に対して損害賠償請求や解除をすることができることにはならないと考えられます。

もっとも、旧法413条に基づいて一定の効果(注4が生じると考えられていること、個別具体的な事情を斟酌して、信義則(民法1条2項)に基づく買主の引取義務が認められる可能性があることに留意が必要となります。

なお、下請代金支払遅延等防止法が適用される取引については、同法が禁止する受領拒否(同法4条1項1号)に該当しないようにする必要がある点に留意が必要です(注5

 

注1 例えば、新型コロナウイルス感染症の感染者が生じたことにより自社の工場を一時的に閉鎖せざるを得ない場合や、新型インフルエンザ等対策特別措置法45条1項に基づく特定都道府県知事による外出自粛要請等がされたことにより必要な従業員を確保できない場合などが考えられます。

注2 一方で、法令以外においては、例えば、「外部からくる事実であって、取引上要求できる注意や予防方法を講じても防止できないもの」等と定義する見解もあります(我妻榮=有泉亨=清水誠=田山輝明著『我妻・有泉コンメンタール民法第6版 総則・物権・債権』(日本評論社、2019年)792頁)。

注3 具体的な例については注1をご参照ください。

注4 買主が受領遅滞又は受領不能に陥った場合には、①(特定物に関する)売主の目的物保存義務の軽減、②受領遅滞又は受領不能によって増加した履行費用の買主負担、③受領遅滞又は受領不能後に当事者双方の帰責事由なく債務の履行が不能になった場合における買主の帰責性の擬制といった効果があります。なお、新法ではこれらの効果が明文化されています(新法413条、413条の2第2項)。

注5 下請法が適用される取引における留意点は、2020年3月10日付けの経済産業省の要請や公正取引委員会が取りまとめた「東日本大震災に関連するQ&A」が参考になります。同Q&Aは、2020年2月14日付けの経済産業省の要請文書においても引用されています。

 

【参考】

経済産業省「新型コロナウイルス感染症により影響を受けている下請事業者との取引について、一層の配慮を親事業者に要請します」(2020年3月10日)

https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200310003/20200310003.html

経済産業省「新型コロナウイルス感染症により影響を受ける下請等中小企業との取引に関する配慮について」(2020年2月14日)

https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200214011/20200214011-1.pdf

公正取引委員会 「東日本大震災に関連するQ&A」

https://www.jftc.go.jp/soudan/shinsaikanren/23jishinqa.html

以上

TMI総合法律事務所

弁護士 滝  琢磨

弁護士 菅野 邑斗

弁護士 榊 慶太朗

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