【コロナウイルス対応Q&A】東証対応関連分野Q&A〔4月16日改訂版〕

国内外において新型コロナウイルスの感染拡大が続いている現状を踏まえ、TMI総合法律事務所は、クライアントの皆様が新型コロナウイルスへ対応する際にご留意いただきたい事項を、各分野ごとにQ&Aの形式にまとめて掲載しておりますので、ぜひご活用いただければ幸いです。

人事労務分野Q&A 2020年3月24日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200324-01.html

株主総会分野Q&A 2020年4月1日掲載・4月28日更新

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200428-01.html

独占禁止法分野Q&A 2020年4月7日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200407-01.html

契約分野(売買)Q&A 2020年4月7日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200407-03.html

■ 契約分野(請負)Q&A 2020年5月8日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200508-04.html

■ 事業再生・倒産関連分野Q&A 2020年4月14日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/202000414-02.html

■ 個人情報保護・プライバシー分野Q&A 2020年4月21日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200421-01.html

■ エンタテインメント・スポーツ分野Q&A 2020年5月1日掲載

http://www.tmi.gr.jp/information/column/2020/20200501-06.html

□ 新型コロナウイルス感染症に関する各国の規制状況等については、こちらからご参照ください。

 

東証対応関連分野Q&A

 ◎4月16日改訂版のポイント 改正特措法に基づく緊急事態宣言の4月7日付発出、金融庁による有価証券報告書等の提出期限延長に係る4月14日付公表、これを受けて東証が同日発表した決算発表日程の再検討に係る要請等を踏まえ、4月15日までに判明した情報に基づき、①決算開示・有価証券報告書等提出の遅延(本稿1(1)A1)、②新市場区分への移行日程(2(3)A4)、③金融庁設置の連絡協議会の動向(2(4)A5)に関する記述等についてアップデートしました。

 はじめに

現状、上場会社における新型コロナウイルスの影響による業績予想の下方修正事例や、国内外の出社制限による経理業務への支障、会計監査業務への支障による決算発表の延期を公表する事例が相次いでいます。

このような状況下、株式会社東京証券取引所(札幌、名古屋及び福岡の各証券取引所も同様の発表を行っていますが、以下では単に「東証」又は「取引所」といいます。)は、適時開示実務上の取扱い、新型コロナウイルスの影響に配慮した有価証券上場規程の一部改正案等を公表しています。

以下では、現時点(2020年4月15日)までに公表されている情報を中心に、東証を中心とした取引所関連の対応に関する事項をQ&A形式でご紹介します。Q&Aをご一読いただくとともに、必要に応じてリンク先もご参照いただき、今後の東証関連業務に役立てていただければと思います。なお、今後も、情報の追加や更新が予想されるため、適宜ご確認ください。

 【リンク先】 日本取引所グループ 新型コロナウイルス感染症に関するJPXの取り組み

 https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0020/20200302-01.html

 

1 決算短信、業績予想修正等の適時開示対応に関する留意点

(1) 決算短信

Q1:新型コロナウイルスの影響によって通期の決算短信を例年どおりのスケジュール(3月期決算の会社では5月中旬)で開示できない場合、決算開示の遅延となり、取引所から処分を受けるか。

A1:上場会社は、通期に関する決算が固まった場合、直ちにその内容を開示することとされており、特に通期の決算については、遅くとも決算期末後45日以内に、その開示を行うことが適当とされていますが、この点につき、2020年2月10日、取引所は、通期の決算内容及び四半期決算内容について、新型コロナウイルスの影響により決算手続等に遅延が生じ、速やかに決算内容等を確定することが困難となった場合には、「事業年度の末日から45日以内」等の所定の時期にとらわれず、確定次第開示することで差支えない旨を公表しています。

また、2020年4月7日、取引所は、緊急事態宣言に伴って要請される業務縮退等による決算作業や監査手続への支障に配慮し、決算作業等の円滑な実施が困難となった場合には、当初のスケジュールにかかわらず、決算発表日程の再検討を行うよう、上場会社に対し再度の要請を行っています。

そのため、決算期末後45日以内(3月期決算の会社では2020年5月中旬まで)に決算短信を開示できなかったとしても、基本的に、取引所からの処分の対象とはならないと考えられます。

なお、有価証券報告書等の提出期限につき、2020年4月14日、金融庁は、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について」を公表し、有価証券報告書、四半期報告書、半期報告書及び親会社等状況報告書の法定提出期限について、「個別の申請を行わなくとも、一律に本年9月末まで延長する」との方針を示しました。

 【リンク先】 金融庁 新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について

 https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200414.html

これを受け、同日、取引所は、有価証券上場規程第601条第1項第10号に規定する「有価証券報告書又は四半期報告書の提出遅延」については、上場会社が新たに定められる期日(2020年9月末)までに有価証券報告書等を内閣総理大臣等に提出しなかった場合に限って適用することとなる旨を公表しています。

これにより、有価証券報告書等提出期限の延長申請の基準となる期日は「2020年9月末」となり、当該期日を超えても有価証券報告書等を提出できない場合に限り、上場廃止を避けるため、提出期限の延長申請及びその旨の適時開示等の対応が必要となることとなりました。例えば、3月期決算会社においては、有価証券報告書等の提出が、もともとの法定提出期限である6月末を超える場合であっても、延長申請やその旨の適時開示を行う必要はなく、9月末を超える場合に、延長申請やその旨の適時開示を行う必要が生じることとなります。

(2) 業績予想

Q2:来期の業績予想に当たり、コロナウイルスの影響があるものの未定の場合、単に「新型コロナウイルスの影響によって未定」などと記載すれば足りるのか。

A2:新型コロナウイルスが上場会社各社の事業活動や経営成績に及ぼす影響について、開示済の業績予想との乖離が見込まれる場合は、開示が可能となった時点で、速やかにかつ積極的に、開示を行うこと、開示を行う場合は、自社の状況に応じて、事業活動や経営成績に及ぼす影響等について、可能な限り具体的に説明すること、動向を踏まえ見直しを行うこと等が求められております。

そのため、単に「新型コロナウイルスの影響により、業績予想を開示できない」などと説明するのみでは、投資判断に資する情報開示としては不十分であると判断される可能性があり、可能な限り具体的に説明することが考えられます。

業績予想に係る具体的な説明を行う場合の一例としては、感染症の影響について、一定の前提条件の下で業績予想の開示を行う場合には、予想値を算出した際の前提条件(感染症の具体的な影響や程度、影響が及ぶ期間、対応策など)、今後、感染症の動向により予想値から実績が大きく乖離するおそれがある場合には業績変動のリスク(予想の振れ幅の大小)、感染症の影響を踏まえ、業績予想を「未定」とする場合には、 「未定」とする具体的な理由、感染症が経営成績等に与え得る影響やその程度(製造ラインの停止、全国●店舗の閉店等)について、自社を取り巻く状況を踏まえ、具体的な記載を検討すること等が考えられます。

なお、業績予想の修正の要否の判断(「未定」とすることの判断を含みます。)に当たっては、軽微基準(売上高10%以上の増減、各利益30%以上の増減等)に基づき判断することが一案として考えられます。

(3) リスク情報

Q3:新型コロナウイルスの影響について、決算短信又は四半期決算短信の添付資料等において、リスク情報として記載する必要があるか。

A3:取引所は、決算又は四半期決算の発表に際し、決算短信又は四半期決算短信の添付資料等において、感染症に関するリスク情報につき積極的に充実した説明を行うよう求めています。

この点、上場会社では、「リスク情報」の記載内容の検討に当たり、自社が今後提出することとなる有価証券報告書の「事業等のリスク」等の非財務情報の記載について、改正後の企業内容等の開示に関する内閣府令が適用され、従来よりも充実したリスク情報の記載が求められることとなります。そのため、かかる対応も念頭に置きながら、自社の状況に応じて可能な限り具体的にリスク情報を記載することが考えられます(なお、有価証券報告書等の提出期限に関しては、上記1(1)A1の解説もご参照ください。)。

なお、投資者への適時かつ公平な情報提供というフェアディスクロージャ-の観点から、決算説明会用のプレゼンテーション資料等を用いてより具体的な説明を行う場合は、決算説明会資料等についても開示資料と併せてTDnetに登録することも求められています。

(4)株主総会

Q4:定時株主総会を延期する場合に、適時開示は必要か。

A4:新型コロナウイルスの影響により定時株主総会の開催を延期するケースについて、法務省は、「定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りる」、また、剰余金の配当の決定を株主総会の権限としている会社においては、「定款で定めた基準日の株主に対する配当を行わず、当初の基準日と異なる日を剰余金の配当の基準日と定め、基準日株主に剰余金の配当を行うこともできる」等の見解を公表しています。

 【リンク先】 法務省 定時株主総会の開催について

 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00021.html

この点、会社法上、基準日株主が行使することができる権利は当該基準日から3か月以内に行使するものに限られており(会社法第124条第2項)、一般の上場会社の定款では、定時株主総会の議決権行使のための基準日を事業年度末と定めていることも多いと思われます。そのため、新型コロナウイルスの影響により基準日である事業年度末から3か月以内に定時株主総会を開催できない状況が生じ、定時株主総会の延期を行う場合には、上場会社は、新たに議決権行使のための基準日を定める必要があり、当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要があります。こうした延期の情報に関する開示は、投資判断上の重要性が高いと考えられるため、適時開示が必要と考えられます。また、この点に関し、取引所は、上場会社に対し、新たに議決権行使のための基準日を定めることを決定した場合には、直ちにその内容を適時開示することが必要となる旨を公表していますので、定時株主総会の延期を行う場合には、その旨の適時開示を行うとともに、基準日の設定に関する適時開示も忘れないよう留意する必要があります。

なお、取引所は、投資者に対し、仮に3月期決算の上場会社が今期事業年度終了後3か月以内に定時株主総会を開催できないこととなり、配当金その他の権利の基準日を事業年度末日から変更することとなった場合、3月30日以降変更後の権利付最終日において当該株式を有していない株主は、配当その他の権利が付与されないこととなる旨を公表していますので、この点についても留意する必要があります。

2 適時開示対応以外の上場制度(有価証券上場規程一部改正等)に関する留意点

(1) 上場廃止

Q1:新型コロナウイルスの影響により2020年3月末で2期連続債務超過となる場合、上場廃止となるのか。また、市場第一部の上場会社が、2020年3月末で初の債務超過となる場合、自動的に市場第二部に指定替えされるのか。

A1:2020年3月31日、取引所は、新型コロナウイルスの影響に配慮した有価証券上場規程等の特例(以下「本特例」といいます。)を新設し、速やかに施行する旨を公表しました。本特例は4月以降に施行予定ですが、2020年3月末が決算期である上場会社に対しても適用があることが示されています

上場会社が事業年度末に債務超過となった場合、有価証券上場規程によれば、1年の猶予期間内に債務超過を解消できなければ、原則として上場廃止となりますが、本特例が適用されることにより、新型コロナウイルスの影響により期末に債務超過が解消できない場合について、上場廃止までの猶予期間が、現行制度の1年間から2年間に延長されるため、2019年3月期に債務超過となった上場会社であっても、直ちには上場廃止とならない見込みです。

また、市場第一部上場会社が事業年度末に債務超過となった場合、有価証券上場規程によれば、直ちに市場第二部に指定替えされることが原則ですが、本特例が適用されることにより、新型コロナウイルスの影響により、直ちに指定替えとなることがないように、1年間の猶予期間が設けられるため、直ちには市場第二部に指定替えされない見込みです。

Q2:新型コロナウイルスの影響により、2020年3月末での監査証明書で意見不表明が表明された場合、上場廃止となるか。また、新型コロナウイルスの影響によって事業活動が停止した場合は、上場廃止となるか。

A2:上場会社の財務諸表等に添付される監査報告書において会計監査人の監査報告書の監査報告書に「意見の表明をしない」旨が記載された場合(「意見不表明」)であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると取引所が認めるとき、当該上場会社は上場廃止となるところ、本特例が適用されることにより、会計監査人の監査報告書の監査意見が新型コロナウイルスの影響により「意見不表明」となる場合については、上場廃止基準に抵触し得る「意見不表明」の対象外となり、当該意見不表明のみをもって上場廃止とはならない見込みです。

また、上場会社がその事業活動を停止した場合又はこれに準ずる状態になった場合は上場廃止となるところ、本特例が適用されることにより、新型コロナウイルスの影響による事業活動の停止については、上場廃止基準に抵触し得る「事業活動の停止」の対象外となり、事業活動停止のみをもって上場廃止とはならない見込みです。

(2) 上場審査(IPO)

Q3:新規上場審査(IPO)について、新型コロナウイルスの影響はあるか。

A3:上場制度の調整は、上場候補会社(いわゆるIPOを目指す会社)についても及びます。まず、上場審査の実質要件について、本特例が適用されることにより、新型コロナウイルスの影響は、一時的な業績悪化が「企業の継続性及び収益性等」の審査において勘案されるほか、「企業内容等の開示の適正性」の審査において、開示書類(リスク情報・業績予想等)に新型コロナウイルスの影響が適切に反映されているかが審査されることとなる見込みです。

また、本特例が適用されることにより、財務諸表等に添付される会計監査人の監査報告書の監査意見について、実地棚卸の立会や事業所の往査が困難な場合における申請直前事業年度の「限定付適正意見」は容認されることとなる見込みです。

なお、新型コロナウイルスの影響により上場承認に至らなかった場合、3年以内に再び新規上場申請を行えば上場審査料を無料とする特例も設けられる見込みです。

(3) 市場区分

Q4:プライム・スタンダード・グロース(いずれも仮称)の各市場区分への移行スケジュールに変更はあるか。また、現行制度の適用を受けるため、2020年6月までにIPOの申請を行う予定であるが、そのスケジュールに変更はあり得るか。

A4:東証が2020年2月21日に公表した「新市場区分の概要等について」の移行スケジュールでは、2022年4月の新市場区分への移行に向けて、2020年3月より現行制度の一部改正の手続を進め、同年7月以降から段階的に施行する予定であるとされていました。しかしながら、2020年4月7日、東証は、かかる手続を延期し、今般の緊急事態宣言の解除後に再開することを予定している旨を公表しました。

これにより、2020年7月以降から段階的に施行する予定とされていた現行制度の一部改正の施行スケジュールについても、玉突き的に延期される可能性が高くなりました。この点については、今後の動向を注視する必要があります。

なお、市場区分の再編に関しては、2020年3月31日に東証から以下のFAQが公表されていますので、ご関心のある方はご参照ください。

 【リンク先】 東京証券取引所 「新市場区分の概要等について」に関するよくある質問と回答(FAQ)

 https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/market-structure/nlsgeu000003pd3t-att/nlsgeu000004ncw5.pdf

(4) その他(決算、監査等)

Q5:今後、新型コロナウイルスの影響により、決算や監査手続が完了しない可能性が懸念されるが、適用される指針や通知はないか。

A5:2020年4月3日、金融庁は、新型コロナウイルスの影響により、上場企業等で売上げの減少や将来の業績見通しが立てられない状況等が生じるおそれがあることを踏まえ、3月決算企業の決算作業及び監査等について、関係者間で現状認識や対応のあり方を共有するため、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」を設置しました。当該協議会の事務局及び構成メンバーには東京証券取引所が含まれており、冒頭の1(1)A1において言及した金融庁の「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について」及びこれに対応する取引所の対応は、当該協議会における審議を踏まえた対応であると考えられるほか、2020年4月15日には、当該協議会が、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」を公表し、3月期決算の上場会社において、通常6月末に開催されることが多い定時株主総会の運営を念頭に、決算及び監査業務の遂行の観点から、定時株主総会の続行の決議、継続会の開催も選択肢として考えられる旨等を公表しています。

当該協議会においては、引き続き、当面の関心事である、決算、監査、株主総会、適時開示や有価証券報告書等について発表がなされる可能性があることから、今後も注視する必要があります。

 【リンク先】 金融庁 「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」

 https://www.fsa.go.jp/singi/coronakansakyougikai/index.html

以上

TMI総合法律事務所

弁護士 和藤誠治

弁護士 佐藤竜明

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