ミャンマーでは、マネーロンダリング防止法(2014)が、マネーロンダリングの防止を定めていますが、2019年11月に相次いで以下のマネーロンダリング防止、テロ支援防止の通知等が発せられています。
11月13日 計画財務省 マイクロファイナンス管理委員会 指令(Directive)2019年2号
11月13日 計画財務省 保険監督委員会(IBRB) 指令(Directive)2019年4号
11月14日 大統領府 命令(Order)2019年45号
11月15日 投資外国経済関係省 投資企業管理局(DICA) 指令(Directive)2019年17号
11月15日 中央銀行 指令(Directive)2019年18号
11月18日 証券取引委員会(SECM) 指示(Instruction)2019年1号
大統領府の命令の概要
まず、マネロン法の定める同法の適用対象となる犯罪の範囲を具体化、拡張しています。人身売買や違法薬物の密輸など、22の行為が列挙されていますが、テロ行為及びテロ行為への資金供給が最初に挙げられているところから、テロ行為防止のためのマネロン規制の強化という政府の意向が見て取れると思います。
情報提供を行った証人、通報者、及びそれらの家族について、情報の開示の禁止や、法廷での証言を強制されない等の保護手段が規定されています。
金融機関等に対し、匿名での口座開設、虚偽名称での口座開設を禁止するとともに、一定金額以上の金銭、資産の取引について、直ちに金融機関等についてのマネーロンダリングを規制する政府機関であるFinancial Intelligence Unitに開示する義務を課しています。また、Financial Intelligence Unitの独立性強化及び報告義務者からの報告受領とその分析等の権限の追加が規定されています。
金融機関等は、マネロン、テロ支援のアセスメントで高リスクと識別された顧客については、厳格な顧客デューデリジェンス(DD)を行い、低リスクと認識された顧客については、簡易な顧客DDを実施することとされていますが、マネロン、テロ支援の疑いや高リスクと認識された場合は、厳格な顧客DDを実施することとされています。また、顧客DDの実施に際しては、所管官庁の指令(Directive)に従うこととされています。また、顧客DDを実施すべきタイミング(関係の確立されていない顧客の1回又は複数回で1万5000USDを超える取引や国内外の送金その他)、金額不明の場合等の取り扱い、顧客DDの実施方法について規定しています。また、法人及び信託等の契約関係について、実質的な所有者(Beneficial Owner)について、顧客DDにあたり取得すべき情報を規定しています。
金融機関の新商品についてマネロン、テロ支援のリスクを診断し、リスク防止に適切な措置を採るべきこととされています。
各業界についての所管官庁の通知等
マイクロファイナンス管理委員会指令、保険監督委員会(IBRB)指令、投資企業管理局(DICA)指令、中央銀行指令、証券取引委員会(SECM)指示についても、上記大統領府命令の内容について、各業界ついて、より具体的に定める内容となっています。各社において、このようなマネロン規制の強化を受けて適切な対応を採る必要があります。
DICAの規定している会社の実質的所有者の報告義務
なお、DICAの指令では、会社等の実質的所有者(Beneficial Owner:①直接又は間接に株式又は議決権の5%以上を有する者、②取締役の多数を直接又は間接に選解任する権限を有する者、③会社等について、重大な影響又は支配する権限を直接又は間接的に有し、又は事実上これを行使する者)について、DICAに報告する義務が課されています。実務への影響が大きい内容といえ、今後の実務の運用を注視する必要があると考えます。