はじめに
欧州連合(EU)の包装・包装廃棄物規則(Packaging and Packaging Waste Regulation、Regulation (EU) 2025/40。以下「PPWR」といいます。)は、2025年2月11日に発効し、原則として2026年8月12日から適用されます。PPWRの適用開始はいよいよ目前に迫っており、EU域内で包装を上市する事業者においては、自社製品への影響を改めて確認するとともに、包装仕様、表示、社内管理体制及びサプライチェーン上の役割分担等について、具体的な対応を進めることが求められます。
PPWRは、包装の設計・組成・表示から、再使用、回収、リサイクル及び包装廃棄物の費用負担に至るまで、包装のライフサイクル全体を一つの規則で規律するものです。Directive 94/62/EC(包装・包装廃棄物指令)と異なり、Regulation(規則)として加盟国に直接適用される一方、生産者登録、拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility。以下「EPR」といいます。)の運営、罰則等については加盟国ごとの制度確認が引き続き必要です。PPWRの概要については、別稿「EU包装・包装廃棄物規則(Packaging and Packaging Waste Regulation、Regulation (EU) 2025/40)(PPWR)の概要と実務対応のポイント」もご参照ください。
本稿は、日系の製造業者・ブランドオーナー・生産者が、EU向け輸出、EU子会社を通じた販売、越境ECその他の商流を行う場合を念頭に、PPWR上の役割判定と実務対応を整理するものです。特に、Manufacturer(製造者)とProducer(EPR上の生産者)は同じ「生産者」と訳されることがあるものの、法的機能、地理的単位及び義務内容が大きく異なります。この区別を誤ると、技術文書・EU適合宣言が作成されない一方で、別の企業がEPR費用を重複して負担するなど、製品コンプライアンスと廃棄物管理の双方で不具合が生じます。
欧州委員会は2026年3月30日に実務支援資料を公表し、同年6月10日付のEU官報CシリーズにCommission Notice – Guidance document for Regulation (EU) 2025/40 on packaging and packaging wasteとして掲載されました(以下「2026年ガイダンス」といいます。)。本稿では、2026年ガイダンスを中心に、2026年7月21日までに確認した公式公表物に基づいています。
日本企業への適用と対象範囲
(1) 対象となる「包装」と包装単位
PPWRは、素材又は販売形態を問わず、製品を収容、保護、取扱い、配送又は提示するために使用される包装及び包装廃棄物を広く対象とします。販売包装(sales packaging)、集合包装(grouped packaging)、輸送包装(transport packaging)、Eコマース包装(e-commerce packaging)、サービス包装(service packaging)及び一次生産包装(primary production packaging)を含み、B2Cの化粧箱・ボトル・袋だけでなく、B2Bのドラム、IBC、パレット、ストレッチフィルム、緩衝材、輸送箱等も対象になり得ます。
実務上は、製品SKUだけで判定せず、一次容器、キャップ、ライナー、ラベル、外箱、緩衝材、集合箱、輸送パレット等を「包装単位(packaging unit)」と「構成部品」に分解し、各単位について、完成包装として機能する時点、名称・商標、仕様決定者、EU上市時点及び加盟国別の最初の市場提供を確認する必要があります。この作業の基礎となるのが、製品BOMとは別に管理する包装BOM(Bill of Materials)です。材料、重量、添加剤、インキ、接着剤、コーティング、再生材含有率、PFAS・重金属、空隙率、再使用回転数、供給者、工場、販売国及び役割判定を一つのデータ体系にひも付けて管理することが望まれます。
(2) Manufacturer(製造者)とProducer(EPR上の生産者)の違い
ManufacturerとProducerは、PPWR上の役割が以下の通り異なります。
ManufacturerとProducerの比較
| 比較項目 | Manufacturer(製造者) | Producer(EPR上の生産者) |
| 規則上の根拠 | 第3条(13)、第15条 | 第3条(15)、第45条~第47条 |
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法的機能 |
包装の製品適合責任(持続可能性・表示要件の充足) | 包装廃棄物の費用負担(拡大生産者責任) |
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決定単位 |
包装単位ごと、EU全体で原則一者 | 加盟国別・販売チャネルごとに異なり得る |
| 典型的な該当者 | ブランドオーナー、仕様決定者、充填者(販売包装の場合) | EU子会社、EU Importer、又は越境EC時の日本企業自身 |
| 主な義務 |
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| 責任の委任 | 中核責任(適合確保・技術文書作成)は委任不可。Manufacturer AR(第17条)は技術文書保管・当局対応等の補助的役割のみ | EPR AR(第45条第3項)への委任は一定範囲で可能。販売先加盟国に設立された者に登録・報告・PRO対応等を委任 |
| 記録保存期間 | 5年(単回使用包装)/ 10年(再使用可能包装) | 加盟国のEPR制度による |
| 日本企業の注意点 |
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【注記】
- 同一企業がManufacturerかつProducerとなることがある(例:越境EC直販時の日本企業)
- Importer/Distributorが自社ブランドで上市又は適合性に影響する変更を行った場合、第21条によりManufacturerとみなされる
ア Manufacturerは「包装の適合責任を負う者」
Manufacturerは、包装又は包装済み製品を製造する自然人又は法人を意味しますが、物理的に包材を成形・印刷するコンバーターと同義ではありません。自己の名称又は商標の下で包装又は包装済み製品を設計・製造させる場合は、原則として、その名称・商標を用い、設計仕様を発注・決定する者がManufacturerです。2026年ガイダンスは、(i) 設計・製造における決定権と、(ii) 名称・商標・ブランドの二つの要素を重視し、一つの包装単位についてEUのサプライチェーン全体で原則として一者のManufacturerを特定する考え方を示しました。
販売包装及び集合包装では、最終加工、充填、封緘を行い、自社製品としてEU市場に上市する充填者又はブランドオーナーが通常Manufacturerとなり、包材メーカーはSupplier(供給者)となるのが一般的です。これに対し、完成した空の輸送包装、サービス包装及び一次生産包装では、その空包装を製造した企業が通常Manufacturerとなりますが、使用者の名称・商標が明確に表示され、使用者が仕様を決定する場合には、その使用者がManufacturerとなり得ます。無地・標準仕様の包装では、誰が注文し設計仕様を決定したかが重要です。
Manufacturerの主要義務は、PPWR第5条から第12条までの持続可能性・表示要件への適合確保、上市前の適合性評価、Annex VIIに基づく技術文書、EU適合宣言(EU declaration of conformity)、識別情報及び連絡先表示、量産変更管理、不適合時の是正・撤去(withdrawal)・回収(recall)、並びに当局の要請から10日以内の資料提出です。単回使用包装については5年間、再使用可能包装については10年間、技術文書及びEU適合宣言を保存します。試験、計算又は文書作成を外部委託しても、適合確保の中核責任はManufacturerに残ります。
イ Producerは「包装廃棄物の費用を加盟国別に負担する者」
Producerは、Manufacturer、Importer又はDistributorのうち、特定の加盟国で包装又は包装済み製品を最初に市場提供し、又は最終利用者に越境直接販売する者等を指します。Producerは、包装が廃棄物になることが見込まれる加盟国ごとに、登録、報告、Producer Responsibility Organisation(PRO)への加入又は個別履行、EPR費用の負担、EPR授権代理人の選任(該当する場合)等を行います。したがって、Manufacturerが包装単位ごとにEU全体で原則一者であるのに対し、Producerは販売先加盟国、販売チャネル及び相手方が最終利用者か再販売者かによって変わります。
例えば、日本のブランド会社が仕様を決定した包装済み製品をEUの独立輸入者に販売する場合、日本会社がManufacturerであり続ける一方、輸入者が当該加盟国で最初に製品をEU上市するのであれば、通常は輸入者がProducerとなります。これに対し、日本のオンラインショップがEUの消費者又は業務用最終利用者に直接販売する場合、日本会社は通常Manufacturerであると同時に、各販売先加盟国のProducerとなります。一方で、EU域外に再輸出され、EUで包装廃棄物にならない包装については、原則としてPPWR上のEPR義務は生じません。
なお、Manufacturer、Importer又はProducerの地位は、契約上の名称、インコタームス、通関上のImporter of Record又は費用負担条項だけで決まるものではなく、実際のブランド、仕様決定、EU上市及び加盟国別の最初の市場提供に基づいて判断されます。契約により情報提供、費用、補償及び回収対応を配分することはできますが、Manufacturerの中核的な適合責任をImporterに移転することはできません。
(3) Importer(輸入者)、Distributor(流通業者)及びSupplier(供給者)
ア Importer
PPWR上のImporterは、EU域内に設立された自然人又は法人であり、第三国からの包装又は包装済み製品をEU市場に初めて上市する者です。日本法人は、EU向けに輸出しているだけではImporterになりません。EUに法人格を有する子会社はImporterとなり得ますが、通常の支店は親会社と別個の法人格を有しないため、2026年ガイダンス上、Importer又はDistributorには該当しないと整理されています。VAT登録や税務上の恒久的施設があるだけでは、規制上の「設立」の要件を満たしません。
Importerは、適合する包装のみを上市し、Manufacturerが適合性評価を実施し、技術文書及びEU適合宣言を作成していること、必要なラベル及びManufacturer表示が付されていることを確認し、自らの名称、郵便住所及び利用可能な電子連絡手段を表示します。不適合が疑われる場合には上市せず、既に上市した場合には適合化、撤去又は回収を行い、当局へ通知します。また、保管・輸送条件が適合性を損なわないようにし、EU適合宣言の写しを5年又は10年保存し、技術文書を当局に提出できる状態にします。
イ Distributor
Distributorは、Manufacturer又はImporter以外のサプライチェーン上の者で、包装を市場提供する者です。Distributorは、相当の注意(due care)をもって、対象Producerの登録、適用されるラベル、Manufacturerの識別・連絡先及びImporterの連絡先表示を確認しなければなりません。不適合又は表示・登録の欠缺を認識した場合は、市場提供を停止し、必要な是正、撤去又は回収を確保し、当局に通知します。Distributorは単なる受動的な販売者ではなく、EPR登録及び製品コンプライアンスを販売前に確認する役割を担います。
ウ Supplier
Supplierは、包装又は包装材料をManufacturerに供給する者であり、ManufacturerがPPWRへの適合を立証できるよう、材料構成、重量、化学物質、再生材、試験・計算、証明書、食品接触関連資料及び変更情報を提供する義務を負います。供給者宣言だけに依存せず、対象材料、工場、ロット、試験方法、適用範囲、更新期限及び変更時の再評価条件を特定することが重要です。
なお、Importer又はDistributorが自己の名称・商標で包装を上市し、又は適合性に影響を与え得る変更を行った場合には、第21条によりManufacturerとして扱われ、Manufacturerの全義務を負います。ラベル、スリーブ、接着剤、材質、寸法、封緘方法等の変更は、形式的な変更に見えてもリサイクル性、PFAS、空隙率又は表示要件への適合に影響し得るため、変更承認プロセスを設ける必要があります。
(4) 二種類のAuthorised Representative(授権代理人)
PPWRには、目的の異なる二種類の授権代理人が存在します。第一は、第17条のManufacturerのAuthorised Representative(以下「Manufacturer AR」といいます。)です。Manufacturerは、EU域内の者を任意に書面で選任し、技術文書及びEU適合宣言の保管・提出、当局への情報提供、是正措置への協力等を委任できます。ただし、第15条第1項の適合確保及び技術文書作成の中核責任は委任できず、Manufacturerの法的責任は残ります。
第二は、第45条第3項のAuthorised Representative for Extended Producer Responsibility(以下「EPR AR」といいます。)です。これは販売先加盟国に設立された者に、Producer登録、報告、PRO対応その他のEPR義務を委任する制度です。現行PPWRでは、EU加盟国に設立されたProducerが別の加盟国の最終利用者に越境直接販売する場合、販売先国ごとのEPR AR選任が原則義務となります。他方、第三国に設立されたProducer、すなわち日本企業については、各加盟国がEPR ARの選任を要求できるため、EU全域で一律に必須とは考えず、販売先国ごとに、国内法、既存のEPR制度及び登録手続を確認する必要があります。
(5) 日系事業者の典型的な商流別の整理
日系企業の商流別の役割整理
| 商流パターン | 日本企業の役割 | EU側事業者の役割 | Producer(EPR義務主体) |
| ア: EU子会社あり(間接輸出) | 日本親会社 → Manufacturer (包装仕様・ブランド決定者) |
EU子会社 → Importer (EU上市者) |
EU子会社 (当該加盟国で最初に市場提供する場合) |
| イ: EU域内に支店のみ | 支店は法人格なし → Importer/Distributorに該当しない 日本親会社 → Manufacturer |
対応策: EU子会社設立、 独立 EU Importerとの取引、 AR選任の組合せ |
― (対応策により変動) |
| ウ: 独立したEU Importerを利用 | 日本企業 → Manufacturer | EU Importer/商社 → Importer | EU Importer (同一加盟国で最初に市場提供する場合) |
| エ: EU消費者に直接販売(越境EC) | 日本企業 → Manufacturer + Producer (各販売先加盟国) |
EU側にImporterは不在 | 日本企業自身 (各販売先加盟国) |
【注記】
- Manufacturerは包装単位ごとにEU全体で原則一者
- Producerは販売先加盟国・販売チャネルにより変動
- 支店・VAT登録のみではImporter/Distributorに該当しない(2026年ガイダンス)
- Importer/Distributorが自社ブランドで上市又は適合性に影響する変更を行った場合、第21条によりManufacturerとみなされる
ア EU域内に法人格を有する現地子会社がある場合
日本親会社がブランド及び包装仕様を決定し、EU子会社が日本から製品を輸入して販売する場合、通常、日本親会社がManufacturer、EU子会社がImporterとなります。EU子会社が当該加盟国で初めて包装済み製品を供給する場合は、同子会社が当該国のProducerとなることが多く、既存の包装EPR制度への登録、PRO加入、重量・素材別報告及びEPR費用を負担します。EU子会社が他の加盟国の再販売者にB2B販売する場合、販売先国の受領者がProducerとなることが多い一方、EU子会社が他国の最終利用者に直接販売する場合には、EU子会社が販売先国のProducerとなり、現行法上は販売先国のEPR AR選任が問題となります。
EU子会社が独自ブランドで上市し、又は包装を変更する場合には、EU子会社自身がManufacturerとなり得ます。したがって、グループ内契約では、包装単位ごとの役割、技術文書の作成主体、変更承認、当局照会、撤去・回収、EPR費用及び在庫廃棄の負担を明記すべきです。
イ EU域内に支店のみを有する場合
支店に独立した法人格がない場合、2026年ガイダンス上、その支店をPPWR上のImporter又はDistributorとして扱うことはできません。親会社は第三国法人のままであり、支店を設置し又はVAT登録を行うだけでは、EU域内にImporterを置いたことにはなりません。EU子会社の設立、独立したEU Importerとの取引、Manufacturer ARの任意選任、及び販売先国で必要となるEPR ARの選任を組み合わせて対応します。
ウ 独立したEU Importerを通じて間接輸出する場合
日本企業が独立したEU Importer又は商社に販売し、同社が自由流通へのリリース後にEU市場へ供給する場合、日本企業は通常Manufacturer、EU事業者はImporterとなります。さらに、当該EU事業者が同一加盟国で最初に市場提供する場合には、通常Producerでもあります。この場合、EPR義務は公法上Importerに帰属し得ますが、日本企業のManufacturer責任は残ります。日本側は、技術文書・EU適合宣言、材料情報及び変更通知を提供し、Importer側は上市前確認、連絡先表示、登録・PRO・EPR費用、保管・輸送及び当局対応を担うという分担が基本です。
ただし、販売代理店が別の加盟国へ再販売する場合、Producerは各加盟国で最初に供給するImporter、販売代理店又は現地Distributorへ移り得ます。EPR料金の重複、他国への移動後の返金、返品・再輸出及び登録証明の提供を契約とデータの両面で管理する必要があります。
エ EU域内に現地法人を置かず、最終利用者へ直接輸出する場合
日本のオンラインショップ又は営業部門が、EUの消費者又は業務用最終利用者に直接販売する場合、日本企業は通常Manufacturerかつ各販売先加盟国のProducerとなりますが、EUに設立されていないため、それ自体はPPWR上のImporterではありません。DDP条件、輸入申告上のImporter of Record又はフルフィルメント事業者の利用だけで、この結論が当然に変わるものではありません。
この商流では、販売先国ごとに、既存EPR登録、PRO加入、EPR ARの要否、報告区分、料金、オンラインプラットフォームへの登録番号提出及び国内表示を確認します。オンライン上のオファー自体が最終利用者の加盟国での市場提供となり得るため、販売国を追加する前にEPR登録を販売開始の前提条件とすることが重要です。Manufacturer ARを選任しても、EPR ARを兼ねるとは限らず、委任範囲と設立国を区別しなければなりません。
オ OEM・ODM・プライベートブランド
物理的な製造者が日本又は第三国のOEMであっても、ブランドオーナーが自己の名称・商標の下で包装済み製品の設計・製造を発注し、包装仕様を決定する場合、ブランドオーナーが通常Manufacturerです。製造委託契約には、PPWR第16条に沿った情報提供、材料・工場・工程変更の事前承認、試験、監査、記録保存、当局照会、撤去・回収及び費用負担を規定する必要があります。
各事業者が対応すべき事項とスケジュール・義務の内容
(1) 2026年ガイダンスの法的性質と実務上の位置付け
2026年ガイダンスは、Commission Noticeとして公表された非拘束的な解釈文書であり、PPWRの条文を変更せず、加盟国当局又は裁判所を法的に拘束するものでもありません。最終的な解釈権限はEU司法裁判所にあります。他方、同ガイダンスは、適用開始直前の執行実務において、経済事業者及び加盟国当局による参照を想定した公式資料であり、33の論点について具体的な解釈を示しています。したがって、条文、附属書及び拘束力を有する下位法令を一次的な判断基準としつつ、ガイダンスの解釈を社内手順、契約及び技術文書に反映するのが実務上適切です。
ガイダンスは、今後2~3年以内に多数の委任法令・実施法令・規格が整備されることを前提としており、必要に応じて更新される可能性があるとしています。
(2) 2026年ガイダンスが示した主要解釈
ア リサイクル可能性の暫定運用
PPWR第6条第1項は2026年8月12日から「全ての包装はリサイクル可能でなければならない」と規定しますが、Design for Recycling(DfR)の委任法令が適用されるまでの移行期について、2026年ガイダンスは、従来のPPWDの必須要件及びEN 13430:2004に基づいて対応し、PPWR第6条について第38条・Annex VIIの適合性評価を行う必要はないと整理しました。DfR等級の適用は、原則として2030年1月1日又は関連委任法令の発効後24か月のいずれか遅い日です。
委任法令未採択の段階では、現行PPWD必須要件及びEN 13430:2004に基づく暫定対応と、将来基準に再計算できる包装BOM整備を並行することが実務上重要です。
もっとも、これは2030年まで設計対応が不要であることを意味するのではなく、多層材、複合材、黒色・高着色材、全面スリーブ、剥離困難なラベル・接着剤、小型部品等を早期に洗い出し、将来の評価基準に再計算できる材料、重量、分離性及び試験データを包装BOMへ蓄積する必要があります。
イ 再生材含有率の例外
プラスチック包装の最低再生材含有率について、食品接触安全上の理由による例外及び包装単位全重量の5%未満のプラスチック部品に関する例外は、所管当局の個別承認を前提とせず直接適用され得る一方、Manufacturerが適用条件を技術文書で立証しなければなりません。食品接触用途の例外では、ポリマーごとに、適切に認可され、産業規模で利用可能なリサイクル技術が存在しないこと等の証拠が必要です。
ウ 堆肥化可能包装
2028年2月12日までに、透過性のティー・コーヒーその他の飲料バッグ、使用後に柔らかくなる一回分抽出ユニット及び果物・野菜に貼付する粘着ラベルは、産業的に管理された堆肥化条件に適合する必要があります。ガイダンスは、これらの概念を素材中立的に解釈し、加盟国が一定の追加包装に堆肥化可能性を求めたり、家庭用堆肥化要件を設けたりする余地が残ることを確認しています。国別の追加要件を確認し、国家認証は証拠として利用できるものの、それ自体でEU法上の適合推定を生じさせるものではない点に留意が必要です。
エ 包装最小化と空隙率
包装最小化については、2029年末まで従来のEN 13428:2004等に沿う対応が基本となり、2030年以降は、重量・体積を機能上必要な最小限とし、マーケティング又は消費者受容性のみを独立した正当化理由とすることが困難になります。第10条の設計上の最小化は主としてManufacturer又はImporterが担う一方、第24条の集合包装、輸送包装及びEコマース包装の空隙率50%以下は、当該包装を充填・使用する経済事業者に課されます。充填材も空隙として扱われるため、設計責任と物流運用責任を分けて管理します。
オ 統一ラベル
材料組成及び分別を示す統一ラベルは、2028年8月12日又は関連実施法令の発効後24か月のいずれか遅い日から適用され、再使用可能包装の統一表示は、2029年2月12日又は実施法令の発効後30か月のいずれか遅い日から適用されます。ガイダンスは、PPWR第12条の調和領域を原則として網羅的と捉え、国別の分別ラベルは移行後に見直される方向性を示しました。EPR制度参加に関する情報は、原則として物理的なラベルではなくデジタル形式で提供する仕組みです。現時点では該当実施法令の最終官報掲載を確認できないため、ラベル仕様は最終実施法令の発効後に確定します。アートワークは柔軟に改訂可能な設計とし、QRコードの情報階層、言語、国別ラベルとの切替管理及び在庫切替期間を別途確保する必要があります。
カ 再使用可能包装の既存在庫
2025年2月11日前に上市された再使用可能包装については、PPWR第11条への遡及適合や撤去を求めない取扱いが示されています。他方、同日以後に上市された再使用可能包装は、2026年8月12日以降、適用される要件への適合が必要です。再使用システム、所有権、回転数、洗浄・再調整、回収地点及びラベル時期を個別に記録する必要があります。
(3) 2026年6月10日以降、2026年7月21日までの関連動向
ア EPR AR選任義務の停止提案(COM(2025) 982)
欧州委員会は2025年12月10日、PPWR第45条第3項の適用を2035年1月1日まで停止する規則案COM(2025) 982(2025/0395(COD))を提出しました。提案の主眼は、EU域内の一加盟国に設立されたProducerが他加盟国の最終利用者へ直接販売する場合のEPR AR選任に伴う行政負担を軽減することにあります。他方、第三国に設立されたProducerについては、加盟国の執行権限が及びにくいことから、加盟国がEPR ARの選任を要求できる既存の仕組みを維持する趣旨が示されています。
もっとも、2026年7月21日現在、この提案は立法手続中であり成立していません。したがって、現時点では現行の第45条第3項及び各加盟国法に基づき対応し、提案の成立を見込んで既存の選任又は登録を停止すべきではありません。
イ FAQ及び実施情報ページ
欧州委員会環境総局は2026年3月30日にPPWR FAQを公表しました。FAQは、包装該当性、適合性評価、技術文書、EPR登録、表示その他の実務論点を確認するための補助資料として参照できますが、条文・委任法令・実施法令そのものではなく、最終的な法的義務はEU官報掲載済みの法令で確認する必要があります。また、Green Forumの実施情報ページでは、加盟国から通知された所管当局、下位法令の作業状況及び期限が更新されています。同ページによれば、欧州委員会は、包装・廃棄物容器の統一ラベルに関する実施法令、プラスチック包装の再生材含有率の計算・検証方法、リサイクル工程の持続可能性基準及び第三国同等性ルールを準備中です。
2026年7月21日現在、PPWR第44条第14項の生産者登録・報告フォーマット及び第12条・第13条の統一ラベルに関する最終実施法令について、EU官報掲載を確認できません。採択期限を過ぎているか、期限が迫っている法令であっても、官報掲載・発効前のドラフト又は説明資料を最終的な適合判断の根拠と混同しないことが重要です。また、PPWR第7条第8項に基づくプラスチック包装一般の再生材含有率計算・検証・報告ルールは、2026年12月31日までに欧州委員会が採択する予定です。
なお、2026年6月25日の理事会(環境閣僚理事会)において、チェコ、ブルガリア、イタリア、ラトビア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア及びスロベニアの8か国が、PPWRの実施上の課題に関する文書を提出し、特にPFAS試験方法の不明確さ、包装ラベル要件に関する調和された実施法令の未採択による法的不確実性、及び中小企業への負担について懸念を表明しました。同文書は、欧州委員会に対し、全ての委任法令・実施法令の採択スケジュールの明確化、ガイダンスの更新・拡充、及び各加盟国で整合的に適用できる明確な基準の早期策定を求めています。この文書からは、2026年8月12日の適用開始時点でも一部の詳細基準が未確定となる可能性がうかがわれます。事業者は、官報掲載済みの法令を一次的な判断基準としつつ、未採択の下位法令に関する動向を継続的にモニタリングする必要があります。
(4) 契約、社内体制及びデータ管理
PPWR対応は、法務部門又は包装技術部門だけでは完結しません。法務・コンプライアンスが役割判定、法令モニタリング、契約及び当局対応を統括し、研究開発・包装設計がDfR、最小化及び代替設計を、品質保証・食品安全がPFAS、重金属、技術文書及びEU適合宣言を、調達がSupplier情報及び変更通知を、物流・通関が上市時点、空隙率及び輸送包装を、営業・ECが販売先国、最終利用者判定及びProducer登録を、財務がEPR費用を、ITが包装BOM及び証拠保管を担う横断体制が必要です。
Supplier、OEM、EU Importer、Distributor及びグループ会社との契約には、包装単位ごとの役割分担、PPWR及び販売国法への適合保証、材料・重量・化学物質・再生材・試験情報の提供、変更の事前承認、監査・第三者試験、5年又は10年の記録保存、当局照会への10日以内の対応、販売停止・隔離・撤去・回収、EPR登録・PRO・EPR AR・報告データ・料金、返品・再輸出及び将来の法令改正等に伴う再協議を規定することが望まれます。
また、包装材の材質・厚み・重量・色、供給者、工場、再生材の供給源、製品内容物、販売国、販売チャネル、通関スキーム、ブランド又はEU法人に変更が生じた場合は、Manufacturer、Importer及びProducerの役割、技術文書の内容並びにEPR登録の要否・内容を再判定する必要があります。
違反のリスク:市場アクセス禁止と罰則
(1) 市場提供の停止、撤去及び回収
PPWRに適合しない包装は、EU市場へ上市又は市場提供できません。技術文書、EU適合宣言、識別・連絡先表示又はデータキャリア等の形式的不適合が是正されない場合にも、加盟国当局は市場提供を禁止し、撤去又は回収を確保する措置を講じ得ます。PFAS、重金属、リサイクル性、空隙率、禁止包装又は再使用目標等の実体的不適合についても同様です。
市場監視措置に関する情報は、他の加盟国及びEU税関のリスク管理にも共有され得るため、一加盟国の指摘がEU全域の販売又は通関に波及する可能性があります。ロット特定、EU在庫隔離、販売停止、Importer・Distributorへの通知、当局報告、顧客連絡、撤去・回収及び原因分析の手順を事前に整備する必要があります。
(2) 商取引上のリスク
PPWRの違反当事者に対する行政処分に先行して、EU Importer、小売業者、顧客、マーケットプレイス又はフルフィルメント事業者から、取引停止、倉庫受入拒否、登録番号提出要求、販売アカウント制限、補償請求又は監査要求を受ける可能性があります。また、緊急の包材・アートワーク・設備変更、在庫廃棄、航空輸送、EPR遡及料金、利息及び複数国での重複負担が生じ得ます。法的な役割判定と証拠整備は、市場アクセスを維持するための取引条件でもあります。
おわりに
PPWR対応の起点は、包装材料の技術論ではなく、包装単位、ブランド、仕様決定、EU上市、加盟国別の最初の市場提供及び販売先が最終利用者か再販売者かを確認し、Manufacturer、Importer、Distributor及びProducerを正しく特定することです。特に、EU子会社、支店、独立Importer、販売代理店、越境EC及びフルフィルメントを併用する場合には、同一企業が国やチャネルによって異なる役割を担うことがあります。
2026年8月12日までの短期対応として、食品接触包装のPFAS規制及び重金属規制への対応、技術文書及びEU適合宣言の整備、Manufacturer・Importer表示、Importer・Distributorによる受入確認並びに既存EPR登録を進める必要があります。なお、PFASについては、試験方法の詳細が十分に明確化されていないとする加盟国からの指摘があり、今後の欧州委員会による追加ガイダンスの公表により実務運用が変更される可能性があるため、関連動向を継続的に確認することが重要です。同時に、2030年のDfR、再生材含有率、包装最小化、空隙率、禁止包装及び再使用目標に向け、包装BOMの整備、代替設計、設備投資及び長期調達の準備を進める必要があります。
直近では、①商流ごとの当事者の役割整理、②食品接触包装のPFAS試験・在庫・通関計画の確定、③技術文書及びEU適合宣言のテンプレートと承認者の設定、④EU Importer・Distributorの受入確認手順の合意、⑤加盟国別EPR登録・PRO・EPR ARの点検、⑥Supplier・OEM・グループ内契約の改訂を優先して進める必要があります。
義務の適用スケジュール(タイムライン図)
| 適用日 | 義務の内容 | 根拠条文 | 備考 |
| 2025年2月11日 | PPWR発効 | 第71条 | OJ掲載日(2025年1月22日)の20日後 |
| 2026年8月12日 |
一般適用開始
|
第71条 | 左記が直ちに適用 |
| 2027年2月12日 | 加盟国による罰則規定の整備期限 | 第68条 | Effective, Proportionate, Dissuasiveの三原則 |
| 2028年2月12日 | 堆肥化可能包装の要件適用 | 第9条 | ティーバッグ、コーヒーバッグ、果物・野菜の粘着ラベル等 |
| 2028年8月12日 | 統一ラベル要件 | 第12条 | 又は関連実施法令の発効後24か月のいずれか遅い日 |
| 2029年2月12日 | 再使用可能包装の統一表示 | 第12条 | 又は実施法令の発効後30か月のいずれか遅い日 |
| 2030年1月1日 |
DfR等級C以上義務化
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第6条 | 又は委任法令発効後24か月のいずれか遅い日 |
| 2035年1月1日 | 大規模リサイクル(Recycled at Scale)要件追加 | 第6条 | 年間リサイクル率55%以上(木材は30%以上) |
| 2038年1月1日 | DfR等級B以上義務化 | 第6条 | 等級C以下は上市禁止 |
| 2040年 | 再生材含有率・第2段階(引上げ) | 第7条 | 長期的な再生材の安定調達が必要 |
※ 一部の適用日は、委任法令・実施法令の発効日に応じて後ろ倒しとなる可能性があります。2026年7月21日現在、統一ラベル等の実施法令は未採択です。
問い合わせ先:info_attorney@tmi.gr.jp
東京オフィス:越元瑞樹
ブリュッセルオフィス:中山 祥