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【入所】最高裁判所判事を退官された今井 功弁護士を顧問として迎えました

2010/04/09

当事務所では昨年12月をもって最高裁判所判事を退官された今井 功弁護士(第一東京弁護士会所属)を4月1日付で顧問として迎えました。 以下、今井弁護士が関与した最高裁大法廷判決をご紹介いたします。

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私の関与した最高裁大法廷判決について

私は、平成16年12月から平成21年12月まで5年間最高裁判事として在職したが、その間に担当した上告事件は、民事・行政事件が約5000件、刑事事件が約4000件になる。いずれの事件についても思い出は尽きないが、中でも深く心に残っているのは、大法廷の事件である。5年間に大法廷で審理された事件は、実質10件である(ほぼ同一の事実関係の下で形式的な事件としては複数あるが、実質的には同じ事件とみなされるものは1件として数えた件数である)。その中には、違憲判断が3件、判例変更が3件、衆議院議員、参議院議員の選挙の定数配分又は選挙区割りが違憲として争われた選挙権平等侵害事件が3件、その他が1件である。

最高裁判所の最も重要な役割は、憲法判断と法令解釈の統一にあるのであるが、これらの事件は、いずれも最高裁の本来の役割を果たした事件ということができ、在職中にこのような事件に関与できたことを幸せに思う。

1 違憲判断をした事件
 ・在外日本人選挙権剥奪違法確認事件 平成17年7月15日判決
外国に居住する日本国民に衆議院議員および参議院議員の選挙区選挙の選挙権を
認めない公職選挙法の規定が違憲とされた事件。
国会は、判決を受けて、公職選挙法を改正して、在外日本人にも上記選挙の投票権
を認めることとした。
 ・国籍確認請求事件 平成20年6月4日判決
日本国籍を有する父と日本国籍を有しない母との間に出生した非嫡出子に日本国籍
を認めない国籍法の規定が違憲とされた事件。
国会は、判決を受けて、国籍法を改正して、上記の非嫡出子にも日本国籍を認める
こととした。
 ・財産管理を怠る事実の違法確認請求事件 平成22年1月20日判決
市有地の上に神社物件を無償で使用させていることが違憲とされた事例
2 判例変更をした事件
 ・小田急連続立体交差事業認可取消請求事件 平成17年12月7日判決
行政処分取消訴訟の原告適格を狭く解釈していた従来の判例を変更して、事業認可
という行政処分の取消を求める原告適格を鉄道線路から一定範囲に居住する沿線の
住民にまで認めた。
 ・行政処分取消請求事件 平成20年9月10日判決
行政処分取消訴訟の対象となる行政処分の範囲を狭く解釈していた従前の判例を変
更して土地区画整理事業における都市計画事業計画決定が取消訴訟の対象となる行
政処分に当たるとした。
 ・解職請求署名簿無効決定異議申立決定取消請求事件 平成21年11月18日判決
市議会の議員の解職請求について、公務員である農業委員会委員が解職の請求の代
表者になることができないと定めた政令の規定は法律の委任の範囲内にあり、有効
であるとしていた従前の判例を変更して、上記政令の規定は法律の委任の範囲を超
えて違法であるとした(従来の判例は適法としていた)。
3 議員定数配分又は選挙区割りの合憲性が争われた事件
 ・平成16年7月11日参議院議員選挙無効確認請求事件 平成18年10月4日判決
 ・平成17年9月11日衆議院議員選挙無効確認請求事件 平成19年6月13日判決
 ・平成19年7月29日参議院議員選挙無効確認請求事件 平成21年9月30日判決
いずれの事件についても多数意見の結論は、公職選挙法の規定は直ちに違憲という
ことはできないとしたが、現在の規定は選挙権の平等の見地から問題があり、国会
において改善が望まれるとの付言がされた。
4 その他の事件
国民健康保険賦課処分取消等請求事件 平成18年10月4日判決
国民健康保険料率を定めた旭川市条例の規定が、租税法律主義を定めた憲法84条、
81条に違反して無効であると主張されたが、合憲であると判断された。

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