1.はじめに
2023年10月27日、インド企業省(Ministry of Corporate Affairs)は、2014年会社法(有価証券の目論見書及び割当て)規則(Companies (Prospectus and Allotment of Securities) Rules, 2014)を改正し、2023年会社法(有価証券の目論見書及び割当て)第2改正規則(Companies (Prospectus and Allotment of Securities) Second Amendment Rules, 2023。以下「本規則」という。)を即日施行する旨を通達した。
従前から公開会社(public companies)は株券等の有価証券(以下「株券等」という。)を電子化することが義務づけられていたが、本規則により、非公開会社(private companies)も同様の義務を負うこととなった。本規則の目的は、非公開会社の株式を取引する際の透明性及び効率性を高める点にある。
本規則の全文はウェブサイト「getdocument (mca.gov.in)」上で確認することができる。
本号では、本規則の内容を概説したうえで、本規則が日系企業を含む外国企業に対して与える影響について検討したい。
2.本規則の概要
(1) 適用範囲
本規則は、以下の①及び②を除く全ての非公開会社(以下「適用対象会社」という。)に適用される。
①政府系企業
②小会社(small company):売上高等が法令所定の基準を下回る会社のうち、以下のいずれにも該当しないもの。
(i)持株会社、(ii)子会社、(iii)慈善活動を目的とする会社、及び(iv)特別法が適用される会社
(2) 履行期限
2023年3月31日の時点で適用対象会社に該当する会社は、2024年9月30日までに、本規則が定める義務を履行する必要がある。なお、2023年3月31日以降に小会社でなくなった会社は、小会社でなくなった日の属する会計年度の末日から18か月以内に、本規則が定める義務を履行する必要がある。
(3) 義務の内容
全ての適用対象会社は、以下の①及び②を履行する義務を負う。
①自社の株券等の電子化を推進(facilitate)し、新たに株券等を発行するときは、電子化された形式で発行すること
②株券等の発行又は買戻し、ボーナス株式又は株主割当ての発行の募集を履行期限後に実施するときは、当該募集の前
に、自社の発起人、取締役及び主要経営者が保有する株券等を全て電子化すること
また、適用対象会社の株券等を保有する者は、以下の①及び②を履行する義務を負う。
①履行期限後に株券等を譲渡するときは、譲渡前に、譲渡する株券等を電子化すること
②履行期限後に株券等を引き受けるときは、引受前に、自身が保有する株券等を電子化すること
3.総括
株券等の電子化は、企業の株券等の管理コストを削減することが期待されるのみならず、株式の取引が電子化されることによって、取引日等の偽装が困難となるなど取引の透明性が高まることで、コーポレートガバナンスにもプラスの影響が生じると考えられる。
他方、株券等の電子化に際しては、外国の株主等もインドにおける証券口座の開設、納税者番号(Permanent Account Number)の取得、及び身元確認の履行が必要となるため、企業が電子化を前提とした運用を開始するには一定程度の時間及び費用を要する。日系企業を含む外国企業のインド現地法人は、本国又は第三国の企業の子会社である場合が多いため、上述2.(2)のとおり本規則の適用対象会社に該当する可能性が高い。そのため、インド現地法人を有する日系企業は、本規則の履行期限に間に合うよう、各種事務手続を進めることが望ましい。
以上
TMI総合法律事務所 インド・プラクティスグループ
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