1.はじめに
2026年3月23日、インド企業省(Ministry of Corporate Affairs, MCA)は、2013年会社法(Companies Act, 2013)及び2008年有限責任事業組合法(Limited Liability Partnership Act, 2008)を改正する2026年企業法改正案(Corporate Laws (Amendment) Bill, 2026。以下「本法案」という。)をインド連邦議会下院(Lok Sabha)に提出した。2026年7月1日現在、本法案は両院協議会(Joint Parliamentary Committee, JPC)に付託されている。
本法案は多数の条項を対象とした包括的な改正であるが、本号では、日系企業がインド国内に有する子会社及び合弁会社のコーポレート・ガバナンスの実務に直接影響し得る株主総会のバーチャル/ハイブリッド開催の恒久的法制化に向けた改正案を解説する。
2.改正案の背景
2013年会社法では、定時株主総会は物理的な開催が原則とされている。しかしながら、COVID-19のパンデミック以降、インド企業省は、通達ベースでビデオ会議その他の視聴覚手段による定時株主総会及び臨時株主総会の開催を時限的に許容してきた。
この点については、以下の記事を参照されたい。
・インド最新法令情報(2022年1月号)「ビデオ会議方式による株主総会等の特例の再延長」
上記措置は通達の更新を要する暫定的なものにとどまっており、法律自体に株主総会のバーチャル/ハイブリッド開催の根拠規定が設けられてこなかった。本法案は、この点について恒久的な法的枠組みを設けることで、パンデミック後の実務に対応するものである。
3.改正案の具体的内容
(1)定時株主総会の開催方式の多様化
本法案第32条は、2013年会社法第96条に第3項を追加し、以下の内容を規定するものである。
| 項目 | 内容 |
| 開催形態 | 定時株主総会の方式について、物理的開催若しくはビデオ会議その他の視聴覚手段による完全バーチャル開催、又は両者を併用したハイブリッド開催のいずれかを選択できる。 |
| 規則への委任 | 定時株主総会の開催の方式・条件等はインド連邦政府が規則で定める。 |
| 物理的開催の最低頻度 | 全ての会社は、3年に1回以上定時株主総会を物理的に開催しなければならない。 |
| 株主によるハイブリッド開催の請求権 | 2013年会社法第100条第2項に定める数の株主(総議決権の10%以上を保有する株主等)がハイブリッド開催を請求した場合、会社はハイブリッド方式で定時株主総会を開催しなければならない。 |
(2)臨時株主総会の開催方式の多様化
本法案第34条は、2013年会社法第100条に第7項を追加し、臨時株主総会についても物理的開催若しくは完全バーチャル開催又はハイブリッド開催を可能とする。また、定時株主総会と同様、2013年会社法第100条第2項に定める数の株主によるハイブリッド開催の請求権も認められる。
(3)バーチャル方式による臨時株主総会の招集通知期間の短縮
現行法では、株主総会の招集通知は21日前までに発出する必要がある。本法案第35条は、完全バーチャル方式で開催される臨時株主総会については、当該招集通知期間を7日前(又は規則で定める期間)に短縮する。これにより、緊急の決議事項に関する意思決定の迅速化が図られる。
4.日系企業への実務的な影響
本法案が成立・施行された場合、インド国内に子会社又は合弁会社を有する日系企業にとって、それらの子会社及び合弁会社における株主総会に関して、開催コストの削減、株主の関与強化といった実務上のメリットが見込まれる。
このように、本法案は、パンデミック期の暫定措置として普及したバーチャル/ハイブリッド方式による株主総会の仕組みを、恒久的法制度として2013年会社法に正式に取り込むものであり、インドにおけるコーポレート・ガバナンスの効率化に向けた大きな一歩といえる。
ただし、本法案は現在両院協議会にて審議中であり、最終的な内容は変更される可能性がある。そのため、インド国内に子会社若しくは合弁会社を有している又はそれらの設立を予定している日系企業においては、本法案の動向を注視しつつ、インド国内の子会社及び合弁会社における定款の改定及びバーチャル/ハイブリッド方式による株主総会に必要なインフラの整備について検討を開始することが望ましい。
以上
TMI総合法律事務所 インド・プラクティスグループ
平野正弥/奥村文彦
info.indiapractice@tmi.gr.jp
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