【入所】最高裁判所判事を退官された泉徳治弁護士を顧問として迎えました。
2009/03/02
当事務所では本年1月24日をもって最高裁判所判事を退官された泉徳治弁護士(東京弁護士会所属)を3月2日付で顧問として迎えました。
以下、泉徳治弁護士が最高裁判所において関与した事件の中で印象深く感じた事件に関する思い出を綴ったものをご紹介致します。
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私は、司法の役割は、(1)個々の国民の権利利益を擁護すること、(2)民主主義のシステムが正常な状態にあるかどうかを見守り、システムの中の障害物を取り除くこと、(3)多数決原理の民主政治の過程では取り残されがちな少数派の人々の権利を救済すること、と考えております。その意味で、下記の1、2の大法廷判決に関与できたことをうれしく思っております。
また、これまでの裁判所は、行政訴訟を提起することができる原告の範囲(原告適格)、行政訴訟の対象となる事件の範囲(処分性)を、とかく狭く解する傾向にあり、いわゆる門前払い判決が多いという批判を受けてきました。このような傾向に変更をもたらす下記の3、4、5の大法廷判決に関与できたことも、行政訴訟を担当することが比較的長かった私にとり、感慨深いことであります。
私が最高裁判事に就任するまで、法令が憲法違反であると判断した最高裁判決は6件にすぎませんでしたが、私が関与した大法廷は、2件の違憲判決(下記1、2)を行いました。また、判例変更も比較的めずらしいのですが、私が関与した大法廷は、3件の判例変更の判決(下記3、4のほか刑事1件)を行いました。
最高裁は、とかく判断が消極的であると批判されがちでしたが、近年では、最高裁が活発な議論を展開するようになった、最高裁が変わってきたと評されるようになり、そのことが最高裁判事時代の一番の思い出です。
以下、泉徳治弁護士が最高裁判所において関与した事件の中で印象深く感じた事件に関する思い出を綴ったものをご紹介致します。
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最高裁において関与した主要な裁判
私は、司法の役割は、(1)個々の国民の権利利益を擁護すること、(2)民主主義のシステムが正常な状態にあるかどうかを見守り、システムの中の障害物を取り除くこと、(3)多数決原理の民主政治の過程では取り残されがちな少数派の人々の権利を救済すること、と考えております。その意味で、下記の1、2の大法廷判決に関与できたことをうれしく思っております。
また、これまでの裁判所は、行政訴訟を提起することができる原告の範囲(原告適格)、行政訴訟の対象となる事件の範囲(処分性)を、とかく狭く解する傾向にあり、いわゆる門前払い判決が多いという批判を受けてきました。このような傾向に変更をもたらす下記の3、4、5の大法廷判決に関与できたことも、行政訴訟を担当することが比較的長かった私にとり、感慨深いことであります。
私が最高裁判事に就任するまで、法令が憲法違反であると判断した最高裁判決は6件にすぎませんでしたが、私が関与した大法廷は、2件の違憲判決(下記1、2)を行いました。また、判例変更も比較的めずらしいのですが、私が関与した大法廷は、3件の判例変更の判決(下記3、4のほか刑事1件)を行いました。
最高裁は、とかく判断が消極的であると批判されがちでしたが、近年では、最高裁が活発な議論を展開するようになった、最高裁が変わってきたと評されるようになり、そのことが最高裁判事時代の一番の思い出です。
- 公職選挙法の規定を違憲と判断した判決(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件、最高裁平成17年9月14日大法廷判決)
この大法廷判決は、公職選挙法の規定のうち、在外日本人に国政選挙における選挙権の行使を認める制度の対象となる選挙を当分の間衆参両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分は、憲法に違反すると判断した。 - 国籍法の規定を違憲と判断した判決(国籍確認請求事件、平成20年6月4日大法廷決)
この大法廷判決は、国籍法が、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子につき、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合に限り日本国籍の取得を認めていることにより国籍の取得に関する区別を生じさせていることは、憲法に違反すると判断した。 - 原告適格を拡大する判例変更をした判決(小田急線連続立体交差事業認可処分取消等請求事件、最高裁平成17年12月7日大法廷判決、主任裁判官として関与)
都市計画事業認可の取消訴訟を提起することができる原告の範囲について、これまでの判例は、事業地内に土地所有権等を有する者に限定していた。この大法廷判決は、事業地の周辺に居住する住民も原告適格を有するとして、判例変更を行った。 - 処分性を拡大する判例変更をした判決(行政処分取消請求事件、最高裁平成20年9月10日大法廷判決)
土地区画整理事業における都市計画事業計画決定が取消訴訟の対象となる行政処分に当たるかどうかについて、これまでの判例は、同決定はいまだ青写真にすぎないもので行政処分に当たらないと解していた。この大法廷判決は、同決定は取消訴訟の対象となる行政処分に当たるとして、判例変更を行った。 - 公法上の法律関係に関する確認の訴えが活用できることを明確に示した判決(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件、最高裁平成17年9月14日大法廷判決)(1と同じ判決)
今回の司法制度改革に伴う行政事件訴訟法の改正は、行政訴訟の活用を促す趣旨で、「公法上の法律関係に関する確認の訴え」が当事者訴訟の一つとして認められることを明確化した。上記大法廷判決は、その活用例を示したものであり、行政訴訟の範囲を実質的に拡大する意味において、今後に与える影響が大きいものと考えられる。