2026年10月2日付けで、商務省事業開発局(DBD)より、IEAT工業団地における事業実施に関するForeign Business Certificate(以下「FBC」といいます。)の取得手続きに関する新たなガイドライン(以下「新ガイドライン」といいます。)が発行されました。以下、その内容と解説を記載いたします。
新ガイドラインの内容
新ガイドラインによれば、タイの外資規制を定めるForeign Business Act, B.E. 2542 (1999)(以下「FBA」といいます。)第12条に基づき、Industrial Estate Authority of Thailand Actを根拠に工業又は輸出事業の運営許可(以下、「IEATライセンス」といいます。)を受けた「外国人」は、DBDに対して、下表記載の内容に従って、FBCの取得が申請可能とされます。
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区分 |
FBCの発行対象 |
例 |
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工業事業者 |
FBA別表2及び3に掲げる製造業 |
木彫品の製造(別表2第2章(2))、合板、ベニヤ板、チップボード、ハードボード(別表3(4))など |
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輸出事業者 |
海外での販売を目的とした製品の輸出プロセスの一部を構成するサービス業 |
輸出のための倉庫サービス、国際輸送管理サービスなど |
なお、FBA別表2又は3に掲げる事業を営む場合であって、かつ、上表のいずれの場合にも該当せずFBCを申請できない場合には、FBA第17条に基づき、Foreign Business License(外国人事業許可)を取得する必要があります。
解説
FBA上、IEATが管轄する工業団地内にてFBAに基づき禁止される事業を実施する場合には、その取得したIEATライセンスに基づき、FBAが管轄するDBDより別途FBCを取得することが必要であることが定められています(同法12条)(※)。
※なお、BOI Certificateに基づき取得するFBCについては本ガイドラインの適用対象ではありません。
この点、同法ではサービス業とみなされる受託製造業等の一部の例外を除き、製造業(製造した製品を販売する行為は当然に製造業に包含されると考えられております。以下同じです。)は原則として規制事業には該当しないため(注:タイ法務のプラクティス(第3回))、製造業のみを実施するため、Foreign Business License(以下「FBL」といいます。)やFBCは本来取得する必要はありません。そして、実務での運用として、同条に基づくFBCの取得とは、製造業とは別に実施するサービス業等のFBA上の規制事業を実施する場合に、取得しているIEATライセンスに基づくケース(※)が多くを占めていました。
※IEATライセンスのスコープにFBAの規制事業に該当する製造後の販売する付随する事業(例えば、設置、修理など)や受託製造業を包含した上で、当該IEATライセンスと同内容のFBCを取得するケースであり、DBDも当該運用をこれまで許容しておりました。なお、製造業とは別途独立した事業(例:卸売業・小売業)や関連性のない事業(例:賃貸業)については、そもそもIEATライセンスのスコープに含めることができず、FBC発行の対象外と整理されます。
ところが新ガイドラインに基づき、DBDは、①工業事業者が行うFBA別表2及び3に掲げる製造業及び②輸出事業者が行う海外での販売を目的として行われる輸出プロセスに関連するサービス業に限ってFBCを発行し、その他サービス業についてはFBLの取得が必要であるという方針を打ち出しました。
この方針により、これまではIEATライセンスのスコープに含むことによって、DBDからもFBCの付与を通して実施が許容されていた製造製品に関連して提供されるサービス(例:設置、保守、検査、コンサルティング、研修等)や受託製造業は、FBC発行の対象外となりました。
なお、新ガイドライン上、明確な記載はないものの、今後のFBC発行に向けて適用されるものであり、これまで発行されたFBCの内容を見直す趣旨ではないと考えられますが、既存FBCの変更が必要となった時に、DBDがどのように対応するのかを注視する必要があります。
以上まとめますと、新ガイドラインの方針により、これから進出する企業及び既に進出している企業の方々は以下に掲げる制約を受ける可能性が高いです。
- IEAT工業団地に所在する「外国人」は販売のための製造業以外を適法に実施するためには今後はFBLを別途取得せざるを得ない可能性が高いこと。
- 受託製造についてFBCを取得していない場合には、これまでの是正方法であったFBCの取得ではもはや対応できず、FBLを取得せざるを得ない可能性が高いこと。
コメント
製造業を実施するために多くの外国法人がIEAT工業団地に進出しておりますが、その大多数は単なる製造業のみなされず、付随するサービス業も実施しており、受託製造業の実施も散見されます。例えば、外国法人が、人件費が自国に比べて安価であるタイに製造拠点を置く目的で進出するということはよくある事例ですが、その場合本国の会社が指定した仕様に基づいてタイで単に製造させているという形態であることが多く、これはタイのFBA上では「受託製造」に該当します。
受託製造の実施に関して法令上必要な手当を行っていない事案は散見され、過去にはDBDが必要なライセンスを取得することなく受託製造を行っていた「外国人」を摘発した事例もありましたが、その法令上の対応策として、もしIEATライセンスを取得している法人であれば、当該IEATライセンスに基づくFBCの取得をこれまで推奨しておりました。しかしながら、新ガイドラインの方針により、FBCの取得では対応できません。
この点、新ガイドラインでも言及されるFBLを正面から取得することも考えられますが、その取得の予測可能性を図ることは難しく、何より取得までには長期間(半年~1年)かかります。したがって、リードタイムによるディール全体への影響や事業開始までのスケジュールの引き直し等、実務への影響も大きいのではないかと考えられ、新ガイドラインによるタイにおける外資規制の大きな転換の一つとなる可能性も否定できません。
今後もその実際の運用については引き続き注視していく必要があり、新ガイドラインのスコープの妥当性は再検証されるべき事柄であると考えます。