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【中国】【商標】国家知的産権局(CNIPA)による「『商標権侵害の判断基準』の理解と適用」の公表について
2022.09.22
はじめに
国家知的産権局は2020年6月15日に『商標権侵害の判断基準』を公表していますが、関連機関がより正確に同基準を理解し、適用することを目的として、国家知的産権局は2022年8月12日付にて「『商標権侵害の判断基準』の理解と適用」を公表しました)。
「『商標権侵害の判断基準』の理解と適用」の概要
『商標権侵害の判断基準』は全7頁、38の規定からなり、商標権侵害に関する商標法第七章 登録商標専用権の保護(第56条乃至70条)に関し、簡潔に記載したものとなります。
今回公表された「『商標権侵害の判断基準』の理解と適用」は98頁に及び、40もの事例に基づき『商標権侵害の判断基準』について具体的論点についても見解を示しております。
以下に数例の事案についてご紹介いたします。
【事例9】ではいわゆる小売役務に対する商標の使用が、第35類「他人のためのマーケティング」に関する商標登録を権利範囲に属するかについて判断が紹介されております。
本事例は第35類「他人のためのマーケティング」を指定役務とする登録商標“淘鲜达”の権利者である阿里巴巴集团控股有限公司(Alibaba Group Holding Limited)が、スーパーマーケットの店頭看板やインターネット上の広告において“淘鲜达”を使用する淘鲜达贸易有限公司に対する商標権侵害訴訟に関する事案となります。この点につき、第35類の「他人のためのマーケティング」とは、他人の商品又はサービスの販売のための助言、企画等に関する役務となる一方で、スーパーマーケットのビジネスモデルは多様かつ複雑としながらも、当該ビジネスモデルが卸売、小売のみ、すなわち販売主体として一般消費者に商品を販売している場合は他人のためのマーケティングに属さない。との基準に基づき、淘鲜达贸易有限公司サービスのビジネスモデルは卸売と小売のみと認定し商標法による調整の範囲外と認定し、最終的には反不正競争法に基づき当事者に2万元の罰金が科されています。
【事例10】では公安における商標模倣罪の判断として、商標の類否判断事例が紹介されています。
本事例は、第三者による「GXG FASHON」の使用(具体的な使用例は以下参照)が第25類の被服等を指定する商標登録10312535号の権利範囲に属するか(商標が類似するか)が論点とされ、被服に対する「FASHON」の識別力、並びに「GXG」を目立つ態様で使用している点などが考慮され第三者の使用商標は登録商標と類似とした事案となります。
【事例11】では色彩の組み合わせからなる商標権の侵害について判断された事例が紹介されています。
本事例は、上银科技股份有限公司名義の色彩の組み合わせからなる商標登録第1896112号 (第7類 ロボット[機械]他)の侵害事件について、願書に記載されたカラードと配置の記載に基づき、第三者の以下の第三者の使用について、上海市嘉定区市场监管局が、容易に混同を引き起こす可能性があると認定し、商標法第60条第2項*1の規定に基づき、同局が直ちに侵害行為を停止し、侵害品を没収し、1万人民元の罰金を科した事案となります。
また、「『商標権侵害の判断基準』の理解と適用」では商標権侵害の類型を規定した商標法第57条各項の解釈については多くの具体例を挙げて詳細に基準が示されています。
更に、インターネット上の商標の使用や電子商取引におけるプラットフォーマーの不作為による商標権侵害など、比較的新しい論点などにも解釈を与えており注目されます。
おわりに
中国における商標権侵害は未だ深刻な状況といえますが、中国企業により訴えられるケースも増加傾向にあるといえます。
法的な整備は進み、今回公表された「『商標権侵害の判断基準』の理解と適用」も総じて権利者保護に基づく内容と理解できます。中国における第三者の登録商標の不正使用などを発見した場合、あるいは中国企業から商標権侵害との警告を受けたような場合には、「『商標権侵害の判断基準』の理解と適用」は今後の戦略の策定に有用な材料になるといえます。
*1 商標法第60条第2項は工商行政管理部門の処理により、権利侵害行為の成立が認定された際の侵害行為の停止命令、並びに罰金について規定しています。
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