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イスラエルの法務(1)
2020.09.26
革新的な技術を生み出し続ける、中東のシリコンバレー、イスラエル。国民一人当たりのVC 投資額、R&D 投資額の対GDP 比率、人口当たりの研究者数等において世界トップを争うイスラエルの「いま」と「実務」。
近年、イスラエルスタートアップの資金調達総額は、最高額を更新し続けている。2019年には83億ドルに到達し、過去最高額だった2018年の64億ドルを大きく上回った。また、2020年においても、新型コロナウイルス感染症の影響にもかかわらず、イスラエルスタートアップは上半期だけで52.5億ドルを調達した、とされる。イスラエルスタートアップの勢いは、まだまだ拡大していくものと予想される。
イスラエル企業への投資実務
一方で、イスラエルの投資実務について実際にイメージが湧く方、というのはまだまだ少数派だろう。もっとも、筆者が2020年夏までテルアビブに滞在して得た感覚から言えば、イスラエルでの投資実務は、日本や米国での実務と比較して、格別に複雑、というわけでもない。また、イスラエル企業への投資に当局の許可が必要となるというような一般的な外資規制も存在しない。更に、イスラエル企業は米国の企業から資金調達することが多く、また米国で投資実務を経験した弁護士が多数いることもあり、その投資実務は、米国の実務がベースとなり、それを参考にしている部分が大きい。したがって、イスラエル特有の法的問題点も存在するが、基本的には、米国での投資経験のある方であれば、イスラエルの投資実務についても比較的容易に順応できるものと考えられる。
利用される書面
イスラエルの投資実務の特徴として、NVCAのモデルドキュメントのような雛型とされるものが存在しないことも相俟って、様々な形式の・内容の契約書を目にする機会があることが挙げられる。たとえば、米国のベンチャーファイナンスの実務では、①定款(Certificate of Incorporation)、②投資契約書(Stock Purchase Agreement)、③投資家の権利に関する契約書(Investors’ Rights Agreement)、④先買権および共同売却権に関する契約書(Right of First Refusal and Co-Sale Agreement)、⑤議決権行使に関する契約書(Voting Agreement)が典型的な「5点セット」として用いられるが、イスラエルにおいては、①定款及び②投資契約書のみで対応するケースが多いのは特徴と言えるだろう(ただし、もちろん、③Investors’ Rights Agreementも締結されるケースや、米国式の5点セットが準備されているケースもある。)。
念願の日本・イスラエル間の定期直行便の就航も決まっており、今後も益々、両国間の協業・交流が活発になっていくことが予想される。本ブログでは、イスラエルの「いま」と投資を含んだ実務について、定期的に紹介していきたい。
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