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【エネルギー&インフラストラクチャー関連ブログ】洋上風力発電に関する近時の動き
2021.01.27
洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会における洋上風力産業ビジョンの公表について
洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会は、再エネ海域利用法を通じた洋上風力発電の導入拡大等を目的として、これを官民が一体となる形で進めていくために設立された協議会であるが、その第2回の同協議会(以下「本協議会」という。)が2020年12月15日に開催された。この中で、「洋上風力産業ビジョン(第1次)」が公表され、政府は、年間100万kW程度の促進区域の区域指定を10年継続し、2030年までに1,000万kW、2040年までに浮体式も含む3,000万kW~4,500万kWの案件を形成することを導入目標とした。また、この中で2050年カーボンニュートラル達成に向けて、産業界からの投資を引き出すべく、2040年における導入目標が引き上げられ、また4,500万kW達成には、浮体式のコストが、技術開発や量産化を通じて、今後大幅に低減することが必要であることも指摘されている。
詳しい資料等については以下のリンクをご参照されたい。
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/yojo_furyoku/002.html
日本版セントラル方式の導入について
一般海域については、2019年4月1日に「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(以下「再エネ海域利用法」という。)が施行されることにより、一般海域における洋上風力発電の開発の段階で、政府主導による漁業関係者等の利害関係者の調整や風況や海底地質の調査データの提供が行われる制度が導入されている。一方で、初期段階の基礎調査や系統確保等は引き続き事業者が実施しており、地域によっては複数の事業者が同時に実施していることから、この点非効率であり、また、洋上風力発電事業の開発リスクも高いため、欧州の事例も参考にして、より政府が主導する形で洋上風力発電案件の形成を進めていくべきとの指摘が産業界より兼ねてからあった。本協議会において、当該問題を解決するために、初期段階から政府や自治体が関与し、①迅速かつ功利的な風況等の調査、及び②適時の系統確保等を行う仕組み(いわゆる「日本版セントラル方式」)の確立に向けて検討することとされている。
インフラ(系統・港湾)の整備について
本協議会では、上記「洋上風力産業ビジョン(第1次)」が公表された洋上風力発電の導入目標を実現するため、必要となる系統や港湾等のインフラ整備も計画的に進めていくとされてた。
系統については、洋上風力発電のポテンシャルを生かすための適地から大需要地への直流送電線の導入に向けた具体的な検討を開始するとし、また港湾については、風車の大型化傾向等を踏まえつつ、将来的な我が国の基地港湾に求められる機能の検討を進めること等とされている。
一般海域における海域占用に関する公募の状況
一般海域については、再エネ海域利用法が施行されたことにより、長期占用を行うための統一的ルールが整備され、現在各地で一般海域における洋上風力発電の計画が着々と進んでいるところであるが、長崎県五島市沖に続いて、秋田3区域、千葉県銚子沖の公募が2020年11月27日に開始している。
詳しくは以下のリンクをご参照されたい。
https://www.meti.go.jp/press/2020/11/20201127005/20201127005.html
また、洋上風力の有望区域として①青森県沖日本海(北側)、②青森県沖日本海(南側)、③秋田県八峰町・能代市沖、④長崎県西海市江島沖の4区域が2020年7月に新たに指定されているが、上記のうち②青森県沖日本海(南側)と③秋田県八峰町・能代市沖においては、協議会(②について第1回(2020年12月25日開催)、③については第1回(2020年11月17日)と第2回(2021年1月29日))がそれぞれ開催され、促進区域指定に向けた準備が進められている。
詳しくは以下のリンクをご参照されたい。
http://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/energy/enerugi/ow_nkaisouth_kyougikai01.html
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/53812
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/55227
環境影響評価法に基づく環境アセスメントの見直し
洋上風力発電を始めとする発電事業において必要とされる環境アセスメントについて、政府において本格的に見直しの検討が開始されている。
具体的には「再生可能エネルギーの適正な導入に向けた環境影響評価のあり方に関する検討会」が環境省と経産省によって設置され、2021年1月21日に第1回の検討会が開催され、今後風力発電の法アセス対象についての基準緩和等が検討されると考えられる。
詳しくは以下のリンクをご参照されたい。
https://www.env.go.jp/press/108960.html
「海洋再生可能エネルギー発電設備等取扱埠頭賃貸借契約書(案)」の公表
上記「一般海域における海域占用に関する公募の状況」にて記載の通り、再エネ海域利用法の施行による洋上風力発電事業に関する一般海域の利用ルールの整備等を受けて、今後一般海域における洋上風力発電事業の導入が促進される見込みである。これに伴い、洋上風力発電設備の重厚長大な資機材を扱うための埠頭を長期・安定的に利用できる制度を整備し、また広域に展開し、参入時期の異なる複数の発電事業者間の利用調整を行う必要がある。そのため一般海域における洋上風力発電に関し、必要な物資の輸送等のための基地港湾を政府が指定し、基地港湾内の埠頭その他の港湾施設を発電事業者に貸し付ける制度が創設されている(港湾法第2条の4及び第55条の2)。
かかる港湾施設を発電事業者に貸し付ける制度に関連する表題の契約書案が2020年12月27日付で公表されている。
詳しくは以下のリンクをご参照されたい。
https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk6_000068.html
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