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特許ブログ【海外情報】各国特許最新レポート
2022.06.07
特許に関し各国の注目すべき最新状況を発信致します。2022年5月の注目情報は以下の通りです。
米国(CAFC判決)
■ ARTHREX, INC., v. SMITH & NEPHEW, INC.(判決日:2022/5/27)
2022年5月27日付でCAFC(米国連邦巡回控訴裁判所)より、昨年の米国最高裁(Supreme Court of the United States)判決と関係する事件について判決が出されました。今回のCAFC判決では、ARTHREX社(原告)がIPRの結果に対して当時の米国特許庁長官によるReviewが拒絶された点に対し異議を申し立てておりましたが、当該異議は認められませんでした。
昨年の最高裁判決(UNITED STATES v. ARTHREX, INC. ET AL.;判決日2021年6月21日)は、米国特許庁におけるIPR(Inter Partes Review;特許を無効とする手続き)にて、審判部(Patent Trial and Appeal Board)が特許を無効と判断することが合衆国憲法第2章第2条第2項の任命条項に違反するか否か等を争点とした事件になります。法定意見では、現状の米国特許法においてPTABの決定に対し米国特許庁長官が再審理(reearing)を行うことができないことから、大統領が任命した者ではないInferior Officer(本事件ではPTAB)が、大統領に指名され上院の承認等を受けたPrincipal Officer(本件では米国特許庁長官)のReviewを受けずに行政上の決定を下すことは任命条項に違反すると判断されました。また、最高裁判決では、その瑕疵を治癒するために、PTABによる決定を米国特許庁長官がReviewできる期間を設けることが適切とし、事件を特許庁長官に差し戻しております。
今回のCAFC判決では、今年4月にKathi Vidal氏が米国特許庁長官に就任するまでの間、正式な米国特許庁長官が空席であり特許局長がその役務を代行していた点が問題となりました。具体的には、米国特許庁長官によるReviewが代行の特許庁局長に拒絶された点に関し、特許局長は大統領に任命等されたPrincipal Officerではないため、当該拒絶の決定が有効であるか否かが争点となりました。
しかし、本判決では代行の特許局長にも当時米国特許庁長官によるReviewを拒絶する権限があったとして原告の異議は認められませんでした。
上述の米国特許庁長官によるReviewに関するプロセスは現在暫定的なものとなりますが、今後法改正と併せて当該プロセスが整備されるものと予想されます。
■ ARTHREX, INC., v. SMITH & NEPHEW, INC.(今回のCAFC判決)
■ UNITED STATES v. ARTHREX, INC. ET AL.(最高裁判決)
■ Interim process for Director review: USPTO
塩基配列及びアミノ酸配列の作成に関するWIPO標準ST.26への移行
本年7月発行予定のPCT規則等の改正より、PCT国際出願において塩基配列又はアミノ酸配列を明細書等に含む場合には、新たに策定されたWIPO標準ST.26に準拠した配列表の提出が必要となります。これに伴い、2022年7月1日以降になされる出願に対し、USPTOをはじめ各国におきましてもST.26の規定に従ってシーケンスリストを提出することが要求されております。
■ PCT NEWSLETTER No. 05/2022 (May 2022)
■ Final Rules from USPTO
■ 塩基配列及びアミノ酸配列の作成に関するWIPO標準ST.26への移行について:JPO
弁理士 都野 真哉