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特許ブログ【海外情報】各国特許最新レポート
2022.07.12
特許に関し各国の注目すべき最新状況を発信致します。2022年6月の注目情報は以下の通りです。
米国特許商標庁(USPTO)
米国特許法101条(特許適格性)に関する動向
近年米国特許業界で多くの関係者の頭を悩ましている課題の一つとして米国特許法第101条(35 U.S.C. §101)における“特許適格性(Patent eligibility)”の問題があります。米国における特許適格性の問題は、2014年の米国連邦最高裁判決 Alice Corp. v. CLS Bank, In 事件以降も解決することはなく、米国特許庁商標庁におけるガイダンスの発行、新たなパイロットプログラム(期間限定2022/2/1~7/30)の導入など、多くの策が施行されております。しかし、2019年のAthena事件では大法廷再審理申立の棄却に際し各判事が特許適格性の問題に対して意見を表明するなど問題はさらに混迷を極めるものとなっております。
これに対し、2022年5月に、American Axle & Manufacturing (AAM) v. Neapco 事件(CAFC)に関し、米国最高裁判所の求めに対して訟務長官(Solicitor General)より意見書が提出されました。当該意見書によれば、特にAAM社特許のクレーム22が米国特許法第101条に規定される特許適格性が認められるか否かについて裁量上訴を認めるべきとの見解が示されました。これにより、渦中の米国特許法第101条に規定される特許適格性に関し、米国最高裁判所がAmerican Axle & Manufacturing v. Neapco 事件に対し裁量上訴を認め、自らの見解を示すことが期待されておりました。
しかし、そのような期待も空しく米国最高裁判所は2022年6月30日付の命令書にて本事件の裁量上訴を棄却しております。
この結果を受け、特許適格性問題の対応については、その期待の対象が、最高裁判所から議会や米国特許商標庁へと移っております。未だ米国特許法第101条に規定される特許適格性については混沌としており、各産業界においても特許適格性の適用についての意見は様々なものとなっております。
今後も米国における特許適格性の問題はしばらく続くものと思われます。
■ 米国連邦最高裁判決 Alice Corp. v. CLS Bank, In
■ USPTO subject-matter-eligibility
■ Deferred Subject Matter Eligibility Response (DSMER) pilot program
■ CAFC判決 ATHENA v. Mayo
■ CAFC判決 American Axle & Manufacturing (AAM) v. Neapco
■ 訟務長官(Solicitor General)からの意見書(BRIEF FOR THE UNITED STATES AS AMICUS CURIAE)
■ 米国最高裁判所による裁量上訴の棄却(2022/6/30)
Public Patent Application Information Retrieval (Public PAIR) の廃止について
米国特許商標庁は、2000年初頭よりユーザーに親しまれてきたPublic Patent Application Information Retrieval(Public PAIR;公開特許出願情報検索システム)を2022年7月31日をもって廃止し、2022年8月1日よりPatent Center systemに完全に入れ替える旨をアナウンスしました。
■ USPTO Modern, user-friendly Patent Center to fully replace legacy Public PAIR system this summer
■ Patent Center (公開特許出願情報検索システム)
台湾特許庁
2022年度版専利審査基準の改定
台湾特許庁にて専利審査基準の改定が2022年7月1日に施行されております。
主な改定内容は以下の通りです。
(1)特許出願及び実用新案出願の同日出願に対する審査上の取り扱い
実用新案出願について無効審決が確定していない場合において、審査中又は査定後(確定前)における特許出願の扱いについて追加されております。
(2)「除くクレーム」に関する補正・訂正
台湾特許庁においては新規性等の拒絶理由を解消するために先行文献に開示された事項を回避する消極的な限定事項を追加する補正、所謂「除くクレーム」の補正・訂正が認められております。今回の改定では、拒絶理由通知の発行前に自発補正にて消極的な限定事項を追加する場合において、除外しようとする先行技術を提出し理由を説明することが求められております。
(3)誤記の訂正の態様の追加
図面における符号等や、化学式・数式の誤りにつき誤記の訂正が認められる態様について追加されております。
(4)微生物寄託の証明書面について
微生物寄託の証明書面について、当該書面がブタペスト条約の締約国により承認された国際機関から発行されたものではない場合の取り扱い及び対応(生存証明を出願日から4カ月又は最先の優先日から16カ月以内に提出することが必要)、並びに、期間内に生存証明が提出されたなった場合の審査上の取り扱い(実体審査において拒絶理由の通知、及び、出願人に対する答弁の機会が必要)が盛り込まれております。
弁理士 都野 真哉