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再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会提言案の内容について
2022.08.23
再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会により、2022年7月28日付で「再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会提言(案)」(以下「本提言案」といいます。)が公表され(※1)、2022年7月30日より同年8月30日までの間、パブリックコメントに付されています(※2)。
再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会は、2050 年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーについて主力電源化を目指す一方で、安全面、防災面、景観や環境への影響、将来の廃棄等に対する地域の懸念が高まっている背景を受けて、再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関して検討するために設けられた検討会であり、経済産業省、農林水産省、国土交通省及び環境省が共同事務局となり、有識者や実務者等によって構成されています。
本提言案においては、再エネ特措法(※3)の認定を取得する事業における一般的な事業実施の流れについて、①土地開発前段階、②運転開始後・運転中段階、③廃止・廃棄段階の3段階の事業実施段階における論点を検討したうえで、方向性を取りまとめています(※4)。
具体的には、主に以下のような事項が提言として掲げられています。
1.太陽光発電の立地について
今後の太陽光発電設備の立地にあたっては、災害に対する地域の懸念が高い区域(抑制区域)と地域における合意形成の図られた区域(促進区域)のメリハリが必要であるとされ、事業者が事業計画立案の段階で確認することが適切な情報を提供することによって、適正な立地に再エネを誘導すること、中長期では更なるゾーニングなどの取組を検討することが考えられるとされています。
ゾーニングについては、かねてより改正地球温暖化対策推進法(改正温対法)に基づき再生可能エネルギーに基づく発電に関しての促進区域制度が存在しますが、本提言案においても促進区域が地域における合意形成を経て設定されることを踏まえて再エネ特措法に基づく認定手続を緩和するなど、何らかの促進区域へのインセンティブとなるような形での連携も考えるべきであるとも言及されています。
2.再エネ特措法上の認定申請と許認可取得
再エネ特措法において、現状は許認可取得について認定申請の条件とされておりませんが、森林法の林地開発許可対象区域や盛土規制法の規制区域等の立地場所に応じ、例えば関係法令の許認可取得を申請要件とし、許認可の取得がなされていない場合、再エネ特措法の認定や入札参加を認めないといった認定手続の強化を検討するとされています。
当該認定申請とは、FITのほかFIPも対象となっていると思われ、林地開発許可を含む許認可が全て取得されてからでないと認定申請が不可能となる可能性もあります。
一方で、本提言案では、林地開発許可対象となる基準の引下げについても言及されており、太陽光発電に係る林地開発許可基準に関する検討会の中間とりまとめ(※5)における現行1ha超の許可基準を0.5ha超に引き下げる案が言及されています。
3.電気事業法
電気事業法においても、工事計画届出や使用前自己確認結果の届出時に、現状関係法令の遵守状況の確認はなされておりませんが、工事計画届出や使用前自己確認結果の届出時に、関係法令の許認可等を行った者による工事等の完了確認を得ているかを確認するなど、対応強化について制度的措置も含め検討するとされています。
4.FIT売電収入・FIP交付金の留保
関係法令の違反の未然防止や違反状況の早期解消を促すため、関係法令の違反状態における売電収入(又はFIP 交付金の交付)を留保するなど、再エネ特措法において新たな仕組みを検討するとされています。
これまでは、関係法令の違反は、FITの認定取消やFIT価格下落などのペナルティーがFIT事業者に課されていたところ、認定取消やFIT価格下落に至らない段階でも売電収入やFIP交付金が留保される可能性があります。
5.再エネ特措法上の申請・事業譲渡の際の地域住民への説明等
本提言案においては、例えば再エネ特措法の申請にあたり、一定規模以上の発電設備の場合には、あらかじめ地域住民への説明会の開催等の地域への周知について義務化するなど、更なる対応について検討するとされております。これまでも再エネ特措法の事業計画策定ガイドラインや条例等に基づき地域住民への配慮は要請されてきていたところですが、仮に本提言案の通り再エネ特措法の申請にあたり、地域住民への説明会の開催が求められるとすれば、かなり早期の段階において地域住民への説明会を行う必要があることになります(※6)。
また、事業譲渡の変更認定にあたって地域との適切なコミュニケーションを促すために、例えば、再エネ特措法の変更申請にあたり、あらかじめ説明会等の開催を義務づける等の対応を検討するとされております。
事業譲渡時に改めて地域住民の説明会を開催する必要があることとなり、これまで行われてきたセカンダリー譲渡の際の手続負担に大きな影響を与える可能性もあります。
その他、(1)例えば関係法令等に違反している場合は再エネ特措法の変更申請を認定不可とする、(2)再エネ特措法に基づく認定事業者ではなく、関連する事業者が違反を犯す事例も指摘されており、例えば再エネ特措法の認定事業者が全体として責任を引き受けるなど、認定事業者に対してどこまでの責任を課していくかの整理も重要であると指摘されている点にも留意が必要です。
本提言案は、現在パブリックコメントに付されており、パブリックコメント終了後、正式案として公表され、本提言をベースとして法改正が検討されていくことになると思われます。再生可能エネルギーに従事される事業者にとっては、本提言案の内容は今後の事業進行に影響のあるところであり、本提言案の今後の検討については注目されるところです。
(※1)https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/saisei_kano_energy/007.html
(※2)https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620222018&Mode=0
(※3)「強靭かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第49号)による改正後の「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」(平成23年法律第108号)を意味します。
(※4)なお、本提言案は、再エネ特措法上のFIT及びFIP案件のみならず、コーポレートPPA等の非FIT及び非FIP案件についても言及されています(本提言案P19)。
(※5)https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/saisei_kano_energy/pdf/005_03_00.pdf
(※6)一方で、制度的対応の検討にあたり、住民や自治会など私人の同意を義務として求めることは、財産権との関係で慎重であるべきであるとされています。
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