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防衛関連ニュース(2023年11・12、2024年1月)
2024.06.24
防衛技術指針2023の更新(※1)
2023年12月28日、防衛省は、「防衛技術指針2023」の更新版を公表しました(※1)。これは、「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」及び「防衛力整備計画」の策定を受けて防衛技術基盤強化の方針を具体化するものであり、各種の取組を防衛省として一体的かつ強力に推進する際の指針となるものであるとのことです。また、当該方針を省外にも発信することで企業等の予見可能性を高めるとともに、防衛技術基盤強化についての共通認識を醸成し、技術的な連携を強力に進める基盤の構築を目指すとしています。
概要:
- 「我が国を守り抜くために必要な機能・装備の早期創製」(第1の柱)
- 「技術的優越の確保と先進的な能力の実現」(第2の柱)
詳細につきましては防衛装備庁の全文資料(https://www.mod.go.jp/atla/guideline2023/assets/pdf/technology_guideline2023_ja.pdf)または概要版資料(https://www.mod.go.jp/j/policy/defense/technology_guideline/pdf/technology_guideline_outline.pdf)をご確認ください。
※1:防衛装備庁「防衛技術指針2023―将来にわたり、技術で我が国を守りぬくために―」(2023年12月28日)
https://www.mod.go.jp/atla/guideline2023/
「経済安全保障に関する産業技術基盤強化アクションプラン」の公表(※2-1、2-2)
2023年10月31日、経産省は、「経済安全保障に関する産業技術基盤強化アクションプラン」を公表しました(※2-1)。
アクションプラン策定の背景としては、国際情勢が厳しさを増しており、経済安保に関する産業・技術基盤に影響を及ぼすような脅威やリスクが拡大している状況において、当該基盤保護のため、産業界自身による取組強化やリスク管理の円滑化のための官民の戦略的対話が欠かせないことや、世界のルール作りを主導しつつ、国力としての経済力を強化する取組について官民連携で推進する必要があることが挙げられています。
なお、例えば、経済同友会はこれに対して主に以下のような意見を述べています(※2-2)。
- 経済安全保障上の新しい脅威への素早い対応には官民の連携と対話が不可欠であるため、当該プランの作成・公表を評価する
- 日本の経済成長や安全保障等に大きく資する先端技術に対しては戦略的で継続的な支援を望む
- Small yard, high fenceの原則に則っているか、常に俯瞰し見直すべきである。頻繁な制度変更は予見性を低下させる懸念はあるが、過度な規制範囲の拡大は企業活動を縛り、経済成長を阻害し得る
アクションプランの詳細については、資料(https://www.meti.go.jp/press/2023/11/20231102002/20231102002-1.pdf)をご確認ください。
※2-1:経産省「『経済安全保障に係る産業・技術基盤強化アクションプラン』を取りまとめました」(2023年10月31日)
https://www.meti.go.jp/press/2023/11/20231102002/20231102002.html
※2-2:経済同友会「『経済安全保障に係る産業・技術基盤強化アクションプラン』への意見」(2023年12月4日)
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2023/231204t.html
【ウクライナ関連】米国による制裁:①国務省及び商務省による制裁(2023年11月2日)、②商務省によるEL追加(2023年12月6日)(※3-1~3-4)
① 国務省及び商務省による制裁(2023年11月2日)
2023年11月2日、米国政府は、ロシアによるウクライナ侵攻に関連する200以上の個人・事業体にさらなる制裁を加える旨発表しました(※3-1)。国務省は今回の制裁について、制裁逃れに関与し、ウクライナに対する戦争遂行能力拡大に加担している90以上の事業体及び個人に対して科すものであり、ロシアの将来のエネルギー能力も標的とし、ロシアが将来の収入を戦争につぎ込むための能力を制限することが目的であるとしました。同時に財務省は、ロシアが既存の制裁の回避のために利用している複数のネットワークに対してさらなる制裁を科し、同国の産業基盤を支える主要な製造業やその他の企業、金融機関を指定するとのことです。さらに商務省においても、ロシアによる無人航空機(UAV)の調達や開発等に関与することで軍事支援を行ったとして、13の事業体をエンティティ-・リスト(EL)に追加しました(※3-2)。
② 商務省によるEL追加(2023年12月6日)
2023年12月6日、商務省は、中露イランが関与する42事業体をELに追加したと発表しました(※3-3)。
上記のうち、i)11の事業体は、イラン及びロシアが共同で無人航空機(UAV)生産施設の開発・建設を行っているアラブガ経済特区(※3-4)での取組に直接関与していること、ii)2事業体は、アビオニクスやミサイル、UAV、軍事用レーダー等を含む軍事用途で重要度の高い米国製電子部品を入手・転用する違法な取組に関与したこと、iii)13事業体は、ロシアの軍事エンドユーザーないしは米国財務省外国資産管理局(OFAC)によって管理される制裁対象として指定されている事業体を含む、ELに掲載されている事業体との取引に関与していること、iv)残りの16事業体については、ロシアの関係者に代わって米国製電子部品及び航空電子部品を取得・転用したことに関連する2件の商務省産業安全保障局(BIS)の執行活動に基づいたものであること、をEL追加の理由として挙げました。
※3-1:U.S. DEPARTMENT of STATE ”Taking Additional Sweeping Measures Against Russia”(2023年11月2日)
https://www.state.gov/taking-additional-sweeping-measures-against-russia-2/
※3-2:Bureau of Industry and Security “Commerce Adds 13 Entities To Entity List For Aiding Russia’s Illegal War In Ukraine”(2023年11月2日)
https://www.bis.gov/press-release/commerce-adds-13-entities-entity-list-aiding-russias-illegal-war-ukraine
※3-3:Bureau of Industry and Security ”Commerce adds 42 entities to the entity list for supporting Russia’s military, including co-production of drones with Iran”(2023年12月6日)
https://www.bis.gov/press-release/commerce-adds-42-entities-entity-list-supporting-russias-military-including-co-0
※3-4:テレ朝NEWS「米ホワイトハウス ロシアがイランの協力得て無人機工場を建設との分析発表」(2023年6月10日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000302826.html
バイデン政権、BAEシステムズの半導体製造工場に約3500万ドルの拠出を発表(※4)
2023年12月11日、米国商務省は、英国企業BAEシステムズの一事業部門であるBAEシステムズ・エレクトロニック・システムズとの間で、ニューハンプシャー州ナシュアにある成熟ノード半導体(レガシー半導体)の製造工場である同社のマイクロエレクトロニクスセンター(Microelectronics Center)の近代化支援のため、CHIPS法に基づき約3500万ドルを拠出する内容の、拘束力のない条件に関する予備的覚書に調印したと発表しました(※4)。このプロジェクトは、経年劣化した工具を交換し、F-35戦闘機プログラムを含む重要な防衛プログラムに必要な半導体の生産量を4倍に増産するものであるとのことです。
※4:U.S. Department of Commerce “Biden-Harris Administration and BAE Systems, Inc., Announce CHIPS Preliminary Terms to Support Critical U.S. National Security Project in Nashua, New Hampshire” (2023年12月11日)
https://www.commerce.gov/news/press-releases/2023/12/biden-harris-administration-and-bae-systems-inc-announce-chips
【注目記事】👉米国輸出管理規則(EAR)に基づく2023年執行実績の公表(※5-1、5-2)
2024年1月2日、米国の商務省産業安全保障局(BIS)は2023年の輸出管理規則(EAR)に基づく執行実績を公表しました(※5-1)。
具体的には、BISが昨年に司法省(DOJ)の国家安全保障局と連携して創設した「革新的技術ストライクフォース」(Disruptive Technology Strike Force)(※5-2)による、輸出管理違反等を理由とした刑事訴追等のほか、米記憶装置大手シーゲイトが数百万台ものHDDを中国の華為技術(ファーウェイ)向けに出荷したことによる3億ドルの制裁や、輸出管理違反に関する自主開示、他者の違反に関する開示を促すための政策方針の明確化、省庁間や学術界、産業界、外国政府との連携強化、反ボイコット法の執行強化などについても実績として挙げています。
※5-1:JETRO「米商務省、2023年の輸出管理規則に基づく執行実績を発表(米国)」(2024年1月18日)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/01/5b184f097bec16a1.html
※5-2:U.S. Department of Justice “Justice and Commerce Departments Announce Creation of Disruptive Technology Strike Force”(2023年2月16日)
https://www.justice.gov/opa/pr/justice-and-commerce-departments-announce-creation-disruptive-technology-strike-force
【注目記事】👉EAR違反の自主開示奨励のための方針改定の発表(※6)
2024年1月16日、米国の商務省産業安全保障局(BIS)は、EAR違反に関する自主的な開示(VSD)を奨励するため方針を改定すると発表しました(※6)。これは、VSDプログラムをより効率的かつ効果的にし、輸出事業者がより自主的に開示しやすくすることを目的とするものです。今回改定された主なポイントは、次のとおりです。
- 自主開示に関する資料提出は、電子メールでの提出を強く奨励する。
- 軽微な違反を開示する者に対して、簡略化した説明資料の提出を認めるファストトラックを適用する。
- 軽微または技術的な違反の開示は、四半期ごとにまとめての提出を認める。
- 違反が確認されている品目の保管、使用等については特別許可を申請でき、その審査を迅速に行う。
- 違法に輸出された品目の米国への再輸出についても特別許可が推定される。
※6:JETRO「米商務省、輸出管理規則違反の自主開示奨励のための方針改定を発表」(2024年1月25日) https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/01/ae8a6ac78d5f403e.html
米国、成熟ノード半導体の使用における調査を導入(※7)
2024年1月18日、米国の商務省産業安全保障局(BIS)は、米国の国家安全保障及び重要インフラを支えるサプライチェーンにおける成熟ノード半導体(レガシー半導体)の使用に関する包括的な調査の導入を実施すると発表しました(※7)。
今回の調査は、2023年12月に発表された、米国の国防を支えるマイクロエレクトロニクス産業基盤の能力を調査した米国議会の報告書の調査結果を受けて商務長官が要請したもので、調査の目的は、レガシー半導体としても知られる成熟ノード半導体を米国企業がどのように調達しているのかを明らかにすることにあるとしています。また、この調査は、半導体サプライチェーンの強靭化、レガシー半導体生産の公平な競争条件の促進及び国家安全保障に係るチャイナリスクを軽減するための米国の政策に役立てるとのことです。
※7:U.S. Department of Commerce “BIS DEPLOYS ASSESSMENT ON THE USE OF MATURE-NODE CHIPS”(2024年1月18日)
https://www.bis.doc.gov/index.php/documents/about-bis/newsroom/press-releases/3437-2024-01-18-bis-press-release-legacy-chip-survey-final/file
TMI防衛・経済安全保障プラクティスグループ
防衛関連ニュース担当
弁護士/白石和泰・山田怜央・張壮壮・牧昂平
法務(パラリーガル)/松本ティモスィー俊樹
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