ブログ
イスラエルの法務(2)
2020.10.07
「グローバル・プラクティス」内のニュースでも述べたとおり、2020年9月15日、アブラハム合意が成立した。
UAEには、インフラやスマートシティ関連で多くの日本企業が進出しているので、そうした企業が、益々イスラエル企業のテクノロジーをビジネスに活用していこうとすることが考えられる状況である。実際、今回のアブラハム合意の成立(国交正常化)を受けて、イスラエルでの拠点開設を検討し始めた日本企業が複数存在する。
今回は、そのようにイスラエルでの「拠点」を設ける方法について検討する。
イスラエルに拠点を設ける方法としては、主に、
①事務所(登録なし)を置いて限られた範囲内で活動する方法(駐在員事務所/ Rep Office)、
②外国法人の現地事務所として登録した上で活動する方法(支店/ Branch Office)、及び
③現地法人として活動する方法(子会社/ Subsidiary)
が考えられる。
この中で、イスラエルで法的事業体として認められているのは②支店、③現地子会社であり、①駐在員事務所は法的事業体ではない。
日系企業がイスラエルに拠点を設けるにあたり、①駐在員事務所の形態を選択する最も大きな理由は、「事業の遂行にとって準備的・補助的な」活動しか行っておらず「恒久的施設」(Permanent Establishment)に該当しないとして、イスラエルで租税を課されないようにすることである。しかし、近年、イスラエル税務当局は恒久的施設の概念に関してより拡大的な判断をするようになり、イスラエルにおいて特定の活動を行っている外国企業に対して積極的に恒久的施設の認定を行う傾向にある点には留意する必要があるだろう。
また、多くのイスラエルの企業は、研究開発及び技術イノベーション奨励法(R&D法)に基づいて、イノベーション庁(IIA)が提供する補助金(IIA補助金)を受領しているところ、IIA補助金で研究開発を行った企業は、様々な制限や義務が課されていることにも留意が必要である。
たとえば、IIA補助金を利用して開発されたノウハウ(対象ノウハウ)を非イスラエル居住者に移転する場合には、IIAからの事前許可及び移転料の支払いが義務付けられている。現時点までにIIAが対象ノウハウの移転を拒否した例は仄聞しないが、移転料の上限額はIIA補助金額の6倍(及び利息)にも及ぶため、日系企業がイスラエル企業のIP等を移転することを検討している場合には留意する必要がある。なお、IIAは、「ノウハウ」の定義を単なる「知識」や「知的財産」よりも広く捉えており、ソースコード等、技術要素は基本的に全て含まれるものと整理している。
紙面の関係で詳細は別の機会に譲るが、上記の法的問題への対応については、様々な実務的な対応があるので、個別具体的な事情に基づいて専門家に相談すべきである。
今回のイスラエル及びUAEの国交正常化を受けて、今後、益々、日本、イスラエル、UAE間のビジネスが発展していくことを期待する。
Member
PROFILE