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【エネルギー&インフラストラクチャー関連ブログ】再エネ特措法施行規則の一部改正について(1)
2020.12.22
再エネ特措法施行規則の一部を改正する省令の公布について
強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律(以下「エネルギー強靭化法」という。)が2020年6月5日付で参議院において可決され、成立した。同法は、旧再エネ特措法の改正を含み、施行時期は2022年4月1日とされている。
エネルギー強靭化法の成立に伴い、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(旧再エネ特措法)は、「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」(以下「再エネ促進法」という。)という名称に改正される。
再エネ促進法においては、FIT認定案件のうち長期運転開始されていない案件については、失効期限を設けてそれを超えて運転開始できない場合には、FIT認定を失効させる制度(以下「本失効制度」という。)が新設された。本失効制度において、失効事由については、「第9条第4項の認定を受けた日から起算して再生可能エネルギー発電設備の区分等ごとに経済産業省令で定める期間内に認定計画に係る再生可能エネルギー発電事業を開始しなかったとき。」(再エネ促進法第14条第2号)とだけ規定されており、失効事由の詳細は省令に委ねられている。
本失効制度の省令である電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(令和2年経済産業省令第85号)(以下「本省令」といい、本省令による改正後の施行規則を「改正本施行規則」という。)が2020年12月1日付で公布された。
本失効制度の基本的な設計
運転開始期限の1年後の時点(再エネ促進法施行時点(2022年4月1日)で既に運転開始期限を経過している案件については再エネ促進法施行日の1年後の時点)の案件の進捗状況に応じてよって、異なる認定失効期間が設定されている(経産省8月31日資料P8・本省令案概要P1からP6)。
具体的な失効期間等は対象となる再生可能エネルギー発電設備の区分に応じて異なっているが、事業用太陽光発電設備については以下の条件で失効することとされている。
(1)2022年4月1日時点で運転開始期限日を経過している太陽光発電案件(改正本施行規則附則第2条第1項)
①原則
(i)2023年3月31日までに、系統連系工事着工申込書が受領されていない場合
失効期限:2023年3月31日
(ii)2023年3月31日までに、系統連系工事着工申込書が受領されている場合
失効期限:2025年3月31日
(iii)2MW以上の太陽光発電案件で、2023年3月31日までに、系統連系工事着工申込書が受領され、かつ(1)電気事業法に基づく工事計画届出が不備なく受領され、又は(2)電気事業法第46条の14の規定に基づく準備書に対する経済産業大臣の勧告若しくは勧告をする必要のないこと若しくは勧告までの期間延長の通知がなされたことを経済産業大臣が確認した場合
失効期限:2042年3月31日
②例外(改正本施行規則附則第2条第2項)
みなし認定事業者であって、かつ、2016年7月31日以前に接続契約が締結された太陽光発電案件において、2021年4月1日から2023年3月31日までの間に系統連系工事着工申込書が受領された場合の失効期限は以下の通りとなる。
失効期限:系統連系工事着工申込書が受領された日+4年
但し、2MW以上の案件において、2021年4月1日から2023年3月31日までの間に系統連系工事着工申込書の提出がなされ、かつ(1)電気事業法に基づく工事計画届出が不備なく受領され、又は(2)電気事業法第46条の14の規定に基づく準備書に対する経済産業大臣の勧告若しくは勧告をする必要のないこと若しくは勧告までの期間延長の通知がなされたことを経済産業大臣が確認した場合
失効期限:系統連系工事着工申込書が受領された日+21年
(2)再エネ促進法施行日において、運転開始期限が到来していない太陽光発電案件(改正本施行規則第13条の2第1項第1号)
①認定日から4年(認定申請の際現に環境影響評価法に基づく環境アセスメント(以下「法アセス」という。)を行っている場合には6年)後の日までに系統連系工事着工申込書が受領されていない場合
失効期限:認定を受けた日から起算して4年(認定申請の際現に法アセスを行っている案件については、6年)
②認定日から4年(認定申請の際現に法アセスを行っている場合には6年)後の日までに系統連系工事着工申込書が受領されている場合
失効期限:認定を受けた日から起算して6年(認定申請の際現に法アセスを行っている案件については、8年)
③2MW以上の案件において、認定日から4年後の日までに系統連系工事着工申込書が受領され、かつ、開発工事への準備・着手が公的手続きによって確認された場合
失効期限:認定を受けた日から起算して23年(認定申請の際現に法アセスを行っている案件については、25年)
(3)系統側の都合で連系開始日が遅れた場合の対応
上記(1)(2)のいずれの場合についても、系統連系工事着工申込書が受領された後、系統連系工事の事情によって接続予定日が遅延した場合には、当該遅延した期間を失効期限に追加することとされている(改正本施行規則第13条の2第3項)。
(4)本失効制度についてのポイント
本失効制度については以下の点が重要であると考えられる。
①再エネ促進法施行時点でFIT認定案件の運転開始期限が到来しているかどうかによって区別・整理して検討する。
②運開期限の1年後の時点の進捗状況で適用判断する。
③系統連系工事着工申込がなされているかどうかによって区別する。
④工事計画届出が不備無く受領された場合又は環境影響評価書の確定通知を受けている場合で区別する。
なお、本省令については、2020年9月付電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等の概要(以下「本省令案概要」という。)が示されたうえで、2020年9月7日付でパブリックコメント手続に付された。2020年11月13日付で当該パブリックコメントの結果(以下「本パブリックコメント結果」という。)が公表されているが、本パブリックコメント結果において既認定の太陽光発電事業に関連して以下の点が言及されている。
No. |
概要 |
11 |
失効事由の要件のうち「開発工事への準備・着手が公的手続きによって確認された場合」については、上記のとおり経済産業大臣に別途進捗確認申請書の提出を行う必要があるところ、経済産業大臣が確認できた場合には、事業者に対する通知が行われる(改正本施行規則第13条の2第2項参照)。 |
18 |
2012年度~2014年度に設備認定を取得し、2016年8月1日以降に接続契約を締結した案件(いわゆる3年ルール適用案件)については、別途系統連系工事着工申込書の提出や工事計画届出の提出が必要となるが、2023年3月31日までに運転開始に至るのであれば事業者の判断により、系統連系工事着工申込書の提出や工事計画届出の提出を行わないとの判断を行うことも許容される。 |
22 |
本失効制度上に関連して言及される系統連系⼯事着⼯申込みの提出条件については、以下の3つとなり、環境影響評価法及び条例に基づく環境影響評価の評価書の公告等は含まないこととされた。 ・設置場所の使用権原の確保。 ・設置場所についての、農振法の遵守⼜は農地法上の許可又は届出等[1]の履践。 ・森林法の林地開発許可の取得。 |
26 |
事業者が⼀般送配電事業者に対して系統連系⼯事着⼯申込みを⾏い、これが受領されている場合には、改めて⼀般送配電事業者等に対して 系統連系⼯事着⼯申込みを⾏う必要がないことが確認されている。 |
33 |
失効制度との関係では、系統連系工事着工申込書の提出後に事業計画が変更された場合であっても系統連系工事着工申込書の再提出は求められないものの、系統連系工事着工申込書が必要な要件を満たしていないことが事後的に判明した場合には、失効となる可能性がある。 |
39 |
本失効制度に関連して言及される環境影響評価については法アセスを意味し、条例アセスは含まれないことが確認された。 |
48 |
工事計画届出の提出後、工事計画届出の軽微な変更による再提出があったとしても失効することにはならないものの、地番の追加や発電設備の設計の大幅な変更などFIT法の事業計画の変更にまで及ぶような場合については、失効リスクを取り除くとした決定を取消す可能性がある。 |
82 |
電源接続案件募集プロセス案件にも系統連系⼯事着⼯申込手続が適用されることが確認されている。 |
92 |
系統連系⼯事着⼯申込みの受領後、送配電事業者が指定する連系開始予定⽇が系統連系⼯事の事情により遅れが⽣じた場合には、当該遅延した期間を失効期間に加えることとするとする点については経過措置にも適⽤されることが確認された(改正本施行規則第13条の2第3項参照)。 |
93 |
2017年4⽉1⽇時点で⼿続中の「電源接続案件募集プロセス」に参加している案件については、プロセスが終了した⽇の翌⽇から起算して6ヶ⽉間のうちに、接続契約を⾏い、その同意が得られた⽇に法第9条第3項の認定を受けたものとみなされ、そのみなし認定⽇から運転開始期間の起算点となることから、失効期間についても、みなし認定がなされた⽇を起算点とするとする点については経過措置にも適⽤されることが確認された(改正本施行規則附則第2条第3項参照)。 |
[1] 本パブリックコメント結果を踏まえて、農地法第4条第1項若しくは第5条1項の許可が条件に追加されている。
2016年度太陽光未稼働案件への対応について
2018年12月5日に経済産業省により公表されたFIT制度改正によって、未稼働の太陽光発電設備案件に対する未稼働対策が設定された。当該未稼働対策は、3年ルールが適用される太陽光発電案件等、過去に運転開始期限が設定されている未稼働太陽光発電案件以外に主として適用される対策であり、当該未稼働太陽光発電案件については系統連系工事着工申込を所定の期限までに行う必要があるとされた。当該所定の期限までに系統連系工事着工申込を行わない場合には、一定程度調達価格が下落することとされ、また運転開始期限も併せて設定され、これまで2015年度以前にFIT認定を受けた一定の未稼働太陽光発電案件について当該未稼働対策が適用されていた。今般、2016年度FIT認定案件についても、当該未稼働対策が適用されることとなり、現在の調達価格を維持するためには2021年3月31日までに系統連系工事着工申込書が不備なく受領されなければならず(2MW以上の太陽光発電案件については系統連系工事着工申込の提出期限は2021年2月末日を目途とし、2MW未満の太陽光発電案件については系統連系工事着工申込の提出期限は2021年1月末日を目途とされている。)、また当該案件については2022年3月31日の運転開始期限が付されることとなる。
なお、2016年度太陽光未稼働案件を含め、未稼働案件対策が適用される太陽光案件の系統連系工事着工申込の手続期限等は以下のとおりである。
当初認定日 |
事業規模 |
提出期限 |
受領期限 |
運転開始期限 |
2015/3/31まで |
2MW未満 |
2019/2/1 |
2019/3/31 |
2020/3031 |
2MW以上 |
2019/8/30 |
2019/9/30 |
2020/9/30 |
|
条例アセス対象 |
2020/2/28 |
2020/3/31 |
2020/12/31 |
|
2016/3/31まで |
2MW未満 |
2020/1/31 |
2020/3/31 |
2021/3/31 |
2MW以上 |
2020/2/28 |
|||
2017/3/31まで |
2MW未満 |
2021/1/29 |
2021/3/31 |
2022/3/31 |
2MW以上 |
2021/2/26 |
今後の再生可能エネルギー関連の制度改正についても、随時アップデートしていく予定である。
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