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【04/07追記】 遠隔教育への緊急対応で「授業目的公衆送信補償金制度」に係る著作権法施行規則改正案、4月中に制度施行へ
2020.04.02
<2020年4月1日公表>
◆《文化庁》「著作権法施行規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集の実施について
◆《電子政府の総合窓口》「著作権法施行規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集の実施について
※ 意見募集期間経過後は「意見募集終了案件」「結果公示案件」をご参照ください。
<2018年5月25日公表(改正法公布時)>
◆《文化庁》著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)について
<なお、2020年4月6日公表>
◆《一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)》2020年度の特例として「授業目的公衆送信補償金制度」施行のための補償金の「無償」による認可申請を決定
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柴野相雄弁護士の一言コメント
平成30年の著作権法改正前は、教育目的による著作物の公衆送信での利用は、いわゆる遠隔合同授業に限って認めていましたが、改正により、ICT活用の観点から、遠隔合同授業に限らない公衆送信を認めることとなった一方で、新たに無許諾利用が認められることとなった公衆送信については、補償金の支払いを義務付けることとなりました。今回のパブコメ募集は、補償金の徴収・分配を担当する指定管理団体が当該補償金のうち一定の額を著作権の保護等の一定の事業に支出すべきことを定めた条文に基づき、当該額を補償金の2割とすることに関するものとなります。新型コロナウイルス感染症の流行とオンライン遠隔授業等のニーズに緊急的に対応するためのものですので、令和3年度以降、改めて割合を定めることを想定しています。なお、4月6日には、指定管理団体(SARTRAS)が、2020年度に限った特例として、徴収する補償金を「無償」として文化庁長官に認可申請する旨のプレスリリースがされておりますので、こちらも併せてご確認ください。
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文化庁著作権課は4月1日、「著作権法施行規則の一部を改正する省令案」を公表し、4月10日までの意見募集を開始しました。著作権法の平成30年改正により創設された「授業目的公衆送信補償金制度」に関する改正案で、著作権課では同制度の施行期日について「今般の新型コロナウイルス感染症の流行に伴う遠隔教育等のニーズに緊急的に対応するため」とし、本年4月下旬ころを予定しています。
著作権法の改正(平成30年法律第30号による)では、1)デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定、2)教育の情報化に対応した権利制限規定、3)障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定、4)アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定について各々整備が図られたところです。原則として平成31(2019)年1月1日に施行されましたが、上記2の改正については公布日(平成30年5月25日)より3年内の政令指定日から施行するものとされました。
この改正では、たとえば学校の授業や予習・復習にあたって、教師が他人の著作物を用いて作成した教材をネットワークで生徒の端末に送信する際の著作権処理の取扱いが簡便化されました。ア)現在は著作物ごとに利用の都度、権利者の許諾と使用料の支払いが必要となるところ、イ)改正後は文化庁長官が指定する補償金徴収分配団体に一定の補償金を支払うことにより、権利者の許諾なくして適法に利用できるようになります(授業目的公衆送信補償金制度、改正後の著作権法35条・104条の11等)。
今般の省令改正案は、この制度の施行に先立ち、補償金徴収分配団体が著作物の保護に関する事業や著作物の創作の振興・普及に資する事業など、いわゆる共通目的事業に支出すべき額の算出にあたって省令で定める割合を授業目的公衆送信補償金の総額の「2割」と定めようとするものです(著作権法104条の15、平成30年政令第360号による改正後の著作権法施行令57条の11参照)。