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業績悪化等に伴う賃金制度や評価制度の見直しにおける留意点
2020.09.08
TMI総合法律事務所では、2020年初頭から、新型コロナウイルス感染症への対応を分野ごとにまとめたシリーズ【コロナウイルス対応Q&A】を公表して参りました。また、昨今においては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大だけでなく、その予防策としての新しい生活様式が、社会の様々な部分に変化を及ぼしており、企業法務の分野においても同様です。
そこで、こうした変化にいち早く対応し、クライアントの皆様のために最良のリーガルサービスを提供すべく、各分野の専門家を中心に、企業法務の分野において主に問題となるテーマの一部をQ&A方式でまとめさせて頂きましたので、是非ご活用いただければ幸いです。
【Q】
業績が悪化したため、賃金制度を見直そうと思っています。どのような点に留意すべきですか。
【A】
賃金制度の見直しは、通常、就業規則の変更により行います。賃金引下げのための変更はいわゆる不利益変更にあたるため、使用者が一方的に行うことは許されず(労働契約法第9条)、各労働者との個別合意によるのが原則です(同法第8条)。なお、不利益変更でも「合理的なものである」場合は、労働者との合意なくして有効に賃金の引下げを行うことができます(同法第10条)。但し、COVID-19による業績悪化は合理性を肯定する事情の一つとなり得るとしても、裁判実務上、合理性の有無は厳しく審査されますので要注意です。
【Q】
リモートワークや時差出勤の導入により、仕事ぶりが変化したため、評価制度も見直したいと考えています。どのような点に留意すべきですか。
【A】
評価制度も「人事考課規程」等として就業規則の一部として定められていることが多く、この場合は、その見直しも、就業規則の変更により行うことになります。評価(人事考課)は、昇格・昇進、定期昇給、賞与の決定に大きな影響を有します。労働者との個別合意なくして変更する場合で、不利益変更と評価される可能性があるときには特に、変更が「合理的なものである」(同法第10条)内容にする必要があります。