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従業員の体調データの収集と保護の問題
2020.09.08
TMI総合法律事務所では、2020年初頭から、新型コロナウイルス感染症への対応を分野ごとにまとめたシリーズ【コロナウイルス対応Q&A】を公表して参りました。また、昨今においては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大だけでなく、その予防策としての新しい生活様式が、社会の様々な部分に変化を及ぼしており、企業法務の分野においても同様です。
そこで、こうした変化にいち早く対応し、クライアントの皆様のために最良のリーガルサービスを提供すべく、各分野の専門家を中心に、企業法務の分野において主に問題となるテーマの一部をQ&A方式でまとめさせて頂きましたので、是非ご活用いただければ幸いです。
【Q】
COVID-19の感染が確認された従業員に感染した旨を報告させ、感染情報の処理を外部に委託しつつ、感染情報を社内で共有することとしました。どのような点に留意すべきでしょうか。
【A】
従業員本人に対し、社内で共有する利用目的で感染情報を取得し、その処理を外部へ委託することを明示して、同意を得た上で取得することが適切です。
感染情報は個人情報保護法上の要配慮個人情報ですので、取得にあたり事前に従業員本人の同意を得る必要があります(同法第17条第2項)。また、個人情報の取得に際しては、その利用目的を本人に通知又は公表する必要があります(同法第18条第1項)。
他方、個人情報の取扱いの委託に伴う外部への提供について同意取得は不要です(同法第23条)。しかし、個人情報保護法上問題がないとしても、従業員に対するプライバシー権侵害の不法行為にあたるおそれがないとはいえません(民法第709条)。
そのため、企業としては、社内共有の利用目的で感染情報を取得すること、その処理を外部へ委託することを明確に示した上で、従業員本人から同意を取得しておくことが、適切な対応といえるでしょう。