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【宇宙ブログ】宇宙港
2021.01.05
新年あけましておめでとうございます。今年は全ての産業に関わる皆さまが全速力で走り切れるような、素晴らしい年になるよう心より祈りつつ、今日は少し地上(空港と宇宙の関係)に関する話をしたいと思います。
2020年12月18日、国土交通省は、広島国際空港に運営権を設定し、実施契約を締結しました[1]。広島国際空港は、2021年2月頃にビル施設等事業を開始し、同年7月1日から空港運営事業を開始するスケジュールを予定しているということです[2]。
これは、民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律(通称「民活空港運営法」)に基づく、いわゆる空港の民営化事例の1つです。
現在、国内各地の空港についていくつか民営化の検討が進められていますが、このような動きは宇宙ビジネスとも関連しています。
宇宙港(Space Port)とは?
皆さんは、宇宙港(Space Port)という言葉をご存知でしょうか。
現在、アメリカを中心とした世界の各国で、有人飛行用のロケットが開発されています。そして、将来的にはこれらのロケットを活用した宇宙旅行、そして宇宙空間を使って人々が移動する二地点間換輸送の実現が計画されています。
“宇宙港”については、一義的な定義をすることは難しいのですが、この記事では、人が宇宙に行くためのみならず、人工衛星や物資等を運ぶ目的を含めて、地球から宇宙に人やモノを運ぶためのロケットや航空機等が離着する場所のことを、“宇宙港”と呼びたいと思います。
かつて、日本において空港が整備され飛行機が導入し始めた頃には、国内外から離着陸する飛行機見るために多くの人が空港に見学に来ていました。宇宙港が本格的に開業し運営を開始すると、空港に人が訪れたのと同様に、多くの人が宇宙へ行くロケットを見るために、宇宙港を訪れると考えられます。
このように宇宙港には多くの人が集まると予想されることから、宇宙港には、ホテル・レストラン・ショップ・ミュージアム等も併設される可能性があり、これに関連したビジネスも生まれると考えられます。参考までに、以下は一般社団法人スペースポートジャパンが昨年発表したスペースポートシティー構想の表紙図です。ホームページ[3]には近い将来の宇宙港で行われることが予想される各種の活動が掲載されており、どの産業の方でもこのビジネスに関わる可能性があることが分かると思いますので、是非ご覧になってください。
皆さんがイメージされる月などに向かう宇宙旅行ビジネスの本格的な開始はまだ先になりそうですが、宇宙機に乗って高度100Km程度に上がり、地球を眺めて、無重力を体験することができる「サブオービタル(準軌道)宇宙旅行」については、既に旅行代理店などで予約を受け付けています。宇宙港は、このサブオービタル宇宙旅行の離着陸の場にもなると考えられています。
アメリカにおける宇宙港
宇宙港の導入・整備に関しては、やはりアメリカが一番進んでいます。
アメリカの商業宇宙打上げ法(Commercial Space Launch Activities Act : 51 USC §509)は、打上げ場(launch site)について規定をし、免許制度を導入しています。連邦航空局(Federal Aviation Administration:FAA)が、主管しており、現時点において12のSpaceport Operator Licensesが出されています[4][5]。
また、2020年4月には米国FAA商業宇宙輸送オフィス(Office of Commercial Space Transportation、AST)に、スペースポート局(Office of Spaceports)が設立されたこともあり、今後、さらにアメリカの宇宙港政策が促進されると考えられます。
アメリカの宇宙港のうち、例えば、ニューメキシコ州のスペースポートアメリカがあります。そのホームページには写真や動画が載せられていて、これらを見ることによって、宇宙港のイメージが湧くのではないかと思います。
日本における宇宙港
日本においては、宇宙活動法(人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律)において、打上げ施設が規定されています。宇宙活動法は、アメリカの商業宇宙打上げ法と異なり、射場そのものに対して免許を付与する法制度にはなっていません。
日本では、現在、鹿児島県種子島や内之浦等の射場(打上げ施設)がありますが、これ加えて、北海道大樹町の多目的航空公園も民間宇宙港とする検討が行われているとのことです。
また、2020年には、以下の空港について、宇宙港に関するニュースがありました。
・大分空港[6]
航空機を利用した小型衛星の打ち上げ事業を手掛ける米企業ヴァージン・オービット社(virgin・orbit社)が大分県と提携し、空中発射型のロケットの母機となる航空機を離着陸させるためのスペースポートを日本国内に整備すると発表しました。このような、宇宙港の設置が実現すれば、アジアで初めてとなります。
ヴァージン・オービット社は、改造した航空機に小型衛星を格納したロケットをつり下げ、空港から離陸後に太平洋上などで空中発射したうえで、ロケットから衛星を切り離すという打上げサービスを提供する会社で、このロケットを発射させる航空機が、大分空港に離着陸すれば、大分空港が宇宙港としての役割を果たすことになります。
・下地島空港[7]
沖縄県は、下地島空港に宇宙港としての機能を付加したうえ、宇宙旅行を提供する「下地島宇宙港事業」を実施するPDエアロスペース社との基本合意を発表しました。
PDエアロスペース社は、名古屋市に拠点を置く、宇宙飛行開発スタートアップ企業で、有翼型宇宙往還機(スペースプレーン)の開発を行っています。当初はスペースプレーンの飛行試験場として下地島空港を利用したうえ、その後、管理棟、整備施設等を整えて、2025年の宇宙旅行の提供を目指しているということです。
このように、日本でも宇宙港の導入が検討され始めており、既存の空港を宇宙港とするような動きも見られます。
自分の住んでいる街や地元に宇宙港ができ、気軽に宇宙旅行に行けるようになる時代が近づいているのではないかと思い楽しみです。
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