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才口弁護士に聞いてみよう(5)
2021.01.29
TMIの顧問弁護士であり、最高裁判事の重責も務められた才口弁護士に聞く、現代の「仕事」と「生き方」のヒント。
私は9年目の弁護士です。これまでも所内の弁護士・弁理士のチームの中で、いわば現場のリーダーとして業務に携わることは少なくありませんでしたが、最近、海外のローファームの弁護士や国内の他の事務所の弁護士や会計士とチームを組んで案件に当たることが増えてきました。これまで以上に、良いチーム・ワークを生み出すために、現場のリーダーとしてどのような立ち振る舞いをすればよいのかを問われている場面が増えてきていると感じます。
先生は、これまで倒産案件などで、多くの弁護士や会計士等からなるチームを牽引して当たられたご経験が多くあるかと思いますが、チーム・ワークという点で、どのような点を心掛けてきましたでしょうか。リーダーとしてチームを牽引していく上でのコツのようなものがありましたら教えてください。
チーム・リーダーの資質と修練
もう少しで一人前になれそうな9年目弁護士さんからの苦悶のお訊ねですね。
士業界に身を置けば異業種との交流は世の習い、業務拡大にも繋がる絶好の機会です。
でも、われわれ法律専門職は異業種の内容と実態を知らない職業音痴でもあります。
巷間語られる「税務を知らない弁護士は半人前」とはけだし名言です。
折角、勝訴しても、クライアントの腹の足しにならない判決は“画餅”です。
ご下問の趣意は「チーム・リーダーの資質と修練」と理解しました。
資質は生まれつきの才能ですが、意欲と実行で修練を積めば「チーム・リーダー」になれると経験的に確信します。
『意欲と実行』がチーム・リーダー養成の要諦であり、統率力は自ずと追随
私は俗にいわれる“倒産弁護士”でしたから、法律論だけでは生き抜けない渡世を経験しました。
もちろん経営学など学んでいません。しかし倒産会社の管財人は一刻を争って任務を遂行しなければ会社を再建はできませんから、率先垂範して早朝出勤し、債権者や取引先と交渉し、月間指標を掲げて社員の士気を鼓舞し、労いもしました。施策が失敗したこともありました。
修練の結果、体得したのが経理であり、交渉・説得術であり、統率力などです。
倒産会社の実務がリーダー力も培ってくれました。
そこで体得した知恵は『意欲と実行』です。未知なことがあったら好奇心をもって即刻学び、教えを請い、直ちに実行する。経理しかり、異業種の実態しかりです。
この『意欲と実行』がチーム・リーダー養成の要諦であり、統率力は自ずと追随してきます。
チーム・リーダー到達を焦る必要はありません
昨今、チーム・リーダーの資質にスポーツマン・シップが重用され、人材登用の要件にも加えられています。確かにスポーツは対戦相手を熟知して即時に対応しなければならず、団体競技ではフォーメーションやチーム・ワークの修練が必須です。
「一芸に秀でる者は万事に秀でる」のたとえを先取り実践しているのでしょうか。
蛇足ですが、チーム・リーダー到達を焦る必要はありません。ご相談者さんには、意欲をもって実行さえすれば、リーダーとなる素地が必ずあります。素地があれば、照らされれば光るものです。瑠璃も玻璃も照らせば光るというではありませんか。「土石(どしゃく)転じて金銀(こんごん)と成る」の教えは、周りからみたときの意だけでなく、あなた自身が、あなたの中に備わっている素地を見つけ出すきっかけでもあると考えてください。
どうぞ、不断の努力を怠らずに10年目を迎え、リーダー力を備えた一人前の弁護士に成長してください。
完
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