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【宇宙ブログ】大変動きが活発な近時の宇宙政策についてお知らせします!
2021.06.22
はじめに
今年もあっという間に前半が終わろうとしておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。この半年、宇宙政策では大きな動きが複数ありました。ここでまとめてご紹介したいと思います!
いよいよ日本も有人宇宙飛行の時代に!
昨年10月より、文科省宇宙開発利用部会が主催する「革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会」に委員として参加させて頂いております。2040年の日本はどうなっているのか、日本の宇宙輸送システムを今後どうするのか、大変刺激的な議論が重ねられました。今月同検討会が公表した中間とりまとめ(案)では、宇宙旅行や二地点間高速輸送(宇宙空間を通って短時間で地球上の二地点間を移動する輸送手段のことを指します)が実現される世界を見越し、将来の宇宙輸送は抜本的な低コスト化を実現する総合的システムであることが明記され、いわゆる再使用型ロケット(ロケットの一段目を使い捨てにするのではなく、地上に着陸させて再使用すること)の可能性についても言及されました。10回の会議を経て、公開された以下のロードマップ(案)も是非ご覧下さい。高頻度往還飛行型宇宙輸送システムの実現によって、日本から有人宇宙飛行が実現する機運も高まってまいりました!
(出典:研究開発局宇宙開発利用課 革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会資料)
宇宙ゴミの回収などの軌道上サービスに日本が独自ルールを世界に向けて発信!
次に昨年12月より有識者委員として参加させて頂きました内閣府宇宙開発戦略推進事務局主催の「軌道上サービスに関するサブワーキンググループ」が取りまとめた「軌道上サービスに共通に適用する我が国としてのルールについて」と題する報告書が、本年5月、スペースデブリに関する関係府省等タスクフォース大臣会合にて報告されました。この報告書は、有識者委員としてご一緒させて頂いた東京大学の鈴木一人教授が「歴史に残る偉業」と評されていらっしゃった通り、世界に向けて日本が大きな発信をした素晴らしい成果だと確信しております。取りまとめを行われた内閣府をはじめとする関係省庁の皆様、JAXAや民間企業の皆様に心より敬意を表し、また有識者として積極的に意見を述べさせていただいたこと、また多くの提案を盛り込んでいただけたこと誇りに思っております。
何がそんなに画期的なのか。まだ世界で覇者の決まっていない、つまり市場が形成されていないけれども人類の宇宙開発、そして宇宙の持続可能な利用にとって必須となる軌道上サービスの実施について、日本が世界に先駆けて、許可に関わるルールや軌道上サービスに起因する損害賠償責任に関するルールを策定して公開したことにあります。またこれを具体化するための別冊として、サービス適用を正当業務行為として行うための目的及び方法に関する要求、サービス提供を安全に行うための構造及び管理計画に関する要求、サービス衛星の管理を実行する運用体制の構築などを、体系的にそして具体的に示しています。ともすれば軍事的な利用も可能になってしまう軌道上サービスの技術を、どう人類のために使うのか、技術開発と両輪としてこのようなルール提案が日本から世界に先駆けて行われたことに、日本がこの分野で率先して産業をリードしていく意気込みが感じられます。
ついに成立した「宇宙資源法」
最後は新法のお話です。今月15日、参議院本会議で「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律案」が賛成多数で可決され、我が国にいわゆる「宇宙資源法」が成立しました。月その他の天体を含む宇宙空間に存在する水、鉱物その他の天然資源を「宇宙資源」と定義し、当該採掘等をした民間企業等が所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得することを認めました。具体的には資源採取の目的や方法などを記載した事業計画を国に届けて許可を受ける必要があります。宇宙の憲法とされる宇宙条約は、月その他の天体を含む宇宙空間の国家による取得を禁止する一方で、資源の所有権は明記しておらず、この点の議論は数年前から国際的に活発化しています。世界に先駆けて所有権を認める国内法を整備した米国に続き、ルクセンブルグやUAEが国内法を整えましたが、日本でもいよいよ国内法が整備されることになります。この論点は、2017年内閣府及び経産省の共催で行われていた「宇宙ビジネスを支える環境整備に関する論点整理タスクフォース」に委員として参加していた際、国内法整備の必要性について活発な議論をしておりました。4年弱の時を経て実際に新法が成立したことで、これから先、月やその資源、そして更にその先の深宇宙を目指す民間企業が、日本からも複数出てくる環境が整備されたように思います。宇宙資源探査が他国の利益を不当に害するものであってはならず、また可能な限り国際連携を図ることが謳われていることも日本らしくて良いですね。
ということで、大変盛沢山でしたが、いずれを見ましても民間における「宇宙ビジネス」が益々盛んになることが伺われ、弊所宇宙航空チームも全力で日本の産業をサポートしたいと気合を入れなおしております。
以上
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