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【宇宙ブログ】【再エネ×宇宙】宇宙太陽光発電とは
2021.11.30
はじめに
日本政府は2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロとする目標を掲げ、中期目標として2030年に2013年度比46%減とする目標が掲げられています。
足元では、事業活動で用いるエネルギーの100%を再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的イニシアチブであるRE100(Renewable Energy 100%)や、日本版RE100ともいえる再エネ100宣言RE Actionに参加を表明する国内企業等も増加するほか、2022年4月1日に全面的に施行されるエネルギー供給強靭化法、洋上風力発電拡大の動きなど、再生可能エネルギー分野は、大きな盛り上がりを見せているところです。
国内における再生可能エネルギー発電
再生可能エネルギー発電については画一的な定義があるものでは必ずしもありませんが、例えば、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電は一般的に再生可能エネルギー発電と考えられており、これらの電源は電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)における「再生可能エネルギー源」と位置付けられているほか、RE100の対象となる電源としても位置付けられています。
太陽光発電については、2012年のFIT制度(固定価格買取制度)導入を背景に大幅に拡大してきたところであり、2021年10月22日に閣議決定された第6次エネルギー基本計画では、大規模な開発のみならず、自家消費や地産地消のための分散型エネルギーリソースとしての活用が期待されています。また、今後の拡大が見込まれる風力発電については、第6次エネルギー基本計画において「再生可能エネルギー主力電源化の切り札」といった記載がなされているところです。水力発電、地熱発電、バイオマス発電についても、大規模開発に有する時間やコスト、バイオマス発電における燃料調達の持続可能性といった検討事項は残るものの、今後の継続的な開発・導入が期待されています。
宇宙太陽光発電について
上記のとおり、国内における再生可能エネルギー発電は今後も拡大・発展が見込まれるものの、いずれの電源についても発電所を設置するのに相応しい適地が将来的には減少することが見込まれます。また、例えば、太陽光発電であれば天候によって発電量が左右されることや夜間の発電はできないこと、風力発電であれば風況によって発電量が左右されることといった、人間にはコントロールできない要因による影響を防ぐことはできません。宇宙太陽光発電には次のような特徴があり、既存の再生可能エネルギー発電にはないメリットがあると考えられます。なお、以下の宇宙太陽光発電についての記載はJAXAのウェブサイトや一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構のウェブサイトを参照しています。
(1) 宇宙太陽光発電の特徴
宇宙太陽光発電システムは、SSPS(Space Solar Power Systems)とも呼ばれ、宇宙空間から太陽光のエネルギーを地球に伝送する発電システムです。宇宙太陽光発電では既存の太陽光発電と異なり、地上ではなく宇宙空間において太陽光を利用することから、昼夜を問わずに発電が可能であり、天候による影響も受けにくいといった特徴を有しています。また、地表における太陽光発電に比べて、より強度の高い太陽光を発電に利用できる点も特徴として挙げられます。
(2) 宇宙太陽光発電の課題
宇宙太陽光発電では、宇宙空間で太陽光から得たエネルギーを地球に伝達することが必要となります。具体的な伝達方法としては、蓄電池等に電気を蓄えて地球に輸送するという方法ではなく、宇宙空間においてマイクロ波又はレーザー光に変換した上で地上の受電設備まで遠隔で伝達する方法が想定されています。太陽光から得た巨大なエネルギーを宇宙空間から地上まで正確に伝達するためには、技術的なハードルを越える必要があり、現在、地上において実証実験がなされているところです。
他にも、宇宙太陽光発電システムを構成する大規模な構造物を宇宙空間に構築し運用するための技術、太陽光エネルギーを地上に伝達する際のマイクロ波やレーザー光による人体や環境等への影響といった安全面の検討、宇宙太陽光発電システムの構築・運用等に必要となるコストといった経済性の検討等、実際に宇宙太陽光発電を実用化するためには様々な課題があるところです。
(3) 政府計画等との関係
第6次エネルギー基本計画では、「2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応」の項目中、「再生可能エネルギーにおける対応」の部分に「無線送受電技術により宇宙空間から地上に電力を供給する宇宙太陽光発電システム(SSPS)について、エネルギー供給源としての位置付け、経済合理性、他産業への波及等を総合的かつ不断に評価しつつ、地上実証フェーズから宇宙実証フェーズへの移行の検討も含め、研究開発・実証を着実に進める。」との記載がなされています。
また、昨年6月30日に閣議決定された宇宙基本計画でも、産業・科学技術基盤を始めとする宇宙活動を支える総合的な基盤の強化の主な取組内容の文脈で「エネルギー問題、気候変動問題、環境問題等の人類が直面する地球規模課題の解決の可能性を秘め、宇宙構造物等の給電システムへの応用も期待できる宇宙太陽光発電システムの実用化に向け、宇宙太陽光発電システム研究開発ロードマップ等に基づき、宇宙実証実験フェーズへの移行の検討も含め、着実に取組を進める。その際、宇宙太陽光発電の研究開発は、IoTセンサやドローン、ロボット等へのワイヤレス給電等、地上の技術への派生も期待できることに留意する。」との記載がなされています。
これらの記載も踏まえると、一見するとSF小説の世界の話にも思えるような宇宙太陽光発電が国の具体的な施策として検討されていることが見て取れ、実際に、2022年度には、JAXAと文部科学省が共同で実証実験を行うとも報じられており、宇宙太陽光発電の今後の動きにも注目したいと考えています。
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