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【ブロックチェーンブログ】ステーブルコイン(3)
2022.03.30
はじめに
前回のブログ(ステーブルコイン(2))では、ステーブルコインに関する日本の規制動向や本改正案(※1)におけるステーブルコイン規制の対象などについて解説しました。
今回は、ステーブルコインに関する仲介者規制の概要について解説いたします。
(※1) 「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」(https://www.fsa.go.jp/common/diet/index.html)
電子決済手段等取引業の規制の概要
前回のブログで解説したとおり、本改正案では、デジタルマネー類似型のステーブルコインと既存のデジタルマネー(預金・未達債務)のうち、資金移動業者の未達債務スキーム(※2)や信託受益権スキーム(※3)、これら以外のスキーム(※4)における仲介者の業務は、「電子決済手段等取引業」と定義され、新たな業規制の対象とされています。
(※2) 資金移動業者の未達債務について、資金移動業者から代理権を付与された仲介者が、個々の利用者の持分を管理し、振り替える仕組み(発行者である資金移動業者は総額のみを管理)
(※3) 信託法制が適用されるものとして、受益証券発行信託において、銀行に対する要求払預金を信託財産とした信託受益権を仲介者が販売・移転する仕組み
(※4) 以下に解説する銀行の預金債権スキーム(銀行の口座振替時における預金債権の発生・消滅についての現行実務を前提としたものとして、銀行から代理権を付与された仲介者が、個々の利用者の持分を管理し、振り替える仕組み(発行者である銀行は総額のみを管理))を除きます。
具体的には、改正資金決済法では、「電子決済手段等取引業」は、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいうと定義され(改正資金決済法(案)2条10項)、登録制が導入されています(同法(案)62条の3)。
a. 電子決済手段の売買又は他の電子決済手段との交換
b. 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
c. 他人のために電子決済手段の管理をすること(その内容等を勘案し、利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定めるものを除く。)。
d. 資金移動業者の委託を受けて、当該資金移動業者に代わって利用者(当該資金移動業者との間で為替取引を継続的に又は反復して行うことを内容とする契約を締結している者に限る。)との間で次に掲げる事項のいずれかを電子情報処理組織を使用する方法により行うことについて合意をし、かつ、当該合意に基づき為替取引に関する債務に係る債権の額を増加させ、又は減少させること。
・ 当該契約に基づき資金を移動させ、当該資金の額に相当する為替取引に関する債務に係る債権の額を減少さ せること。
・ 為替取引により受け取った資金の額に相当する為替取引に関する債務に係る債権の額を増加させること。
上記d.は、資金移動業者の未達債務スキームに対応するものです。
また、「電子決済手段」には、「特定信託受益権」(※5)が含まれ(以下の定義c.ご参照)、上記a.b.c.は、信託受益権スキームやこれら以外のスキームに対応するものです。
「電子決済手段」の定義は、以下のとおりです(同法(案)2条5項)。
「電子決済手段」は、通貨建資産に限定されており、暗号資産型のステーブルコインのうち暗号資産に該当するものはこれに該当しません。また、有価証券や前払式支払手段等は原則として「電子決済手段」から除外されるものの、このうち「流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるもの」は例外的にこれに該当する可能性があります。
a. 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、電子記録債権法(平成19年法律第102号)第2条第1項に規定する電子記録債権、第3条第1項に規定する前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第3号に掲げるものに該当するものを除く。)
b. 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(次号に掲げるものに該当するものを除く。)
c. 特定信託受益権
d. a.~c.に掲げるものに準ずるものとして内閣府令で定めるもの
(※5) 金銭信託の受益権(電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示される場合に限る。)であって、受託者が信託契約により受け入れた金銭の全額を預貯金により管理するものであることその他内閣府令で定める要件を満たすもの(同法(案)2条9項)。
また、登録業者(電子決済手段等取引業者)については、以下の業務に関する規定の整備が予定されています。
① 情報の安全管理のために必要な措置を講じる義務(改正資金決済法(案)62条の10)
② 委託先に対する指導その他の当該業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を講じる義務(同法(案)62条の11)
③ 利用者への情報提供等、利用者の保護を図り、業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を講じる義務(同法(案)62条の12)
④ 電子決済手段等取引業に関して利用者から金銭その他の財産の預託を受けること等の原則禁止(同法(案)62条の13)
⑤ 利用者の電子決済手段を自己の財産と分別して管理し、その管理の状況について、定期に公認会計士又は監査法人の監査を受ける義務(同法(案)62条の14)
⑥ 発行者等との間で、利用者に損害が生じた場合における当該損害についての当該 発行者等と当該電子決済手段等取引業者との賠償責任の分担に関する事項等を定めた電子決済手段等取引業に係る契約を締結し、これに従って当該発行者等に係る電子決済手段等取引業を行う義務(同法(案)62条の15)
⑦ いわゆる金融 ADR 制度に関し、紛争解決機関との間で契約を締結する措置等を講じる義務(同法(案)62条の16)
⑧ 特定電子決済手段等取引契約に係る電子決済手段関連業務を行う電子決済手段等取引業者について、金融商品取引法の規制の準用(同法(案)62条の17)
⑨ 犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」といいます。)の特定事業者への追加(取引時確認義務、疑わしい取引の届出義務、通知義務等)(改正犯収法(案)2条2項31号の2、同法(案)10条の3)
電子決済等取扱業の規制の概要
本改正案では、銀行の預金債権スキームにおける仲介者の業務は、「電子決済等取扱業」と定義され、新たな業規制の対象とされています。
具体的には、改正銀行法では、「電子決済等取扱業」は、次に掲げる行為を行う営業をいうと定義され(同法(案)2条17項)、登録制が導入されています(同法(案)52条の60の3)。
a. 銀行の委託を受けて、当該銀行に代わって当該銀行に預金の口座を開設している預金者との間で次に掲げる事項のいずれかを電子情報処理組織を使用する方法により行うことについて合意をし、かつ、当該合意に基づき預金契約に基づく債権(以下この号において「預金債権」といいます。)の額を増加させ、又は減少させること。
・ 当該口座に係る資金を移動させ、当該資金の額に相当する預金債権の額を減少させること。
・ 為替取引により受け取った資金の額に相当する預金債権の額を増加させること。
b. その行う前号に掲げる行為に関して、同号の銀行(以下「委託銀行」といいます。)のために預金の受入れを内容とする契約の締結の媒介を行うこと。
また、登録業者(電子決済等取扱業者)について、以下の業務に関する規定の整備が予定されています。
① 顧客に対する説明や顧客に関する情報の適正な取扱い及び安全管理等、業務の的確な遂行その他の健全かつ適切な運営を確保するための措置を講じる義務(改正銀行法(案)52条の60の11)
② 誠実義務(同法(案)52条の60の12)
③ 電子決済等取扱業に関して顧客から金銭その他の財産の預託を受けること等の原則禁止(同法(案)52条の60の13)
④ 委託銀行との間で、顧客に損害が生じた場合における当該損害についての当該委託銀行と当該電子決済等取扱業者との賠償責任の分担に関する事項等を定めた電子決済等取扱業に係る契約を締結し、これに従って当該委託銀行に係る電子決済等取扱業を営む義務(同法(案)52条の60の14)
⑤ いわゆる金融 ADR 制度に関し、紛争解決機関との間で契約を締結する措置等を講じる義務(同法(案)52条の60の15)
⑥ 顧客に対し、虚偽のことを告げる行為、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為等の禁止(同法(案)52条の60の16)
⑦ 特定預金等契約に係る電子決済等関連預金媒介業務を行う電子決済等取扱業者について、金融商品取引法の規制の準用(同法(案)52条の60の17)
⑧ 犯収法の特定事業者への追加(取引時確認義務、疑わしい取引の届出義務等)(改正犯収法(案)2条2項31号の3)
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